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小説を書いてみよう!
『戦闘シーンを書いてみよう!』(第6回)
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第6回になりますが、少しずつ書き方が分かってきましたでしょうか?
いよいよ私のもっとも苦手な戦闘シーンを書いてみましょう。
ん? ちょっと待って、苦手なのに書けるんですか?(結論:書けません)
いやはや、戦闘シーンは未だに練習中なので、今回ばかりは参考にならないかもしれません。本当にごめんなさい。
(『trip』のステージ13後半あたりから、長い戦闘シーンにチャレンジしていますが、とにかくしんどいというのが、素直な感想です)
【基本設定】(サンプル)
〇〇は、魔物の動きに合わせて武器を構えた。
武器がぶつかる。
「クッ……」(←キャラクターの台詞)
「コノテイドカ」(←魔物の台詞)
「お前こそ、こんなものか」(←キャラクターの台詞)
ぶつかっていた武器が離れる。
○○と魔物は向かい合う。
そして、また武器がぶつかる。
このくらいの分量で、書いてみましょうか。
戦闘シーンなので、武器を用意します。それにより描写の描き方が大きく変わってくるので、武器選びは慎重にね。
私は設定資料集に書いた通り、ライラが大剣を使って戦うシーンを書きます。
ではでは、下記に例文を書いてみます。
【例文1】(サンプル)
ライラは、魔物の動きに合わせて大剣を構える。
魔物の長い爪が大剣とぶつかった。
「クッ……」
少し押されたライラは、大剣に力を込めた。
「コノテイドカ」
「お前こそ、こんなものか」
余裕を見せた魔物が、ライラにそう言ったが、ライラもまた強く言い返した。
重なっていた大剣と爪が離れる。
二人は向き合って立っている。
そして、二人はまた武器をぶつけた。
誰が何を言っているのか、武器がなんなのか程度の説明を入れてみました。
『魔物の長い爪が大剣とぶつかった』
↑魔物の武器は爪、ライラは大剣、これを伝えたかった文。
※私は大剣と爪でしたが、槍や剣、弓、素手……、お好きな武器でどうぞ。
『「クッ……」』
↑魔物が強いというのを、苦痛な声で表現した文。
『重なっていた大剣と爪が離れる』
↑二人が距離を置いたことを想像させる文。
『二人はまた武器をぶつけた』
↑再び戦闘が開始されたことを示す文。
しかし、このままでは全然緊張感が伝わってきませんよね。
それは、緊迫した情景も詳細な動きも入っていないからです。
戦闘シーンを書くときは、なるべく細かく描写を書くことを心がけると、臨場感が増します。
日常風景などは描写を細かく書くとクドクなりますが、戦闘シーンはむしろ逆。
そこそこ細かく書かないと、伝わらない特性があります。
そこを踏まえて、もう少し細かく描写を書いてみますね。
【例文2】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて大剣を正面に構える。
魔物の鋭く長い爪が大剣に当たり、互いに押し合いとなった。
「クッ……」
思ったより魔物の力が強く、ライラは苦痛に顔を歪めたが、魔物は余裕の笑みさえ浮かべ、
「コノテイドカ」
見下したように、ライラに言う。
それを聞いたライラは、大剣で魔物を振り払いながら笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
互いの凶器はそのまま離れ、ライラと魔物にも距離が生まれ、両者は向かい合う形で立つ。
そして、合図があったかのように両者は同時に踏み込むと、再び武器を交差させた。
武器の動き、表情、感情、動きなどを、少し細かく書き込んでみたら、そこそこ臨場感が生まれましたよね。
緊迫したシーンは、少し詳細に書き込んで、人の動きだけじゃなくて、周りの動きや、道具の動きまで考えてみると、全体のバランスがよくなります。
日常的な平和なシーンで、『右足で地を蹴って踏み出した』なんて表現したら、違和感がありますけど、戦闘シーンなどでは『右足で地を蹴って踏み出す』という表現の方が、なんだかカッコよく見えませんか?
