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羽ばたきの時

107話 支配者、地に墜つ

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 地上に降りてもその脅威は健在のレッドワイバーンは、大きく首を振り回してフェルテを噛み砕こうと迫るが、フェルテは盾で噛み付きを受け流し、その流れのまま懐に飛び込み、腹下で宝剣を振るい斬りつけていく。
 懐にいるフェルテを排除しようと動けば、ルナのエナジーライフルによる射撃がそれを阻害し、カノラがその二人にさらなる強化を上掛けする。

 ともかくは懐のフェルテから排除せねばと、レッドワイバーンは一度飛び上がり、そのまま落下するようにフェルテを押し潰そうとする。
 しかし、フェルテの反応も早く、レッドワイバーンが飛び上がった時点で既に懐から抜け出しており、巨躯は地面を押し潰すだけに終わる。

 フェルテが飛び退いた所をカバーするように、砲弾の嵐――ジルダのヘビーガトリングガンとマシンキャノンが撃ち込まれ、さらにその上からアロウがワイルドカットラスを振りかぶって急降下してくる。

「でえぇりゃぁっ!!」

 落下の勢いと共に上段から振り下ろされた蛮刀の一撃は、レッドワイバーンの頭部に叩き込まれ、頭部の甲殻を砕き割られたレッドワイバーンは蹈鞴を踏んで大きく仰け反る。

「まだまだぁ!」

 そこでアロウは攻撃の手を止めず、一撃、二撃、三撃と連続でワイルドカットラスを振るい、レッドワイバーンの頭部に傷を刻み込んでいく。

「攻め落とす!」

 ここが好機と言わんばかりに、ジルダはヘビーガトリングガンとマシンキャノンの上から、残りのホーミングミサイルとマイクロミサイルのハッチを開き、全弾発射。
 銃弾砲弾の上からさらに散弾が暴風雨のごとく降り注ぎ、レッドワイバーンの鱗を穿ち、喰い破っていく。

 ルナとカノラも呼吸を合わせてエナジーライフルとライトサブマシンガンを的確に撃ち込む。

 懐から離脱したフェルテは宝剣を構えて、紫色の魔法陣――ライトニングのそれとは違う、一回り大きく複雑な刻印ルーンを描く。

「――閃き光れ、電光雷轟――『バスターヴォルト』!!」

 詠唱と共に宝剣の切っ先を向ければ、稲妻を束ねたような光柱が紫電と共に放たれ、レッドワイバーンの横腹へ突き刺さり、体内から灼き潰して行く。
 "智"の儀を終えたことで、より強力な攻撃魔術を発動出来るようになったようだ。

 フェルテの放ったバスターヴォルトが決め手となったか、レッドワイバーンは悪足掻きに火球ブレスを放とうとして、失敗し、口蓋を爆発させながら、その巨躯が地に伏せる。
 
 レッドワイバーン、撃破だ。

 テクスチャとなって消失し、大量の素材アイテムをドロップしていった。

「よっしゃぁ!!」

 強敵の撃破に、アロウはガッツポーズを決める。

「やりましたね!」

「ふぅ、けっこう強かったね」

 ルナもクエストクリアを喜び、カノラは安堵に胸を撫で下ろす。

「ま、こんなもんでしょ」

「うむ、我らにかかれば容易いものだ」

 ジルダとフェルテは幾分か精神的に余裕があるのか、落ち着きを払って一息ついている。

 ドロップした素材を拾い集め、ついでに周辺の鉱石なども集めてから、アロウ達はクエストクリアした。
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