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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Et deux cœurs ont été filés <そして二つの心は一つへ>~
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デュランが勇と向かうのは彼等の屋敷。
そんな中でインカムを取り出し、そっと耳へと充てる。
あれだけの激戦で壊れない訳も無く、既に筐体はボロボロだ。
ただちょっと光を放てば―――
壊れていたはずのインカムが途端に真っ白なボディへと変化していく。
インカム技術を【創世の鍵】でアレンジしたのだ。
今のデュランはもう完全に天士に目覚めている。
だから創世宝具を扱う事もこうして出来る訳で。
もちろん、こうして滞り無く成し得たのは勇がほんの少しだけ手助けをしたからだが。
「現在フランス国内にて戦闘中の全【救世同盟】兵に告ぐ。 私はデューク=デュラン。 皆が知る【救世同盟】の代表だ」
こうして出来上がった創世インカムにもはや送れぬ声は無い。
疑似電波を大地へと送り、世界中に直接届けられるのだから。
故に、この通信は彼の意識する範囲―――すなわちフランス全土にも届いている。
現在戦闘中、あるいは戦闘準備中のあらゆる通信網へと。
それに限ってはフルオープンチャンネルによる強制介入である。
「そのデューク=デュランが命じる。 これより全ての戦闘行動を停止せよ。 繰り返す。 これより全ての戦闘行動を停止せよ。 これは決して冗談でも気の迷いでも何でもない。 我々の戦いは終わった。 【救世同盟】の敗北として」
その中で惜しみなく放たれたのは、事実上の敗北宣言。
それもただ戦いの負けを認めただけではない。
今回の【救世同盟】という存在そのものがグランディーヴァに負けたという宣言である。
それも世界中に向けて。
この通信を傍受出来た全ての者達への宣言として。
世界へ向けての声は普通の電波放送だ。
ほんの少し、誰かが拾うだけで十分だから。
「これ以上の戦いを私は望まない。 【救世同盟】としても。 それでも戦う事を選ぶのならば、私がその戦いを止める為に赴くとしよう。 私にはそれだけの気概があるという事は理解して頂きたい」
そんな通信の最中、二人がとうとう茶奈達の下にまで到達し。
無言で勇が頷きを見せると、彼女達もまた静かに後へと続く。
そうして気付けば―――
勇とデュラン、仲間達が揃って並ぶという仰々しい様子が露わとなっていて。
それを遥か先から眺めていた救世同盟兵達は何を思ったのだろうか。
通信を聞いて半信半疑だった者も、その光景を見た途端にその歩を進めていき。
武器も装備もかなぐり捨て、その歩みは次第に駆け足へと変わっていく。
その姿はまるで勇達に続かんとせんばかりに。
屋敷の前へと辿り着いた勇達一行。
そこで仲間達に見せたのは、デュランと勇が並んで皆の前に立つ姿だった。
もう誰一人として敵意を見せず。
二つの勢力の人員が入り乱れる様にして立つ。
内心では敵意を抱く者もいるだろう。
それでも争いにならないのは、それだけデュランの影響力が大きいから。
皆、待っているのだ。
先程の通信に続くであろう、彼の意思を。
「何も言わずに付いてきてくれてありがとう。 とはいえ、私の仲間は殆ど力尽きてしまったみたいで、この場には来れない者が多いみたいだけどね」
とはいえ、こうして付いて来たデュラン直属の仲間はエクィオとキャロだけだ。
アルバとピューリーは気絶したままで動かす事も憚れたから、命力だけを与えて置いてきて。
サイはもうこの場所にはおらず、アージも重傷で動けそうになく。
パーシィは瀬玲の秘術によって傷こそ癒されているが、当然死んだ様に眠ったまま。
黒鷲は既にもうこの世にはいない。
それでもデュランは今居る者達に伝えねばならないから。
魔剣使いでも無い救世同盟兵達もがこうして集まったから。
だからこそデュランは高々と語る。
目の前に集まってくれた者達へと。
仲間でも、そうでなくとも関係無く。
