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謎の少女

43話 NPCかもしれない?

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 それから数分後に、ルナとカノラが獣耳の少女を (カノラが背負う形で)連れて拠点に戻ってきた。

「お待たせしました、アロウさん」

「ごめんね、待たせちゃった」

「いや、あいつにやられた俺が悪かった、ごめん」

 それより、とアロウはカノラの背中にいる少女に目を向ける。

 ルナがアイテムボックスからシートを取り出して地面に敷くと、カノラがそっとシートの上に少女を降ろす。

 よく見れば、少女の身体は『傷だらけ』だった。

 普通なら「ひどい怪我」だと認識するところだが、MAFというVRゲームの中ならば話は変わる。

「……どうして怪我をしているんだ?」

 アロウの言うそれは、怪我の要因ではない。
 電子空間であるMAF内では、痛みを錯覚することはあれど、皮膚組織が破壊されて血が流れるようなことは起きない。
 にも関わらず、何故この少女は怪我をしているのか。

「わからないけど、でも怪我してるみたいだし、弱ってるのも間違いないし……」

 カノラも同様の疑問は抱いているようだが、要因はともかく傷付いて弱っていることに変わりはない。
 そこに、ルナが仮説を立てた。

「もしかすると……NPC(ノンプレイヤーキャラクター)かもしれません」

 この少女はNPCかもしれないと言うルナに、アロウとカノラはどういうことかと視線を向ける。

「彼女はログインして来ているプレイヤーではなく、何かしらのサブイベントで登場するキャラ……つまり、隠し要素かもしれません」

 公式サイトには出回っていない、隠されたサブイベントの可能性がある、とルナは言う。

「えーと……つまり、この娘を助けることで、何かが起きるってこと、か?」

 アロウはひとつひとつ確認するように言葉を区切る。

「じゃぁ、チュートリアルの時は?あれも、何かのイベントだったのかな?」

 これに限らず、チュートリアルクエストでも発生し得ることなのかと懸念するカノラ。

「それは……多分、私がイベントを回避するような行動を取ってしまった、からかもしれません」

 何がトリガーになってイベントがどう動くのかが分からないが、そういうものなのかもしれない、とルナは言う。

「でも、どうする?クエストはまだ終わってないし、このままこの娘が気が付くのを待っていたら、時間切れになるかもしれない」

 そう。
 このクエストは遺跡の攻略ではなく、あくまでも『サボテンの花十個の納品』だ。
 今現在、五個は集まっているが、それからまだ一つも採取していない。

 かといってここで一人で寝かせたままにしては、目を離している間にどうなることか。

「あ、それじゃぁわたしがここで待ってるよ。何かあったら、アロウくんかルナさんに通話を送るね」

 カノラがここでの居残りを申し出る。
 つまり、アロウとルナが残るサボテンの花を集めることになる。

「分かった。必要な数が集まったら、すぐに戻る」

「お願いしますね、カノラさん」

 遺跡に入ったおかげで意外と時間が経っている。
 焦ることはないが、のんびりもしていられない。

 カノラにここでの留守番を頼み、アロウとルナは再び砂漠へ駆り出した。
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