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勇気ある者達

77話 海亀狩り

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 水陸両用タイプの装備を揃えたところで、アロウ達は水中戦闘での慣らしも兼ねて、マリーネ孤島のクエストを受けようとしていた。
 水中での戦闘がメインになる大型モンスターはどれかと探している中で、メイプルは目を留めた。

「『スパイクタートル』……これにしよっか」

 彼女が指したのは、見るからに硬そうな甲羅に鋭利なスパイクを持つ、巨大な海亀型の大型モンスターだった。
 他の大型モンスターのクエストと比較してもやや報酬金額が高めなところ、同ランク帯の中でも強敵になるかもしれない。

「亀か……こういうのって、柔らかい部位を正確に狙わないと倒せないってやつですよね」

 アロウは一般的な亀の生態と、ファンタジーにおける亀のモンスターの設定を思い起こしつつも、このクエストを受ける方向に舵を取ろうとしていた。

「みんなも、これでいいか?」

 ルナとカノラ、フェルテにもこのクエストを見せ、特に不満や拒否もないのを確認してから、受注した。

「アロウ、出発前に少し良いか」

 フェルテは転移装置に向かう前に、アロウに話しかけた。

「なんだ?」

「マリーネ孤島にも、デゼルト砂漠と同じような遺跡がどこかにあるはずだ。道すがらでも構わぬ、それらしい場所を見かけたら、心に留め置いてくれ」

「そう言えば、前にオークの討伐クエストを受けた時でも探索はしたけど、遺跡は見られなかったな。まぁ、フェルテがあるって言うなら、どこか見つけにくいところにあるのかもしれないし」

 ともかくフェルテの要望を受け入れたところで、マリーネ孤島へ出発だ。



 拠点に到着して、さてまずはどうするかというと。

「水陸両用タイプがどれくらい水中で動けるのかを、確かめながら捜しましょうか」

 この場にいる四人は、水陸両用タイプのマギアアームドを初めて使う。
 ちなみにフェルテは水中で戦うことに関しては何も言わず「構わぬ、このまま戦うつもりだ」とのこと。
 NPCなので、どこまで水中のデメリットを受けるかは分からないが、本人が構わないと言うのなら、アロウ達もそれ以上のことは言わなかった。

「水陸両用って、酸素が減らないんだよね。水中でも呼吸が普通に出来るようになるのかな」

 カノラは懸念していたことを挙げる。
 水陸両用タイプのマギアアームドは、水圧の抵抗を受けにくく、酸素も減らないらしいのだが、それはどのような効果として発揮するのか。

「ともかくは潜ってみようか」

 百聞は一見に如かず。
 アロウは率先して、拠点の海に飛び込む。

 ざぼん、と海水を切る音がアロウの聴覚に届く。

「(……あ、呼吸が出来るし、鼻に水が入らない。なんか変な感じだな)」

 どうやら水中でも呼吸が出来ることで、酸素が減らないと言う仕組みのようだ。
 ルナ、カノラ、メイプルも同様に飛び込んできて、動作の確認などを行い、最後にフェルテも海に飛び込んで来たところで、スパイクタートルの索敵を開始する。
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