その書き分けが必要になるのが、緊迫した場面の書き方なのです。
いかに細かく、違和感なく描写できるか、これがポイント。
だから戦闘シーンは難しいんです。人の動きだけじゃなくて、道具や周り、自然、その場の空気さえも書きこまなければならない、結構高度な場面だと私は考えます。
もっともっと詳細に、描写を書き込んでみたらどうなるか、下記に例文を書いてみますね。
【例文3】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて、大剣を両手で掴むと、その攻撃を受けるべく正面に構えた。
真っすぐに突き進んできた魔物は、長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ。
大剣と爪がぶつかり、耳障りな金属音が辺りに響くと、
「クッ……」
ライラの顔が歪んだ。防ぎきれなかった鋭利な爪の先が頬に当たり、ライラの頬を掠めていた。
僅かに掠った爪が、ライラの頬に傷を生み、一筋の赤い血が頬を流れる。
「コノテイドカ」
傷を負わせたことに喜びを感じたのか、魔物は口角をあげ、舐めるように緑の舌を自分の爪に這わせて薄く嗤う。
だが、ライラもまた大剣を構えたまま、笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
挑発するように、もっと力を見せてみろとライラの目が語る。
魔物は鋭いライラの視線に苛立ちを覚え、切り裂いてやると、一度身を引くと、鋭利に光る爪を真っすぐに構えた。
ライラもまた大剣を持ち直し、来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す。
互いは、間合いを詰めるその瞬間を伺いながら、対峙する。
爪が掠ったライラの頬から、血が滴る。
その赤が大地に落ちる瞬間、両者は同時に大地を蹴った。
全然上手く書けてなくて、参考になりません。
一応解説してみますけど、今回はダメダメですね(ごめんなさい)
『長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ』
↑人ではなく武器の動きを明確にしてあります。
爪と大剣で戦ってますアピールするため、あえて武器の動きを書きます。
『耳障りな金属音が辺りに響くと~』
↑その場の空気と音響効果を表現してます。
耳を塞ぐようなと書けば、大きな音または嫌な音を想像するし、心地よい音と書けば、素敵な音や綺麗な音を想像しますよね。音響効果を文字で演出して、場の雰囲気を創り出してみました。
ちなみに、『キーン』とか『カキンッ』という擬音で表現するのもありですが、文面が幼く見えてしまうので、多用するのは控えましょう。
ここぞというシーンで使用すると、メリハリがついて臨場感が出せます。
(※文末にサンプルを用意しました)
『防ぎきれなかった~』
↑戦っているので、攻撃を避けられたのか、避けられなかったのか、それを伝える文です。
『一筋の赤い血が頬を流れる』
↑傷や血などの描写が入ると、高揚感が高くなるので、少し入れるとアクセントになります。
当然、いっぱい書きこんじゃうと、ものすごい負傷した状態になっちゃうので、ご利用は計画的に。
『緑の舌を自分の爪に這わせて薄く笑う』
↑魔物が異形なものと決定づけるための文であり、気持ち悪く、不気味であることを伝えたかった部分です。
『もっと力を見せてみろとライラの目が語る』
↑このサンプルでは台詞の数が決まっているため、あえて心の声という表現を使ってみました。
台詞ばっかりになってしまったり、台詞を入れたくない時などに使用すると効果的。
心情を書くことは、キャラクターの置かれている状況に、感情が置きやすいかな。
『来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す』
↑心の声を言葉にしちゃった文。覚悟とか、光を宿すとか強い想いを表現して、「来い」って一言に重みを付加してあるんです。
それと、少し比喩的な表現を使うと、文章に色が加わります。
『赤が地に落ちる瞬間~』
↑何かが動き出す合図として、カッコイイ表現を意識してみました。この文の前文で、血が~と説明したので、「血=赤」というイメージでも受け取ってもらえると考えたので、オシャレに書いてみただけ。
突然『赤が地に落ちる……』と書いてしまうと、何のことかさっぱり理解できないので、きちんと読者に何のことか分かるように、布石を置いてからやってみましょう。
『~大地を蹴った』
↑二人が同時に動いたとか走り出したとか、分かりやすく書いてもいいんだけど、見せ場的な感じに見せたかったので、短く印象に残りそうな言葉を選びました。
小説は短く強い言葉を選ぶと、印象づけられると思ってます。
つまり、『~相手に向かって走り出した』もいいけど『前方に向かって地を蹴った』と書いてみると、ちょっとだけ印象深くなる気がしませんか?
