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小説を書いてみよう!
『物語を完結させよう』(第8回)
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いよいよエンディング(結末)を書いてみましょう。
つまり、今回でこの書き方講習も終わりです。
たぶん、簡単な短編くらいなら、ちょっとだけ書けるようになったはず……。
小説って、初めからみんなみたいに書ければいいけど、そもそも書き方が不明な人もいます。
書きたいけど、書けないってこともあります。
初めて書くなら、まず書きたい内容を淡々と書きだして、そこへいろいろ手を加えていく方法が一番いいんじゃないかなって、このエッセイを書いてみました。
実際、こんなのが役に立つとは思っておりません。
けれど、何かを書くきっかけくらいになれば、嬉しいと思っております。
それでは、いつものようにサンプルを……。
【基本設定】(サンプル)
特になし。
そう、この短編の結末にサンプルはありません。
ここまで書いてきた自分の想像力と、書き方で、好きな結末を書いてみてください。
魔物は倒した。よって、結末は女の子を助けることに繋がりますが、その終わり方は自由。
参照までに、少し【例文】を書いておきますので、例文を元に自分の結末を考えてみてください。
自由に書く。これがオリジナルを書くきっかけになります。
【例文1】
「片付きましたね」
杖を手にして、イズが微笑んだ。
それをみたライラは、軽いため息を零す。
「初めから、お前がやれ」
「魔法って、詠唱に時間がかかるって、知ってるくせに」
いきなり襲い掛かってきた魔物に対して、魔法を発動する時間はなかったと、イズはライラに小さな文句を返した。
で、ここでライラはあることに気がつく。
「そういや、あいつがいない」
ここにいたはずの男の姿がない。──ゼノ。
戦闘が始まる前にはいたはずだったと、ライラとイズは辺りを見回すが、どこにも姿がない。
まさか一人で逃げたのかと思ったのだが、祭壇に設置してある箱が微かに揺れたのに気がついた。
二人は女の子が目を覚ましたのかもしれないと、箱の蓋をあけ目を点にする。
箱の中には女の子とゼノの姿が。
「お前はそこで何をしてるんだ」
「ゼノ……、これはどういうことですか」
見下ろすように睨まれたゼノは、軽く頭をかきながら立ち上がる。
「えへへ、一緒に隠れてたの。……だって魔物だよ」
苦笑いをしながら、普通に魔物が怖いといったゼノは、
── ドカッ ──
ライラから豪快なげんこつを見舞われた。
「痛ッ! 食べられちゃったらどうするの!」
「お前なんか食べねえよ」
反論するゼノに、ライラが睨みつけるように強く言い返す。
それに続いて、イズもまた呆れたようにゼノを冷たく見る。
「ゼノなんか食べたら、絶対お腹壊しますよ」
「ううっ、ライたんもイズたんも大嫌いぃぃぃ~~!」
頭にできたこぶを抑えながら叫ぶゼノの声は、夜の森に広がるように遠くまで響き渡った。
それから三人は、眠っている女の子を抱えて村に戻る。
魔物を倒したことと、女の子を助けたことで、三人は村でご馳走を振舞われ、翌朝には食料まで持たせてくれた。
助けた女の子に怪我はなく、「ありがとう」と笑って見送りに来てくれた。
太陽が地平線を離れる頃、三人は再び旅へと出た。本来の目的を果たすために。
おわり
【例文1】は、ちょっとコミカルな結末にしたかった例。
村の描写を書かなかったのは、特に面白そうな展開が思いつかなかったから、回想シーンとしてまとめてみました。
事件が解決して、また新しい旅に出る。←これが伝われば、一旦話を終わらせることができます。
(村に戻ってから、特に面白い展開も、驚くような事柄も、新しい人物を追加する予定もなかったので、書き手も飽きるし、読み手も興味を削がれるため)
女の子を眠ったままにしたのは、容姿や台詞を書くのが面倒だったからです。
(目を覚ませば、女の子の様子や、容姿、会話も増えて、書かなきゃいけないことが増えます。特に重要なシーンでなければ、なるべく書かない方向で)
何か事を起こせば、それだけ書かなければいけないことが増えるので、特に必要なさそうなところは、どんどん飛ばしていきましょう。
続いて、【例文2】
こちらはなるべく短く、村への帰還すら書かない、オチ優先の手法にチャレンジしてみますね。
【例文2】
魔物を倒した三人は、箱の中にいる女の子を村に連れて帰るため、箱のふたを外す。
