異世界に勇者召喚された俺のスキルが勇者召喚な件について

行当遭遇(いきあたりばったり)

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王女が容赦ないうえ、王様がチートだった。

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「すいません、無理です。そんなことしたら死んじゃいますよ!」

 この世界では当たり前なのか、それやって死なないような人たちなら勇者なんかいらないだろう!リストカットが何でもないような回復力は俺にはない。首のコルセットが物語っている。

「大丈夫ですよ。きちんと魔法で治りますから。」

 俺はその瞬間、教育係二人をにらんだ。なんで、俺の首直してないんだよ!!

「それは助かります。ついでに何故か目が覚めてから痛い首も治るといいんですが・・・ね。」

 王女の方に視線を戻し、再度横目で二人をにらんでいた。

「それでは、勇者様どうぞ。」

 そう言って差し出された。小刀を受け取り、手首に当てるが怖くて引けない。手が滅茶苦茶、震えている。手首に小さな傷がいくつかつくがこれが躊躇い傷というものだろう。そうして一向に進まない様子を見ていた王女が、小刀を持つ俺の手首に手を添えて、

「大丈夫ですよ、必要分の血が出たらすぐに回復魔法で治しますから。」

 そこで、気が付いた回復魔法を使える人はどこだ?まさか、これ持ってきたおっさんか?

「でも、魔法使いの人は・・・」

 とりあえず聞いてみようと声を発したその時、

「エイッ!」

 ぶしゅっ!!ぶしゃっ!!ドクドクドクドク・・・。

「・・・、ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!ちょっと!!イタイ、痛いってこれ!!何してんの!!」

 そんな狼狽える俺に対して、王女はただ淡々と作業を進めていく。

「勇者様そこではなくこちらの窪みですよ。早くしないと、死んじゃいますよ。」

 そういいながら、手首を窪みのところに近付けて押さえつける。動かそうとしても、ビクともしないこの王女、握力いくつだ!!必死の抵抗むなしく血を取られた俺は、血の減り過ぎで貧血気味になり膝をついた。そのタイミングで、王様が近づいてきて呪文を詠唱した。

「おお、勇者よ死んでしまうとは何事か。」

 理不尽なくらい何もなかったように回復した。首についていたコルセットを外して一言。

「今の何!?」

 王様相手にため口を聞いてしまったが仕方ないだろう。死が許されないどこぞのRPGみたいなこと言われたら動揺するだろう普通。

「勇者を召喚した国の王様だけが使える勇者限定の完全回復魔法『勇者復活』じゃ。効果範囲は王様と勇者の距離が五歩から十歩以内、勇者が死んだ場合は30秒以内のみ発動可能じゃ。」

 王様が答えてくれたが、勇者と王様のパーティー反則だなと思ったのは俺だけではないと思う。まあ、勇者が俺じゃなく強ければだが。

「ともかく、これで其方が勇者であることは間違いないことはわかった。」

 あれ?もしかして勇者じゃなかったら死んでた?
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