紅の宝玉と二人の守護者

凍星

文字の大きさ
27 / 29
第2章 受諾者と守護者

◆12 ラグナとエルドリック③

しおりを挟む
 

「すっ、すみません!」

この展開に呆れてしまったのか、石像のように固まっていたエルドリックだったが。
イリヤの困った表情を見てピクリと眉を動かし――苛立った仕草でテーブルを指で叩いた。

「――コイツ、とはご挨拶だな。ラグナ」
「!?」

先に失礼なことを言ったのはラグナだ。
けれどエルドリックなら、気にせずサラリと受け流すのかと思いきや。
その声に、いつもの彼にはない棘が含まれていたのでイリヤは驚いて顔を上げた。

「か、会長?」
「どうして一緒にいるか、だって?僕も彼の守護者だからだ。当然だろう?」
「…………」
「それと忠告しておくけれど、君のそのなれなれしい態度にイリヤは困っている。だからさっさと離れ給え」

まるで剣を鞘から抜き放つような鋭さで言葉を投げつけてくる。

(……もしかして、怒ってる……!?)

そんな事もあるんだと、びっくりした。
そしてエルドリックの言葉にムッとしたラグナの気配が、直接肌を通して伝わってきた。

「――俺はコイツと幼馴染の仲なんでね。お前にあれこれ指図をされる謂れはない」
「幼馴染?……それは本当か?イリヤ」

エルドリックに問いかけられ、抱き締められ赤い顔のままイリヤはこくんと頷いた。

「幼馴染なのは本当です……でもこんな風に絡まれるのは――正直困ります」
「ほら、そう言っているじゃないか。いい加減にさっさと離れろ」
「……チッ」

舌打ちをしたラグナが、渋々といった感じで、ゆっくりとイリヤから離れた。

(……ごめん。僕が朱雀の受諾者だと知られてからならともかく、今はそうじゃないし……ラグナに対して、勝手な憶測で変な噂を流されるのは嫌なんだ)

そう心の中で呟くイリヤは、顔を火照らせながら冷汗をかくという器用な状態になっている。エルドリックとは生徒会という接点があるし、そこまで悪い噂は流れないと思うのだが。


――それにしても。

(心なしか、2人の間に険悪な空気が流れているような……?もしかしてこの2人、あまり仲が良くない……?)

自分のせいでこうなっている――とは全く気付いていないイリヤは、どうしてだろうといぶかしむ。
ラグナもエルドリックも、何だかとても苛々して見えた。

「誰かを探して、混雑した食堂までわざわざ足を運ぶなんて君らしくもない。いつもは別の場所で食べているだろう?」
「……まぁな」
「僕は君と話がしたいね。どうして守護者が2人になったのか、じっくり話し合おうか?」
「――……」
「?」

エルドリックのその言い方は、まるでラグナが理由を知っているかのように聞こえた。何か自分の知らない事情でもあるのだろうか?と不思議に思う。

そして、いまのこの状況――
長身で体格がよく雰囲気が派手なラグナは、学院内では有名人だし、とにかく目立っていた。色々な意味で会長と同じくらい人目を集めている。ラグナの登場で、周りの騒めきは益々大きくなっていた。

(おい、ラグナ先輩まであいつに会いに来たのか!?)
(会長だけじゃなく……一体どうなってるんだ?)
(2人が揃って食堂にいるなんて、レアだよな?珍しい)
(あの赤毛、2人とどういう関係だ?)

等々の呟きが、はっきり聞こえてくるくらいだ。

(針のむしろの、針の数が二倍くらいになったかも……)

さすがにこの状況に慣れてきたイリヤだが、うぅっと呻きたくもなる。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

【柳原学園】いやいや、俺は『俺様生徒会長』だから

西園 斎
BL
家の都合で『俺様』を演じてる生徒会長が、生徒会やら風紀やら教師やらから好かれるお話。 演技俺様会長総受け(愛され)/後固定CP *10年以上前の作品を、やや加筆修正していきます

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

偽りの聖者と泥の国

篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」 自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。 しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。 壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。 二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。 裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。 これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。 ----------------------------------------- 『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。 本編に救いはありません。 セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。 本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!

雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。 共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。 《キャラ紹介》 メウィル・ディアス ・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き リィル・ディアス ・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも レイエル・ネジクト ・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き アルト・ネジクト ・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。 ーーーーー 閲覧ありがとうございます! この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください! 是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

処理中です...