ん~、戦闘シーンはもっと上手い人を参照してみることを推奨しておきます。
臨場感と危機感の表現力が半端ない人も大勢いるので、ぜひいろいろ回ってみてくださいね。
きっとすごい感動と、勉強になります。
大切なのは、その場の空気を書き込むこと! 言うのは簡単なんですが、実際書こうとすると、全然書けないのが空間表現です……。
なんだか、力量不足で申し訳ない回になってしまいましたが、いつも通り、下記サンプルを使って、上記例文などを参考にしながら、自分のキャラクターを動かしながら書いてみましょう。
※ここでの注意点は、武器です。
私は爪と大剣にしたので、ぶつかり合ったり、擦れたりする音、傷をつけるシーンなどを書きましたが、武器によってその表現方法も起こりうる光景も戦い方も全て変わります。
槍なら、相手を突く動作または薙ぎ払うなど。
弓なら、矢を放つ動作や矢を構える仕草など。
素手なら、ポーズを決める行動やどんな風に相手の攻撃を受け止めるのかなど。
自分のキャラクターと魔物の武器を考えるときは、書きやすい組み合わせを考えると困らなくて済みます。(定番の剣は、やはり一番書きやすい武器になります)
飛び道具や素手は、小説に関しては非常に書きにくい武器なのでご注意を。
【基本設定】(サンプル)
〇〇は、魔物の動きに合わせて武器を構えた。
武器がぶつかる。
「 」(←キャラクターの台詞)
「 」(←魔物の台詞)
「 」(←キャラクターの台詞)
ぶつかっていた武器が離れる。
○○と魔物は向かい合う。
そして、また武器がぶつかる。
ここでは、魔物とキャラクター1人での戦闘にしましょう。
慣れてないと、複数人を描きながらの戦闘はかなり難しいので、初めは一対一から。
どんな武器で、どんな戦闘になるのか、その武器同士がぶつかったらどうなるのか、魔物の姿は? 魔物との会話は? 現場はどんな雰囲気なのか、魔物に対する意気込みはどんな感じ?
などなど、いろんなことを考えてみましょう。
わりと短い【基本設定】に見えるけど、ここでは考える内容と項目の量が多いので、混乱しないように、順番に内容だけ書き出してから、文章にすると書きやすいかもですよ。
・魔物はどんな行動にでた?
・キャラクターはそれに対してどんな動きをした?
・二人の武器や拳がぶつかったらどうなった?
・その時の雰囲気はどんな感じ?
・キャラクターは魔物の攻撃を受けて何て言う?
・魔物またはキャラクターの攻撃はどうなった?
・攻撃を仕掛けてきた魔物はどんな感じ? 何を話した?
・魔物の容姿や仕草をちょっとだけ教えて。
・キャラクターは実際に魔物と戦ってみて、なんて言う? なんて思う?
・次に起こす行動はどうする?
・再度戦闘にもっていくために、どうしたらいい?
こんな感じに質問を作って、その答えを書き込み、それを少しずつ文章に書き起こしてみると、迷わないで物語の流れを追いながら書けると思いますので、ちょっと面倒臭いですが、初めて書くなら試してみてもいいかもです。
シーン(展開)は分かっているけど、どこから何を書いていいか分からないよ!
ってときは、簡単でいいので順番とか要点だけ書きだしてみると、意外と書けるものなのです。
第6回はここまで。
戦闘は難しいシーンですが、いろんな方の作品を参照して、ぜひ自分の思い描くシーンを書いてみてくださいませ。
これが書ければ冒険ファンタジーは怖くない! たぶんね。
時間を書けて、納得いくシーンを頑張ってください。
ではでは、第7回『魔法描写を書いてみよう!』でまたお会いできますように。
◆◆ おまけ ◆◆
【例文4】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて、大剣を両手で掴むと、その攻撃を受けるべく正面に構えた。
真っすぐに突き進んできた魔物は、長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ。
── ガシャン ──
大剣と爪がぶつかり、耳障りな金属音が辺りに響くと、
「クッ……」
ライラの顔が歪んだ。防ぎきれなかった鋭利な爪の先が頬に当たり、ライラの頬を掠めていた。
僅かに掠った爪が、ライラの頬に傷を生み、一筋の赤い血が頬を流れる。
「コノテイドカ」
傷を負わせたことに喜びを感じたのか、魔物は口角をあげ、舐めるように緑の舌を自分の爪に這わせて薄く笑う。
だが、ライラもまた大剣を構えたまま、笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
挑発するように、もっと力を見せてみろとライラの目が語る。
魔物は強いライラの視線に苛立ちを覚え、切り裂いてやると、一度身を引くと、鋭利に光る爪を真っすぐに構えた。
ライラもまた大剣を持ち直し、来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す。
互いは、間合いを詰めるその瞬間を伺いながら、対峙する。
爪が掠ったライラの頬から、血が滴る。
その赤が大地に落ちる瞬間、両者は同時に大地を蹴った。
文中に効果音をダイレクトに書き込んでみた感じ。
『── ガシャン ──』←コレ。
小説では音を言葉にすることがあります。擬音を文字にする表記方法。
これを使うと、読み手さんに音を伝えることができ、より雰囲気を楽しんでいただけるのですが、これもまた多用すると、非常に読みにくく、作品の質がガクッと下がります。
擬音を使うときは、近場で使ってなかったか? たくさん使ってないか? よく見てから使ってみるようにしましょう。
音を伝えられるので、とっても便利なんですが、たくさん入れちゃうと文面の年齢がかなり下がってしまうので、気をつけたい技法です。
ちょっとした飾りに使用すると、さりげない感じでよい印象を与えられます。
擬音を多用すべきものは、絵本や幼児向けになります。
後は、ラノベ系なら多少多い方が読まれます。
いよいよ私のもっとも苦手な戦闘シーンを書いてみましょう。
ん? ちょっと待って、苦手なのに書けるんですか?(結論:書けません)
いやはや、戦闘シーンは未だに練習中なので、今回ばかりは参考にならないかもしれません。本当にごめんなさい。
(『trip』のステージ13後半あたりから、長い戦闘シーンにチャレンジしていますが、とにかくしんどいというのが、素直な感想です)
【基本設定】(サンプル)
〇〇は、魔物の動きに合わせて武器を構えた。
武器がぶつかる。
「クッ……」(←キャラクターの台詞)
「コノテイドカ」(←魔物の台詞)
「お前こそ、こんなものか」(←キャラクターの台詞)
ぶつかっていた武器が離れる。
○○と魔物は向かい合う。
そして、また武器がぶつかる。
このくらいの分量で、書いてみましょうか。
戦闘シーンなので、武器を用意します。それにより描写の描き方が大きく変わってくるので、武器選びは慎重にね。
私は設定資料集に書いた通り、ライラが大剣を使って戦うシーンを書きます。
ではでは、下記に例文を書いてみます。
【例文1】(サンプル)
ライラは、魔物の動きに合わせて大剣を構える。
魔物の長い爪が大剣とぶつかった。
「クッ……」
少し押されたライラは、大剣に力を込めた。
「コノテイドカ」
「お前こそ、こんなものか」
余裕を見せた魔物が、ライラにそう言ったが、ライラもまた強く言い返した。
重なっていた大剣と爪が離れる。
二人は向き合って立っている。
そして、二人はまた武器をぶつけた。
誰が何を言っているのか、武器がなんなのか程度の説明を入れてみました。
『魔物の長い爪が大剣とぶつかった』
