87 / 159
勇気ある者達
85話 フェルテの勧誘
しおりを挟む
アロウ達は、両手を上げたまま微動だにしないジルダを囲む。
これから寄って集って嬲るのではない、今回のことを問い質すためだ。
「貴様、ジルダと言ったか。何故そうも簡単に降参した?」
最初にフェルテがそう訊ねた。彼女が連れ去られたのは、その身柄をアロウ達もに売ってもらうための脅迫材料にするためだということは、相手のリーダーがそう言っていた。
対するジルダは、メイプルのスパイラルフィンの切っ先を突き付けられながらも淡々と吐き捨てるように答える。
「義理立てする必要が無いからよ」
「義理立て?」
それは何のことかと、今度はアロウが訊ねる。
「あんな奴らの仲間と思われるなんて、吐き気がするわ」
つまりジルダは、彼らを仲間だと思っていないということだ。
「あたしは奴らの言いなりになっていた、と言えばいいかしら」
「言いなりって……脅されていたってことですか?」
ルナは、ジルダの言葉をそう解釈した。
「そう。訳あって、そこのNPCを捕まえるなんて誘拐犯の真似事をさせられたのよ」
そう言いながらジルダはフェルテに目を向ける。
「脅されてたって、それって規約違反ですよね?運営に通報しないんですか?」
MAFの運営側には、悪質行為や違法行為をするプレイヤーに対して、一方的にアクセス権を凍結させる権限がある。
それを理由にしないのかとカノラは言うが。
「プレイヤー同士のいざこざには、基本的に関与しないのが運営のやり方よ。連中のやり口は、その運営に目を付けられないグレーラインだもの。通報したところで、『プレイヤー同士の問題には関与出来ません』と返されるのがオチ。それに関与するなら、あたしも連中も一纏めにして垢バンよ」
でも、とジルダは自棄になったようにその場に座り込む。
「もう、いいわ。……疲れちゃった」
プレイヤー同士の諍いが、人間関係に軋轢を生じさせたり、精神的苦痛や負担になる。
彼女はそれに翻弄されてきて、もう限界なのかもしれない。
「抵抗しないわ。さっさとプレイヤーキルして」
「MAFを、やめるんですか?」
諦めたジルダに、アロウはそう声をかけた。
「そうよ。仲間からも必要とされないし、傭兵プレイでも汚れ仕事ばかりさせられて……楽しくないのよ」
首を斬れと言うように頭をメイプルに差し出すジルダ。
「…………」
スパイラルフィンを向けたまま動かないメイプル。
言う通りに、ひと思いにプレイヤーキルしてやるべきなのか。
「待て、メイプル」
そこで待ったをかけたのは、フェルテだった。
「ジルダとやら。我らの戦いに力を貸す気は無いか?」
「…………は?」
「我らに気取られずに忍び寄る身のこなし、正確に目標を麻痺させた腕の冴え、そしてその潔さ。ただ捨てるには惜しい。カノラよ、汝はそうは思わなかったか?」
不意にフェルテは、カノラに同意を求めた。
「え?えぇ、と……フェルテちゃんを拐ったのは良くないことだけど、メイプルさんの攻撃にもすぐに対応してたし、強い人なのかなぁと……」
困惑しつつも、カノラは率直に答える。
突如として勧誘を始めたフェルテに、ジルダどころか、アロウ達でさえ目を丸くする。
カノラの言葉を間に立ててから、フェルテは"スカウト"を続ける。
「我らはより強き力を欲している。それこそ、我らには無い力をな。あのような下郎の輩も、貴様を必要とせぬ者どもも、"宝の持ち腐れ"という言葉を知らぬようだしな」
ジルダは元々は別のパーティに所属していたようだが、必要とされなくなって追い出され、傭兵としてフリーでプレイしていたところで、汚れ仕事のようなことをやらされ続けていたらしい。
だが、それももう今日で終わりにしていいのだと、フェルテは言う。
これから寄って集って嬲るのではない、今回のことを問い質すためだ。
「貴様、ジルダと言ったか。何故そうも簡単に降参した?」
最初にフェルテがそう訊ねた。彼女が連れ去られたのは、その身柄をアロウ達もに売ってもらうための脅迫材料にするためだということは、相手のリーダーがそう言っていた。
対するジルダは、メイプルのスパイラルフィンの切っ先を突き付けられながらも淡々と吐き捨てるように答える。
「義理立てする必要が無いからよ」
「義理立て?」
それは何のことかと、今度はアロウが訊ねる。
「あんな奴らの仲間と思われるなんて、吐き気がするわ」