「あっ」
「はっ?」
「ええっと……」
箱の中に女の子を見つけた三人は、ほぼ同時に声を出した。
それから三人は顔を見合わせる。
「オレたち、騙されたのか?」
ゼノとイズの顔色を窺うように、ライラは呆れたように後頭部を掻きむしる。
同じく箱の中を覗いたイズもまた、指で鼻の頭をかく。
「性別は、たぶんあってます……」
村人に騙されたかもしれないと、ライラとイズは互いに、苦笑してみせた。
大きな箱に入っていたのは、明らかに狸だったから。
「何言ってるの二人とも、この子、ちゃんと女の子だよ」
確かに女の子(メス)で間違いはないと、ゼノは言い切る。
しかし、納得などできるはずもないライラとイズは首を傾げた。
「村の人たち全員狸だったでしょう」
にっこりと笑って言ったゼノの言葉に、ライラとイズは唖然となり、
「なんだそりゃ?!」
「どこからどう見ても人だったでしょう」
身を乗り出してゼノに迫る。
して、ゼノから告げられた真実に、二人はもう何も言う気にはなれなかった。
「化かされてたんだよ」
おわり
【例文2】は、村に戻るという部分を全部カットしてみました。
魔物を退治したら、女の子を村に届けて、何かしらのお礼をしてもらう、ここまでの展開って、なんとなく誰でも予想できます。
だからあえて、定番な展開は書かなくても大丈夫ってことで、全部カットした形式。
もちろん、村に戻らずに、女の子を一人で帰らせる展開だってありです。
迎えがくるとか、転送できる道具があるとか、いろんな発想があります。
※補足
短めの【例文2】で、これを書くきっかけ作りについてお話します。
まず初めに、女の子が人じゃなかったら面白いかな。
で、そこだけ決まったので、次にどうしたらそこへ話を持っていけるかを考えます。
ざっくりプロットを書いてみると、
・箱を空ける。
↓
・驚く。
↓
・女の子の正体を少し引き延ばす。
↓
・主人公だけ正体を知ってたことにする。
↓
・オチでしめる。
上記のような箇条書きが出来上がる。
つまり、このプロットを元に文章を書いてみると、ああなるのです。
エピソードを書くときは、些細なきっかけがあれば、そこへ向かって書くようにすると書きやすくなります。
【例文2】のきっかけは『女の子が動物だったら』という発想から。
どんなお話や結末にしようか悩んでしまった方は、一つだけでいいので、何か目標を見つけましょう。
村長から貴重なアイテムを貰えた、助けた女の子と結婚してほしい、魔物との戦闘で負傷してしまった、転送魔法が暴走して別の場所に転送されてしまった、魔物は一匹だけではなく、村が全滅してしまった(バッドエンド)……などなど、いろいろなきっかけがあるはずなので、それを見つけるところから始めると、自然と結末に繋がると思いますので、悩んじゃった方は、まずきっかけを見つけるところから始めるといいです。
【例文2】の補足:
「あっ」
「はっ?」
「ええっと……」
↑、三人が同時に声を発しているシーンがありましたね。
これはもっと簡単に処理することができます。
三人の台詞を同じにして、
「「「えっ?」」」
と、表記すると、三人が同時に同じことを口にした表記になります。
注目はカギカッコ、三人なのでカギカッコは三つ、二人ならカギカッコは二つというふううに、カギカッコを増やすことで同時に同じセリフをしゃべらせることが可能です。
でもやっぱり、多用はおススメしません。
参考までにもうひとつくらい、例文を書いておきますね。
これは、普通に最後まで書いてみたシーンになります。
【例文3】
消滅した魔物を確認し、三人は女の子を抱えて村に戻ると、
「本当に助けてきてくださったのですか?!」
ずっとここで待っていたのか、女の子の父親が駆け寄ってきた。
ライラは腕に抱いていた、まだ眠っている女の子を父親に引き渡す。
「外は寒い、早く布団で寝せてやれ」
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
「礼なら後で聞いてやるから、早く連れてってやれ」
何度も何度も頭を下げる父親に、ライラがそう言うと、父親は最後に深く頭を下げて家に戻っていった。
そして、入れ替わるように村長が姿を見せる。
「旅の方、わしからも礼をさせてくれんか」
木の杖を突きながら歩いてきた村長は、涙声で嬉しそうに笑う。
これで村に平和が訪れたと、集まった村人が皆嬉しそうに抱き合い、声をあげて喜び、宴をあげると騒ぎ出す。
「お酒、飲めるのぉ~」
宴と聞いて、ゼノの瞳が輝く。お酒が好きなゼノにとって、お酒が飲めることは何よりも嬉しいこと。
「ああ、いくらでも飲んでくだされ。皆の者、準備じゃ」
村長の掛け声で、村人たちは宴の準備を開始した。
食材を集めるもの、料理をするもの、会場を作るもの、楽器を準備するもの、皆が楽しそうに、心から嬉しそうに駆け回る。
三人も何か手伝うと申し出たが、これは感謝の礼だからと、村長の家で待機。
「ゼノ、お酒はほどほどにしてくださいね」
椅子に座ったイズは、いつも飲み過ぎるゼノに先に忠告しておく。
ライラもまたゼノの元に来ると、黒髪の頭を軽くクシャリと掴む。
「ったく、お前は放っておくとロクなことしねえからな」
「ぶぅ~、ちゃんとわかってるもん!」
「わかってねえだろう、お前は」
「むぅ~~~」
頬をめいっぱい膨らませたゼノに、ライラはもう一度クシャリと今度は強く掴んで、自重しろと伝えた。
村をあげての宴は、まるで祭りのように賑やかに行われ、それは朝まで続いた。
朝方、助けた女の子が目を覚まして、父親と一緒に可愛らしい花をもって、お礼に来てくれた。
三人は、その花を受け取って、また新しい旅へと旅立っていった。
おわり
【例文3】は、村に戻ってきたバージョンを書いてみました。
結末は、本当にいろんなものを想像できますので、自分であれこれ考えて、書いてみてくださいね。
シリアスな結末でも、コメディな結末でも、まだ何か起こりそうな結末でも、自分の思い描く結末を自由に書いてみてください。
ここまでお付き合いしてくださったのなら、きっと書けます。
上記【例文】を参照にしながら、素敵なエンディングを。
ここで注意したいのは、一か所だけ。
女の子の存在だけは、どこでもいいので明記しておきましょうね。
女の子を助けにいくのが目的でしたから、そこはちゃんと書かなきゃダメな部分です。
【困ってしまったら】
・魔物を倒した後、どうする?
・女の子は現在どんな状態?
・どうやって救出する?
・村に戻る? それともこのまま旅に出る?
・3人の意見は?
・物語の締めは、どうしたい?
などと、自問してみるとプロットが浮かびやすく、物語が書きやすくなりますので、ぜひお試しください。
それでは、この章での詳細な解説は特にありませんが、自分の考える物語の結末をあれこれ悩んで、書いてみてください。
ではでは、次回第9回『完成作品のまとめ!』で最終回になります。
つまり、今回でこの書き方講習も終わりです。
たぶん、簡単な短編くらいなら、ちょっとだけ書けるようになったはず……。
小説って、初めからみんなみたいに書ければいいけど、そもそも書き方が不明な人もいます。
書きたいけど、書けないってこともあります。
初めて書くなら、まず書きたい内容を淡々と書きだして、そこへいろいろ手を加えていく方法が一番いいんじゃないかなって、このエッセイを書いてみました。
実際、こんなのが役に立つとは思っておりません。
けれど、何かを書くきっかけくらいになれば、嬉しいと思っております。
それでは、いつものようにサンプルを……。
【基本設定】(サンプル)
特になし。
そう、この短編の結末にサンプルはありません。
ここまで書いてきた自分の想像力と、書き方で、好きな結末を書いてみてください。
魔物は倒した。よって、結末は女の子を助けることに繋がりますが、その終わり方は自由。
参照までに、少し【例文】を書いておきますので、例文を元に自分の結末を考えてみてください。
自由に書く。これがオリジナルを書くきっかけになります。
【例文1】
「片付きましたね」
杖を手にして、イズが微笑んだ。
それをみたライラは、軽いため息を零す。
「初めから、お前がやれ」
「魔法って、詠唱に時間がかかるって、知ってるくせに」
いきなり襲い掛かってきた魔物に対して、魔法を発動する時間はなかったと、イズはライラに小さな文句を返した。
で、ここでライラはあることに気がつく。
「そういや、あいつがいない」
ここにいたはずの男の姿がない。──ゼノ。
戦闘が始まる前にはいたはずだったと、ライラとイズは辺りを見回すが、どこにも姿がない。
まさか一人で逃げたのかと思ったのだが、祭壇に設置してある箱が微かに揺れたのに気がついた。
二人は女の子が目を覚ましたのかもしれないと、箱の蓋をあけ目を点にする。
箱の中には女の子とゼノの姿が。
「お前はそこで何をしてるんだ」
「ゼノ……、これはどういうことですか」
見下ろすように睨まれたゼノは、軽く頭をかきながら立ち上がる。
「えへへ、一緒に隠れてたの。……だって魔物だよ」
苦笑いをしながら、普通に魔物が怖いといったゼノは、
── ドカッ ──
ライラから豪快なげんこつを見舞われた。
「痛ッ! 食べられちゃったらどうするの!」
「お前なんか食べねえよ」
反論するゼノに、ライラが睨みつけるように強く言い返す。
それに続いて、イズもまた呆れたようにゼノを冷たく見る。
「ゼノなんか食べたら、絶対お腹壊しますよ」
「ううっ、ライたんもイズたんも大嫌いぃぃぃ~~!」
頭にできたこぶを抑えながら叫ぶゼノの声は、夜の森に広がるように遠くまで響き渡った。
それから三人は、眠っている女の子を抱えて村に戻る。
魔物を倒したことと、女の子を助けたことで、三人は村でご馳走を振舞われ、翌朝には食料まで持たせてくれた。
助けた女の子に怪我はなく、「ありがとう」と笑って見送りに来てくれた。
太陽が地平線を離れる頃、三人は再び旅へと出た。本来の目的を果たすために。
おわり
【例文1】は、ちょっとコミカルな結末にしたかった例。
村の描写を書かなかったのは、特に面白そうな展開が思いつかなかったから、回想シーンとしてまとめてみました。
事件が解決して、また新しい旅に出る。←これが伝われば、一旦話を終わらせることができます。
(村に戻ってから、特に面白い展開も、驚くような事柄も、新しい人物を追加する予定もなかったので、書き手も飽きるし、読み手も興味を削がれるため)
女の子を眠ったままにしたのは、容姿や台詞を書くのが面倒だったからです。
(目を覚ませば、女の子の様子や、容姿、会話も増えて、書かなきゃいけないことが増えます。特に重要なシーンでなければ、なるべく書かない方向で)
何か事を起こせば、それだけ書かなければいけないことが増えるので、特に必要なさそうなところは、どんどん飛ばしていきましょう。
続いて、【例文2】
こちらはなるべく短く、村への帰還すら書かない、オチ優先の手法にチャレンジしてみますね。
【例文2】
魔物を倒した三人は、箱の中にいる女の子を村に連れて帰るため、箱のふたを外す。
「あっ」
「はっ?」
「ええっと……」
箱の中に女の子を見つけた三人は、ほぼ同時に声を出した。
それから三人は顔を見合わせる。
「オレたち、騙されたのか?」
ゼノとイズの顔色を窺うように、ライラは呆れたように後頭部を掻きむしる。
同じく箱の中を覗いたイズもまた、指で鼻の頭をかく。
「性別は、たぶんあってます……」
村人に騙されたかもしれないと、ライラとイズは互いに、苦笑してみせた。
大きな箱に入っていたのは、明らかに狸だったから。
「何言ってるの二人とも、この子、ちゃんと女の子だよ」
確かに女の子(メス)で間違いはないと、ゼノは言い切る。
しかし、納得などできるはずもないライラとイズは首を傾げた。
「村の人たち全員狸だったでしょう」
にっこりと笑って言ったゼノの言葉に、ライラとイズは唖然となり、
「なんだそりゃ?!」
「どこからどう見ても人だったでしょう」
身を乗り出してゼノに迫る。
して、ゼノから告げられた真実に、二人はもう何も言う気にはなれなかった。
「化かされてたんだよ」
おわり
【例文2】は、村に戻るという部分を全部カットしてみました。
魔物を退治したら、女の子を村に届けて、何かしらのお礼をしてもらう、ここまでの展開って、なんとなく誰でも予想できます。
だからあえて、定番な展開は書かなくても大丈夫ってことで、全部カットした形式。
もちろん、村に戻らずに、女の子を一人で帰らせる展開だってありです。
迎えがくるとか、転送できる道具があるとか、いろんな発想があります。
※補足
短めの【例文2】で、これを書くきっかけ作りについてお話します。
まず初めに、女の子が人じゃなかったら面白いかな。
で、そこだけ決まったので、次にどうしたらそこへ話を持っていけるかを考えます。
ざっくりプロットを書いてみると、
・箱を空ける。
↓
・驚く。
↓
・女の子の正体を少し引き延ばす。
↓
・主人公だけ正体を知ってたことにする。
↓
・オチでしめる。
上記のような箇条書きが出来上がる。
つまり、このプロットを元に文章を書いてみると、ああなるのです。
エピソードを書くときは、些細なきっかけがあれば、そこへ向かって書くようにすると書きやすくなります。
【例文2】のきっかけは『女の子が動物だったら』という発想から。
どんなお話や結末にしようか悩んでしまった方は、一つだけでいいので、何か目標を見つけましょう。