↑魔物の武器は爪、ライラは大剣、これを伝えたかった文。
※私は大剣と爪でしたが、槍や剣、弓、素手……、お好きな武器でどうぞ。
『「クッ……」』
↑魔物が強いというのを、苦痛な声で表現した文。
『重なっていた大剣と爪が離れる』
↑二人が距離を置いたことを想像させる文。
『二人はまた武器をぶつけた』
↑再び戦闘が開始されたことを示す文。
しかし、このままでは全然緊張感が伝わってきませんよね。
それは、緊迫した情景も詳細な動きも入っていないからです。
戦闘シーンを書くときは、なるべく細かく描写を書くことを心がけると、臨場感が増します。
日常風景などは描写を細かく書くとクドクなりますが、戦闘シーンはむしろ逆。
そこそこ細かく書かないと、伝わらない特性があります。
そこを踏まえて、もう少し細かく描写を書いてみますね。
【例文2】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて大剣を正面に構える。
魔物の鋭く長い爪が大剣に当たり、互いに押し合いとなった。
「クッ……」
思ったより魔物の力が強く、ライラは苦痛に顔を歪めたが、魔物は余裕の笑みさえ浮かべ、
「コノテイドカ」
見下したように、ライラに言う。
それを聞いたライラは、大剣で魔物を振り払いながら笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
互いの凶器はそのまま離れ、ライラと魔物にも距離が生まれ、両者は向かい合う形で立つ。
そして、合図があったかのように両者は同時に踏み込むと、再び武器を交差させた。
武器の動き、表情、感情、動きなどを、少し細かく書き込んでみたら、そこそこ臨場感が生まれましたよね。
緊迫したシーンは、少し詳細に書き込んで、人の動きだけじゃなくて、周りの動きや、道具の動きまで考えてみると、全体のバランスがよくなります。
日常的な平和なシーンで、『右足で地を蹴って踏み出した』なんて表現したら、違和感がありますけど、戦闘シーンなどでは『右足で地を蹴って踏み出す』という表現の方が、なんだかカッコよく見えませんか?
その書き分けが必要になるのが、緊迫した場面の書き方なのです。
いかに細かく、違和感なく描写できるか、これがポイント。
だから戦闘シーンは難しいんです。人の動きだけじゃなくて、道具や周り、自然、その場の空気さえも書きこまなければならない、結構高度な場面だと私は考えます。
もっともっと詳細に、描写を書き込んでみたらどうなるか、下記に例文を書いてみますね。
【例文3】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて、大剣を両手で掴むと、その攻撃を受けるべく正面に構えた。
真っすぐに突き進んできた魔物は、長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ。
大剣と爪がぶつかり、耳障りな金属音が辺りに響くと、
「クッ……」
ライラの顔が歪んだ。防ぎきれなかった鋭利な爪の先が頬に当たり、ライラの頬を掠めていた。
僅かに掠った爪が、ライラの頬に傷を生み、一筋の赤い血が頬を流れる。
「コノテイドカ」
傷を負わせたことに喜びを感じたのか、魔物は口角をあげ、舐めるように緑の舌を自分の爪に這わせて薄く嗤う。
だが、ライラもまた大剣を構えたまま、笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
挑発するように、もっと力を見せてみろとライラの目が語る。
魔物は鋭いライラの視線に苛立ちを覚え、切り裂いてやると、一度身を引くと、鋭利に光る爪を真っすぐに構えた。
ライラもまた大剣を持ち直し、来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す。
互いは、間合いを詰めるその瞬間を伺いながら、対峙する。
爪が掠ったライラの頬から、血が滴る。
その赤が大地に落ちる瞬間、両者は同時に大地を蹴った。
全然上手く書けてなくて、参考になりません。
一応解説してみますけど、今回はダメダメですね(ごめんなさい)
『長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ』
↑人ではなく武器の動きを明確にしてあります。
爪と大剣で戦ってますアピールするため、あえて武器の動きを書きます。
『耳障りな金属音が辺りに響くと~』
↑その場の空気と音響効果を表現してます。
