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第1章 焔の精霊
◆12 『守護者(仮)』候補!?
しおりを挟む「なんで、その事を……!?」
「教授から聞いた。頼まれたんだよ、お前の――とりあえず仮の守護者になってくれって」
「仮の、守護者?」
「そうだ。精霊石がここに届くまで、まだしばらく時間があるんだろ?本当の守護者が決まるまで、傍にいて守ってやれと言われている」
「!!?」
……何で?よりによって、何でラグナ??
「そんな……教授が何で君に頼むの?ちょっと確認しに行って来る……っ!」
慌てて部屋を出て行こうとしたところで、腕を掴まれて――強い力で引き戻された。
「しばらくは、忙しくて研究室に戻れないと言っていたぞ。各方面への連絡とか調整とか、色々あるそうだ。余計な迷惑はかけない方がいい」
「ええ……」
引き戻され力が抜けて、ストンと傍のベッドに腰を落とす格好になる。
ラグナも、隣に並んで腰を下ろしてきた。
「……そんなにおかしな事でもない。この学院で一番腕の立つヤツと言えば、俺か、エルドリックで、生徒会長のあいつは俺より忙しい。つまりは消去法で選ばれたってことだ」
「そう、なの……?」
(ああ教授……何故ラグナを選んでしまったんですか……彼は多分、全力で僕と関わりたくないと思っているのに。気まずさと申し訳なさで死にそうな気分です……)
ううっと心の中でそう呟き、大きな溜息を吐いた。
「――で、紋章だ。一度、俺にもちゃんと見せてみろ」
「だから何で!?ラグナに見せる必要ある!?」
イリヤが慌てて胸を隠すような仕草をしてみせても、お構いなしに手を出してくる。
「本当に本物か、俺が確かめてやる」
「あの教授が確認したって言ってるのに、疑うの!?」
「万が一、ってこともあるだろう。俺は紋章学の授業は常にA +だったぞ」
(常に!?スゴいな)
文武両道、という噂はやっぱり本当のようだ。
「……僕も本当は、間違いであって欲しいと思ってるけど」
「だったら、尚更見せてみろ。グダグダ文句を言うな」
「もう……分かったよっ。だけどもう少し優しい言い方出来ないの?」
「悪かったな。おまえの前だと素が出るらしい」
(……それ、どういう意味?)
ベッドの上で、今にも押し倒されそうなやり取りが続くのもどうかと思ったので、観念したイリヤは、しゅる、と胸元の紐を解いていく。
「………」
妙に、ドキドキしてしまう。
きちんと顔を合わせるのは久しぶりで、しばらくまともに会話もしていない関係だというのに、どうしてこんな状況に?
焦ってしまい指が上手く動かない。
もたもたしていたら、ラグナがまたちょっかいを出してくる。
「まどろっこしい」
「ちょっ……!」
勝手に手を出して、勝手にブラウスの紐を解いていく。
昔から、こんな風にちょっと強引で。
でもそれが兄貴っぽくて、そんなラグナに憧れていたんだった……と。
また昔の感情に振り回される。
「……成程な」
胸元を大きく開けて、浮かぶ紅い痣を彼の目に晒す。
顔を近付けて、ジッと見詰めてきた。
イリヤの顎の下辺りにラグナの頭がある。
至近距離から見下ろす感じになると、伏目がちになった彼の睫の濃さとか、ハリのある肌とか、そんな細かなことがやけに気になってしまう。
彫りの深い、くっきりとした目鼻立ち。少し浅黒い肌。
彼には騎馬民族の血が混じっていて、情熱的な南方系の特徴がその容姿に色濃く表れている。
……本当にカッコ良くなったなぁと、思わず見惚れている自分に気付き、慌てて目を逸らした。
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