「先程の通信で私が宣言した事は真実だ。 今日この日、【救世同盟】はグランディーヴァに敗北した。 私の意思が折れた事によってね」
詳しい事情を知らなくとも、茶奈達もなんとなくそう理解していたのだろう。
そんなデュランの言葉を前に驚く事も無く、ただただ静かに耳を傾けるのみ。
逆にエクィオ達も一般兵達も、戸惑いを隠せない様だが。
「私はユウ=フジサキとの戦いの最中で真理に到達した。 どうやら私も彼と同じ天士へと成れる資格があったらしくてね。 その力で私は地球の声を聞いたんだ。 そして私の推し進めようとした理念が誤解から生まれた過ちであった事に気付かされた」
でもそう語るデュランも全てを伝えるつもりは無い。
地球の中心でデュゼローと会ってきた、などと言ってもまだ仲間達にはわからないから。
だからその事実は敢えてぼやけさせ、要点だけを伝える事にしたのだ。
余計な誤解を与えない様に。
「同志デュゼローがやろうとしていた事が間違いだったのだ。 その理念に則って行動した私も同様にね。 怨みや怒りで戦い続けても世界は救われないのだと。 その先に待つのは絶望しか無いのだと」
それでいて伝えねばならない事はしっかりと伝える。
自身が間違っていたという事、その根源の人物も間違っていたという事。
きっと内心ではデュランも苦しいだろう。
自分を責めるよりもずっと。
恩師の事を「過ちを犯した罪人」として扱わねばならないのだから。
でもこれは何よりデュゼロー自身が望んだ事だから。
だから今はデュランとしてデュゼローを責める事選んだのだ。
己もが罪人であり、その意思を汲んだ者だから。
彼の無念もまた引き継ぐ事を心に誓う為に。
「そこで私はこのユウ=フジサキと対話した末に決めた。 これより【救世同盟】はその理念を捨て、【双界連合グランディーヴァ】と協力体制を敷く事をここに宣言する!!」
そう、デュランは【救世同盟】である事を捨てるつもりは無かったのだ。
ただその志を本来あるべき姿に戻すだけ。
〝愛で世界を救う〟というカタチに。
しかしこれにはデュランの仲間達も動揺を拭えない。
こんな事を突然言われても、簡単に受け入れられる訳も無いのだから。
誰しも不安に思うだろう。
彼等が【救世同盟】として戦ってきたのは、世界を救う為で。
ひいては善行であり、正義感によるものだった。
それをこうして否定され、更には罪にもなりえるとなれば。
「皆の動揺はわかる。 当然だ。 今までやってきた事を否定するにも等しい宣言なのだからね。 ただ心配はしないで頂きたい。 これまでで【救世同盟】として犯してきた罪を皆に償わせる様な事はしない!! 全ては私に責任があるのだから!!」
けれどデュランはその罪さえも自身が背負う事を決めた。
デュゼローと共に。
それが今の〝デューク=デュラン〟の志だから。
その名を語り続ける覚悟が今の彼にはあるのだから。
「【救世同盟】が生み出した罪は全て、私が背負う。 そしてその罪と罰を受け入れる為に、償う為に私はグランディーヴァと共に戦う事を決めた!! その想いを受け継ぎ、皆の未来へと繋げる為に!!」
その声に力が籠り、拳が強く振り上げられる。
決意を露わにした力強い握り拳を。
「だがそれでも理解出来ぬ者は居るだろう。 だから私は皆が去る事を止めはしない。 これより先で【救世同盟】を去った者を責める事も許さない! 責めるのならば私を責めよ!! 私はその声を真摯に受け止めよう!!」
そうして広げられた両手が、その決意を体現する。
誰もの声を受け止めんばかりに。
「しかし私やユウ達だけではアルトラン・ネメシスという存在に立ち向かう事は厳しいと言わざるを得ない。 だからこそ私は恥を忍んで敢えて望む!! 敢えて願う!! どうか皆の力を貸して欲しい!! 真に世界を救う為に!! それが【救世同盟】代表、デューク=デュランの最後の頼みだあッ!!!」
この一声はまさに団体の代表たる存在に相応しい叫びだった。
それ程までに力強く、誇り高く、気高く。
それでいて、皆の心を掻き毟らんばかりに貫いたのだ。
だからこそ、こうなるのは必然だったのだろう。
ウオオオオオオーーーーーーッッッ!!!!!