耳を塞ぐようなと書けば、大きな音または嫌な音を想像するし、心地よい音と書けば、素敵な音や綺麗な音を想像しますよね。音響効果を文字で演出して、場の雰囲気を創り出してみました。
ちなみに、『キーン』とか『カキンッ』という擬音で表現するのもありですが、文面が幼く見えてしまうので、多用するのは控えましょう。
ここぞというシーンで使用すると、メリハリがついて臨場感が出せます。
(※文末にサンプルを用意しました)
『防ぎきれなかった~』
↑戦っているので、攻撃を避けられたのか、避けられなかったのか、それを伝える文です。
『一筋の赤い血が頬を流れる』
↑傷や血などの描写が入ると、高揚感が高くなるので、少し入れるとアクセントになります。
当然、いっぱい書きこんじゃうと、ものすごい負傷した状態になっちゃうので、ご利用は計画的に。
『緑の舌を自分の爪に這わせて薄く笑う』
↑魔物が異形なものと決定づけるための文であり、気持ち悪く、不気味であることを伝えたかった部分です。
『もっと力を見せてみろとライラの目が語る』
↑このサンプルでは台詞の数が決まっているため、あえて心の声という表現を使ってみました。
台詞ばっかりになってしまったり、台詞を入れたくない時などに使用すると効果的。
心情を書くことは、キャラクターの置かれている状況に、感情が置きやすいかな。
『来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す』
↑心の声を言葉にしちゃった文。覚悟とか、光を宿すとか強い想いを表現して、「来い」って一言に重みを付加してあるんです。
それと、少し比喩的な表現を使うと、文章に色が加わります。
『赤が地に落ちる瞬間~』
↑何かが動き出す合図として、カッコイイ表現を意識してみました。この文の前文で、血が~と説明したので、「血=赤」というイメージでも受け取ってもらえると考えたので、オシャレに書いてみただけ。
突然『赤が地に落ちる……』と書いてしまうと、何のことかさっぱり理解できないので、きちんと読者に何のことか分かるように、布石を置いてからやってみましょう。
『~大地を蹴った』
↑二人が同時に動いたとか走り出したとか、分かりやすく書いてもいいんだけど、見せ場的な感じに見せたかったので、短く印象に残りそうな言葉を選びました。
小説は短く強い言葉を選ぶと、印象づけられると思ってます。
つまり、『~相手に向かって走り出した』もいいけど『前方に向かって地を蹴った』と書いてみると、ちょっとだけ印象深くなる気がしませんか?
ん~、戦闘シーンはもっと上手い人を参照してみることを推奨しておきます。
臨場感と危機感の表現力が半端ない人も大勢いるので、ぜひいろいろ回ってみてくださいね。
きっとすごい感動と、勉強になります。
大切なのは、その場の空気を書き込むこと! 言うのは簡単なんですが、実際書こうとすると、全然書けないのが空間表現です……。
なんだか、力量不足で申し訳ない回になってしまいましたが、いつも通り、下記サンプルを使って、上記例文などを参考にしながら、自分のキャラクターを動かしながら書いてみましょう。
※ここでの注意点は、武器です。
私は爪と大剣にしたので、ぶつかり合ったり、擦れたりする音、傷をつけるシーンなどを書きましたが、武器によってその表現方法も起こりうる光景も戦い方も全て変わります。
槍なら、相手を突く動作または薙ぎ払うなど。
弓なら、矢を放つ動作や矢を構える仕草など。
素手なら、ポーズを決める行動やどんな風に相手の攻撃を受け止めるのかなど。
自分のキャラクターと魔物の武器を考えるときは、書きやすい組み合わせを考えると困らなくて済みます。(定番の剣は、やはり一番書きやすい武器になります)
飛び道具や素手は、小説に関しては非常に書きにくい武器なのでご注意を。
【基本設定】(サンプル)
〇〇は、魔物の動きに合わせて武器を構えた。
武器がぶつかる。
「 」(←キャラクターの台詞)
「 」(←魔物の台詞)
「 」(←キャラクターの台詞)
ぶつかっていた武器が離れる。
○○と魔物は向かい合う。
そして、また武器がぶつかる。
ここでは、魔物とキャラクター1人での戦闘にしましょう。
慣れてないと、複数人を描きながらの戦闘はかなり難しいので、初めは一対一から。
どんな武器で、どんな戦闘になるのか、その武器同士がぶつかったらどうなるのか、魔物の姿は? 魔物との会話は? 現場はどんな雰囲気なのか、魔物に対する意気込みはどんな感じ?
などなど、いろんなことを考えてみましょう。
わりと短い【基本設定】に見えるけど、ここでは考える内容と項目の量が多いので、混乱しないように、順番に内容だけ書き出してから、文章にすると書きやすいかもですよ。
・魔物はどんな行動にでた?
・キャラクターはそれに対してどんな動きをした?
・二人の武器や拳がぶつかったらどうなった?
・その時の雰囲気はどんな感じ?
・キャラクターは魔物の攻撃を受けて何て言う?
・魔物またはキャラクターの攻撃はどうなった?
・攻撃を仕掛けてきた魔物はどんな感じ? 何を話した?
・魔物の容姿や仕草をちょっとだけ教えて。
・キャラクターは実際に魔物と戦ってみて、なんて言う? なんて思う?
・次に起こす行動はどうする?
・再度戦闘にもっていくために、どうしたらいい?
こんな感じに質問を作って、その答えを書き込み、それを少しずつ文章に書き起こしてみると、迷わないで物語の流れを追いながら書けると思いますので、ちょっと面倒臭いですが、初めて書くなら試してみてもいいかもです。
シーン(展開)は分かっているけど、どこから何を書いていいか分からないよ!
ってときは、簡単でいいので順番とか要点だけ書きだしてみると、意外と書けるものなのです。
第6回はここまで。
戦闘は難しいシーンですが、いろんな方の作品を参照して、ぜひ自分の思い描くシーンを書いてみてくださいませ。
これが書ければ冒険ファンタジーは怖くない! たぶんね。
時間を書けて、納得いくシーンを頑張ってください。
ではでは、第7回『魔法描写を書いてみよう!』でまたお会いできますように。
◆◆ おまけ ◆◆
【例文4】(サンプル)
ライラは、襲い掛かってきた魔物に向けて、大剣を両手で掴むと、その攻撃を受けるべく正面に構えた。
真っすぐに突き進んできた魔物は、長く鋭い爪をライラに向けて振り下ろすが、構えた大剣でそれを防ぐ。
── ガシャン ──
大剣と爪がぶつかり、耳障りな金属音が辺りに響くと、
「クッ……」
ライラの顔が歪んだ。防ぎきれなかった鋭利な爪の先が頬に当たり、ライラの頬を掠めていた。
僅かに掠った爪が、ライラの頬に傷を生み、一筋の赤い血が頬を流れる。
「コノテイドカ」
傷を負わせたことに喜びを感じたのか、魔物は口角をあげ、舐めるように緑の舌を自分の爪に這わせて薄く笑う。
だが、ライラもまた大剣を構えたまま、笑って見せた。
「お前こそ、こんなものか」
挑発するように、もっと力を見せてみろとライラの目が語る。
魔物は強いライラの視線に苛立ちを覚え、切り裂いてやると、一度身を引くと、鋭利に光る爪を真っすぐに構えた。
ライラもまた大剣を持ち直し、来い! と、その瞳に覚悟の光を宿す。
互いは、間合いを詰めるその瞬間を伺いながら、対峙する。
爪が掠ったライラの頬から、血が滴る。
その赤が大地に落ちる瞬間、両者は同時に大地を蹴った。
文中に効果音をダイレクトに書き込んでみた感じ。
『── ガシャン ──』←コレ。
小説では音を言葉にすることがあります。擬音を文字にする表記方法。
これを使うと、読み手さんに音を伝えることができ、より雰囲気を楽しんでいただけるのですが、これもまた多用すると、非常に読みにくく、作品の質がガクッと下がります。
擬音を使うときは、近場で使ってなかったか? たくさん使ってないか? よく見てから使ってみるようにしましょう。
音を伝えられるので、とっても便利なんですが、たくさん入れちゃうと文面の年齢がかなり下がってしまうので、気をつけたい技法です。
ちょっとした飾りに使用すると、さりげない感じでよい印象を与えられます。
擬音を多用すべきものは、絵本や幼児向けになります。
後は、ラノベ系なら多少多い方が読まれます。
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