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第1章 焔の精霊
◆14 ラグナの宣言②
しおりを挟む「ということで決まりだな。教授には引き受けたと報告しておく」
「――本当に本気で言ってる……?」
「くどいぞ。お前の守護者は俺が務める。これは決定事項だ、分かったな?」
「う、うん……」
(この感じ、多分ラグナの独断だよね。実家のロックフォード家に迷惑がかかってしまわないかな……?)
彼の表情にはもう迷いが無くなっているけど、イリヤはやはり心配が拭えない。
「でも精霊石に認められるまでは、決定ではないよね?」
「俺が拒絶される要素がどこにある?」
「ええっ?その自信はどこから……?」
武力も魔力も申し分ないラグナだからこそだと分かっていても、強気すぎる発言に思わず突っ込むと。
不意にイリヤの後頭部に手を回し、お互いの顔と顔をぐっと近付けながら力強い声で――こう言った。
「俺がそうすると決めたからだ」
「……!!?」
「もう――見て見ぬふりはしない」
――強い瞳に見詰められ、その視線に囚われてドキリとした。
窓から差し込む陽射しが反射して、彼の瞳特有の金彩が……藍色の中で星のように輝いている。
イリヤは幼い頃と同様にしばし時を忘れて、宇宙を宿した煌めきに見入ってしまう。
(……やっぱり、綺麗だ)
でも……見て見ぬふりって……もしかしてシルヴィアが死んだ時のことだろうか。
ラグナは、外に伝わっていること以外の真実も、何か知っているのかな……?
「だから、お前も俺から逃げるな。分かったな」
「――っ」
「返事は?」
「……はい」
結局、そう言わされてしまった。
これでいいの?
本当に?
戸惑うイリヤの頭に手を乗せて、昔のようにくしゃりと髪を撫でて。
太陽のような笑顔を見せる。
「お前を守るのは、昔から俺の役目だったろう?なぁ苺頭?」
「!!」
心臓が――破裂するかと思った。
至近距離でそんな眩しい笑顔を見せて、急に頭を撫でるとか……!
本当に心臓に良くない……!!
慌てたイリヤは、思わずその手を払ってしまう。
「こ、子供扱いしないでよっ」
「はは、お前があんまり昔と変わらないものだから、ついな」
一気に頭に血が上って、髪色だけじゃなく、きっと顔色も真っ赤になってる……!
――そんな感覚にひとりどぎまぎしてしまう。
びっくりしすぎて固まっているイリヤを置いて、ラグナは笑いながらゆっくりと部屋を出ていってしまう。
……取り残されたイリヤはしばらく動けなかった。ずっとベッドに座ったままだ。
いま何が起こったんだろう?と呆然と考え込んでしまっていた。
(ラグナが、僕の守護者になってくれる……?)
胸のドキドキがいつまでも治まらない。
それに何より、まるで昔に戻ったように笑ってくれたこと。
ただそれだけで――イリヤはとても幸せな気持ちに包まれていた。
もう戻らない。
遠い過去になってしまったと思っていた彼の笑顔と温かい手。
それが戻って来たのだろうか?
喜んでしまっていいのだろうか……?
その時、授業開始10分前を知らせる鐘の音が鳴り響き、イリヤは飛び上がった。
大慌てで教科書と長衣を手にして、夢見心地のままバタバタと部屋を飛び出していく――
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