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第1章 焔の精霊
◆1 異変は突然に①
しおりを挟む息が、苦しい――
自分を取り巻く空気全体が熱くて。
この熱から逃れる術はない。
何故か、そう感じた。
ここはどこだろう?
視線を巡らせれば、白く淡い光の中にいた。
足を一歩踏み出せば、カツンと硬い感触と音。
雪花石膏を使ったような、自ら発光している白色の美しい建造物。
両脇には凝った細工の柱頭を戴いた列柱が、光の届かないずっと先の方まで並んでいるのが見えた。
ここはまるで神殿のようだ。
ふと、耳を澄ました。
誰かが自分を呼んでいる気がしたのだ。
イリヤ……
(――姉さん……?シルヴィア?)
大事な家族。
いつも、いつでも僕の近くにいた双子の姉。
懐かしい声が、自分を呼んでいる……そんな気が。
(何処に……いるの?)
イリヤよ――
汝――焔の受諾者
受けよ、天啓を
聞くがよい、焔の詩を――
我が声を受け止めよ
姉の声は搔き消された。
代わりに、厳かで重々しい――それでいて艶のある、年齢の分からない不思議な声が頭の中に響いてくる。
(受け止める?何を……?)
その声に導かれて、薄明りの中を進んでいけば……
突然、自分の周りに焔の壁が立ち上がる。
驚いて動けない。
戸惑っている自分の、その胸元で光が輝きだす。
眩しく強い光――それは次第に燃え上がる焔になった。
(燃えている……!?)
自分自身の肌から、胸から――メラメラと焔が噴き出している……!
これはどういうことだろう?
熱さと苦しさに包まれる。
訳が分からなくて怖かった。
何が何だか――これは夢なのか現実なのか。
茫洋とした世界。
それなのに、この熱が。
胸を焼かれるようなこの痛みだけが、リアルだった。
イリヤ……
再び聞こえた哀し気な声にハッとなる。
(やっぱり、シルヴィア……!?)
そう思ったのも束の間、声はまた別のものに取って変わる。
我が声を受け止めよ――
(――姉さん……!?どこに……)
我が力を受け止めよ――……
受け止めよ……
(姉さん――っ)
***
……ピクリと指が動いた。
思うように動かなかった身体。
その呪縛が解かれたと分かって、はあっと大きく息を吐く。
喉が、ヒリヒリした。
水もなく砂漠を歩き続けたら、こんな風に酷い状態になるかもしれない。
身体が重い。
ざらりとした綿の寝巻きは、汗を吸って肌に貼りつき気持ちが悪かった。
これは現実の肉体の感覚だと、ようやく実感できた。
今すぐ脱ぎ捨てたい……そう思いながら、イリヤはベッドの上でもぞりと身体を動かした。
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