つまりジルダは、彼らを仲間だと思っていないということだ。
「あたしは奴らの言いなりになっていた、と言えばいいかしら」
「言いなりって……脅されていたってことですか?」
ルナは、ジルダの言葉をそう解釈した。
「そう。訳あって、そこのNPCを捕まえるなんて誘拐犯の真似事をさせられたのよ」
そう言いながらジルダはフェルテに目を向ける。
「脅されてたって、それって規約違反ですよね?運営に通報しないんですか?」
MAFの運営側には、悪質行為や違法行為をするプレイヤーに対して、一方的にアクセス権を凍結させる権限がある。
それを理由にしないのかとカノラは言うが。
「プレイヤー同士のいざこざには、基本的に関与しないのが運営のやり方よ。連中のやり口は、その運営に目を付けられないグレーラインだもの。通報したところで、『プレイヤー同士の問題には関与出来ません』と返されるのがオチ。それに関与するなら、あたしも連中も一纏めにして垢バンよ」
でも、とジルダは自棄になったようにその場に座り込む。
「もう、いいわ。……疲れちゃった」
プレイヤー同士の諍いが、人間関係に軋轢を生じさせたり、精神的苦痛や負担になる。
彼女はそれに翻弄されてきて、もう限界なのかもしれない。
「抵抗しないわ。さっさとプレイヤーキルして」
「MAFを、やめるんですか?」
諦めたジルダに、アロウはそう声をかけた。
「そうよ。仲間からも必要とされないし、傭兵プレイでも汚れ仕事ばかりさせられて……楽しくないのよ」
首を斬れと言うように頭をメイプルに差し出すジルダ。
「…………」
スパイラルフィンを向けたまま動かないメイプル。
言う通りに、ひと思いにプレイヤーキルしてやるべきなのか。
「待て、メイプル」
そこで待ったをかけたのは、フェルテだった。
「ジルダとやら。我らの戦いに力を貸す気は無いか?」
「…………は?」
「我らに気取られずに忍び寄る身のこなし、正確に目標を麻痺させた腕の冴え、そしてその潔さ。ただ捨てるには惜しい。カノラよ、汝はそうは思わなかったか?」
不意にフェルテは、カノラに同意を求めた。
「え?えぇ、と……フェルテちゃんを拐ったのは良くないことだけど、メイプルさんの攻撃にもすぐに対応してたし、強い人なのかなぁと……」
困惑しつつも、カノラは率直に答える。
突如として勧誘を始めたフェルテに、ジルダどころか、アロウ達でさえ目を丸くする。
カノラの言葉を間に立ててから、フェルテは"スカウト"を続ける。
「我らはより強き力を欲している。それこそ、我らには無い力をな。あのような下郎の輩も、貴様を必要とせぬ者どもも、"宝の持ち腐れ"という言葉を知らぬようだしな」
ジルダは元々は別のパーティに所属していたようだが、必要とされなくなって追い出され、傭兵としてフリーでプレイしていたところで、汚れ仕事のようなことをやらされ続けていたらしい。
だが、それももう今日で終わりにしていいのだと、フェルテは言う。
0
あなたにおすすめの小説
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜
犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。
異世界を救ってほしい。
そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉
異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。
転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど?
人がいいって言ったのに。
竜人族?
竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ!
それ以外はおおよそ希望通りだけど……
転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。
まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。
もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。
竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる