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第2章 受諾者と守護者
◆12 ラグナとエルドリック③
しおりを挟む「すっ、すみません!」
この展開に呆れてしまったのか、石像のように固まっていたエルドリックだったが。
イリヤの困った表情を見てピクリと眉を動かし――苛立った仕草でテーブルを指で叩いた。
「――コイツ、とはご挨拶だな。ラグナ」
「!?」
先に失礼なことを言ったのはラグナだ。
けれどエルドリックなら、気にせずサラリと受け流すのかと思いきや。
その声に、いつもの彼にはない棘が含まれていたのでイリヤは驚いて顔を上げた。
「か、会長?」
「どうして一緒にいるか、だって?僕も彼の守護者だからだ。当然だろう?」
「…………」
「それと忠告しておくけれど、君のそのなれなれしい態度にイリヤは困っている。だからさっさと離れ給え」
まるで剣を鞘から抜き放つような鋭さで言葉を投げつけてくる。
(……もしかして、怒ってる……!?)
そんな事もあるんだと、びっくりした。
そしてエルドリックの言葉にムッとしたラグナの気配が、直接肌を通して伝わってきた。
「――俺はコイツと幼馴染の仲なんでね。お前にあれこれ指図をされる謂れはない」
「幼馴染?……それは本当か?イリヤ」
エルドリックに問いかけられ、抱き締められ赤い顔のままイリヤはこくんと頷いた。
「幼馴染なのは本当です……でもこんな風に絡まれるのは――正直困ります」
「ほら、そう言っているじゃないか。いい加減にさっさと離れろ」
「……チッ」
舌打ちをしたラグナが、渋々といった感じで、ゆっくりとイリヤから離れた。
(……ごめん。僕が朱雀の受諾者だと知られてからならともかく、今はそうじゃないし……ラグナに対して、勝手な憶測で変な噂を流されるのは嫌なんだ)
そう心の中で呟くイリヤは、顔を火照らせながら冷汗をかくという器用な状態になっている。エルドリックとは生徒会という接点があるし、そこまで悪い噂は流れないと思うのだが。
――それにしても。
(心なしか、2人の間に険悪な空気が流れているような……?もしかしてこの2人、あまり仲が良くない……?)
自分のせいでこうなっている――とは全く気付いていないイリヤは、どうしてだろうと訝しむ。
ラグナもエルドリックも、何だかとても苛々して見えた。
「誰かを探して、混雑した食堂までわざわざ足を運ぶなんて君らしくもない。いつもは別の場所で食べているだろう?」
「……まぁな」
「僕は君と話がしたいね。どうして守護者が2人になったのか、じっくり話し合おうか?」
「――……」
「?」
エルドリックのその言い方は、まるでラグナが理由を知っているかのように聞こえた。何か自分の知らない事情でもあるのだろうか?と不思議に思う。
そして、いまのこの状況――
長身で体格がよく雰囲気が派手なラグナは、学院内では有名人だし、とにかく目立っていた。色々な意味で会長と同じくらい人目を集めている。ラグナの登場で、周りの騒めきは益々大きくなっていた。
(おい、ラグナ先輩まであいつに会いに来たのか!?)
(会長だけじゃなく……一体どうなってるんだ?)
(2人が揃って食堂にいるなんて、レアだよな?珍しい)
(あの赤毛、2人とどういう関係だ?)
等々の呟きが、はっきり聞こえてくるくらいだ。
(針の筵の、針の数が二倍くらいになったかも……)
さすがにこの状況に慣れてきたイリヤだが、うぅっと呻きたくもなる。
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