村長から貴重なアイテムを貰えた、助けた女の子と結婚してほしい、魔物との戦闘で負傷してしまった、転送魔法が暴走して別の場所に転送されてしまった、魔物は一匹だけではなく、村が全滅してしまった(バッドエンド)……などなど、いろいろなきっかけがあるはずなので、それを見つけるところから始めると、自然と結末に繋がると思いますので、悩んじゃった方は、まずきっかけを見つけるところから始めるといいです。
【例文2】の補足:
「あっ」
「はっ?」
「ええっと……」
↑、三人が同時に声を発しているシーンがありましたね。
これはもっと簡単に処理することができます。
三人の台詞を同じにして、
「「「えっ?」」」
と、表記すると、三人が同時に同じことを口にした表記になります。
注目はカギカッコ、三人なのでカギカッコは三つ、二人ならカギカッコは二つというふううに、カギカッコを増やすことで同時に同じセリフをしゃべらせることが可能です。
でもやっぱり、多用はおススメしません。
参考までにもうひとつくらい、例文を書いておきますね。
これは、普通に最後まで書いてみたシーンになります。
【例文3】
消滅した魔物を確認し、三人は女の子を抱えて村に戻ると、
「本当に助けてきてくださったのですか?!」
ずっとここで待っていたのか、女の子の父親が駆け寄ってきた。
ライラは腕に抱いていた、まだ眠っている女の子を父親に引き渡す。
「外は寒い、早く布団で寝せてやれ」
「ありがとうございます、本当にありがとうございます」
「礼なら後で聞いてやるから、早く連れてってやれ」
何度も何度も頭を下げる父親に、ライラがそう言うと、父親は最後に深く頭を下げて家に戻っていった。
そして、入れ替わるように村長が姿を見せる。
「旅の方、わしからも礼をさせてくれんか」
木の杖を突きながら歩いてきた村長は、涙声で嬉しそうに笑う。
これで村に平和が訪れたと、集まった村人が皆嬉しそうに抱き合い、声をあげて喜び、宴をあげると騒ぎ出す。
「お酒、飲めるのぉ~」
宴と聞いて、ゼノの瞳が輝く。お酒が好きなゼノにとって、お酒が飲めることは何よりも嬉しいこと。
「ああ、いくらでも飲んでくだされ。皆の者、準備じゃ」
村長の掛け声で、村人たちは宴の準備を開始した。
食材を集めるもの、料理をするもの、会場を作るもの、楽器を準備するもの、皆が楽しそうに、心から嬉しそうに駆け回る。
三人も何か手伝うと申し出たが、これは感謝の礼だからと、村長の家で待機。
「ゼノ、お酒はほどほどにしてくださいね」
椅子に座ったイズは、いつも飲み過ぎるゼノに先に忠告しておく。
ライラもまたゼノの元に来ると、黒髪の頭を軽くクシャリと掴む。
「ったく、お前は放っておくとロクなことしねえからな」
「ぶぅ~、ちゃんとわかってるもん!」
「わかってねえだろう、お前は」
「むぅ~~~」
頬をめいっぱい膨らませたゼノに、ライラはもう一度クシャリと今度は強く掴んで、自重しろと伝えた。
村をあげての宴は、まるで祭りのように賑やかに行われ、それは朝まで続いた。
朝方、助けた女の子が目を覚まして、父親と一緒に可愛らしい花をもって、お礼に来てくれた。
三人は、その花を受け取って、また新しい旅へと旅立っていった。
おわり
【例文3】は、村に戻ってきたバージョンを書いてみました。
結末は、本当にいろんなものを想像できますので、自分であれこれ考えて、書いてみてくださいね。
シリアスな結末でも、コメディな結末でも、まだ何か起こりそうな結末でも、自分の思い描く結末を自由に書いてみてください。
ここまでお付き合いしてくださったのなら、きっと書けます。
上記【例文】を参照にしながら、素敵なエンディングを。
ここで注意したいのは、一か所だけ。
女の子の存在だけは、どこでもいいので明記しておきましょうね。
女の子を助けにいくのが目的でしたから、そこはちゃんと書かなきゃダメな部分です。
【困ってしまったら】
・魔物を倒した後、どうする?
・女の子は現在どんな状態?
・どうやって救出する?
・村に戻る? それともこのまま旅に出る?
・3人の意見は?
・物語の締めは、どうしたい?
などと、自問してみるとプロットが浮かびやすく、物語が書きやすくなりますので、ぜひお試しください。
それでは、この章での詳細な解説は特にありませんが、自分の考える物語の結末をあれこれ悩んで、書いてみてください。
ではでは、次回第9回『完成作品のまとめ!』で最終回になります。
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