紅の宝玉と二人の守護者

凍星

文字の大きさ
2 / 29
第1章 焔の精霊

◆1 異変は突然に①

しおりを挟む
  


息が、苦しい――

自分を取り巻く空気全体が熱くて。
この熱から逃れる術はない。
何故か、そう感じた。

ここはどこだろう?

視線を巡らせれば、白く淡い光の中にいた。
足を一歩踏み出せば、カツンと硬い感触と音。
雪花石膏アラバスタを使ったような、自ら発光している白色の美しい建造物。
両脇には凝った細工の柱頭を戴いた列柱が、光の届かないずっと先の方まで並んでいるのが見えた。
ここはまるで神殿のようだ。

ふと、耳を澄ました。
誰かが自分を呼んでいる気がしたのだ。

イリヤ……

(――姉さん……?シルヴィア?)

大事な家族。
いつも、いつでも僕の近くにいた双子の姉。
懐かしい声が、自分を呼んでいる……そんな気が。

(何処に……いるの?)



イリヤよ――

汝――焔の受諾者

受けよ、天啓を
聞くがよい、焔の詩を――

我が声を受け止めよ



姉の声は搔き消された。
代わりに、厳かで重々しい――それでいて艶のある、年齢の分からない不思議な声が頭の中に響いてくる。

(受け止める?何を……?)

その声に導かれて、薄明りの中を進んでいけば……
突然、自分の周りに焔の壁が立ち上がる。
驚いて動けない。
戸惑っている自分の、その胸元で光が輝きだす。

眩しく強い光――それは次第に燃え上がる焔になった。

(燃えている……!?)

自分自身の肌から、胸から――メラメラと焔が噴き出している……!

これはどういうことだろう?
熱さと苦しさに包まれる。
訳が分からなくて怖かった。
何が何だか――これは夢なのか現実なのか。
茫洋とした世界。
それなのに、この熱が。
胸を焼かれるようなこの痛みだけが、リアルだった。


イリヤ……


再び聞こえた哀し気な声にハッとなる。

(やっぱり、シルヴィア……!?)

そう思ったのも束の間、声はまた別のものに取って変わる。


我が声を受け止めよ――


(――姉さん……!?どこに……)


我が力を受け止めよ――……

受け止めよ……


(姉さん――っ)




***




……ピクリと指が動いた。
思うように動かなかった身体。
その呪縛が解かれたと分かって、はあっと大きく息を吐く。

喉が、ヒリヒリした。
水もなく砂漠を歩き続けたら、こんな風に酷い状態になるかもしれない。

身体が重い。
ざらりとした綿の寝巻きは、汗を吸って肌に貼りつき気持ちが悪かった。
これは現実の肉体の感覚だと、ようやく実感できた。
今すぐ脱ぎ捨てたい……そう思いながら、イリヤはベッドの上でもぞりと身体を動かした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!

蘇鉄
BL
「俺は誰とも関わりたくないんだけどなあ、おかしいなあ?」 『回答。ユーザー様の行動が微妙に裏目に出ています。シミュレーション通りにならず当システムは困惑しております( ゚Д゚)』 平和な学生生活を手に入れるために生活サポートAIシュレディンガーと共に色々と先回りして行動していたらいつの間にか風紀委員やら生徒会やらに追い回される羽目になっていた物部戯藍。 街を牛耳る二大不良チームも加わる中、執着される理由がわからず困惑しつつも彼は平穏な生活の為に逃げ回る。 彼は愛も恋も信じない。それはとても不確かなものだから。バカバカしいまやかしだと決めつけて。 ※ 不定期更新です

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

【8話完結】ざまぁされて廃嫡されたバカ王子とは俺のことです。

キノア9g
BL
廃嫡され全てを失った元王子。地道に生きたいのにハイスペ幼馴染が逃がしてくれません。 あらすじ 「第二王子カイル、お前を廃嫡する」 傲慢な振る舞いを理由に、王位継承権も婚約者も失い、国外追放されたカイル。 絶望の最中、彼に蘇ったのは「ブラック企業で使い潰された前世の記憶」だった。  「もう二度と、他人任せにはしない」 前世の反省を活かし、隣国の冒険者ギルドで雑用係(清掃員)として地道にやり直そうとするカイル。しかし、そんな彼を追いかけてきたのは、隣国の貴族であり幼馴染のレオナードだった。  「君がどんな立場になろうと、僕にとっては君は君だ」 落ちぶれたカイルに変わらぬ愛を注ぎ、元婚約者の悪意ある噂からも守り抜くレオナード。 すべてを失った元バカ王子が、社畜根性と幼馴染の溺愛によって幸せを掴むまでの、再起と愛の物語。 全8話。

処理中です...