その瞬間、場が突如として雄叫びに包まれた。
皆、そんな事を言われて昂らない訳が無かったのだ。
誰しも世界を愛し、国を愛し、正義を愛した者達だから。
決して戦いを目的としている訳ではなく、全ては世界を救う為だったから。
例えデュランが罪を犯したとしても。
その全ての責を負う者だとしても。
彼等はそんな事が出来るデュランだから付いて来たのだ。
【救世同盟】の代表だからではない。
デューク=デュランという存在を慕ったから今ここに居るのだ。
だからこの場に去る者など居はしない。
皆、デュランの声にただ応えるだけだ。
「我々も貴方と共に戦う!!」と。
デュランはこの日、こんなに感謝した事は無いだろう。
自分はつくづく、良い〝家族達〟に恵まれたのだと。
喜びの余り、その両拳を胸元で握り締めてしまう程に。
その目を潤わせる程に。
「皆ありがとう……!! ではこれより【救世同盟】は志を改め、グランディーヴァと共に世界救済計画を実行しようと思う。 ……でも今日はこれで終わりにしよう。 皆、帰るべき所に帰ってくれ。 もしかしたら今以上に厳しい戦いが待っているかもしれないから。 皆の時間を大事にして欲しいから」
でも涙は見せない。
デュラン達の戦いはまだ始まったばかりだから。
まだ弱みを見せる所では無いから。
だから彼等は勇んで帰るだろう。
そんな涙と弱みを見ない為に。
そんな事など見なくても聞かなくてもわかるから。
彼等もまたそれくらいわかる〝人〟なのだから。
こうして【双界連合グランディーヴァ】と【救世同盟】による、フランス国土を巻き込んだ戦いが終わりを告げた。
どちらの団体も消える事無く。
その意思を統一するという結果を残して。
これで事実上、この地球上における人類同士の戦いに終止符が打たれた事になる。
デュラン達以上の人間や魔者はもう存在しないから。
戦うべき相手ももう居ないから。
だからもう敵はただ一人―――アルトラン・ネメシスだけだ。
ただ、この戦いで失った物も少なくは無いだろう。
【救世同盟】が間違っていたという事実は少なくとも、信じていた者達に失望を与えたから。
そういった意味ではアルトランの思惑通りの形になったと言わざるを得ない。
けれど、それが人類にとっての後退を意味する訳ではない。
勇とデュランが手を取り合った事で、確実に世界の天秤は正に傾きつつある。
その心がある限り、まだ勇達に残された手はあるのだから。
例えその存在がアルトランに悟られようとも、勇達は抗い続ける。
最後の最後まで、世界を救えるその日まで。
終わりなんて迎えない為に。
彼等は―――その力を余す事無く奮い続ける。
第三十六節 完
そんな中でインカムを取り出し、そっと耳へと充てる。
あれだけの激戦で壊れない訳も無く、既に筐体はボロボロだ。
ただちょっと光を放てば―――
壊れていたはずのインカムが途端に真っ白なボディへと変化していく。
インカム技術を【創世の鍵】でアレンジしたのだ。
今のデュランはもう完全に天士に目覚めている。
だから創世宝具を扱う事もこうして出来る訳で。
もちろん、こうして滞り無く成し得たのは勇がほんの少しだけ手助けをしたからだが。
「現在フランス国内にて戦闘中の全【救世同盟】兵に告ぐ。 私はデューク=デュラン。 皆が知る【救世同盟】の代表だ」
こうして出来上がった創世インカムにもはや送れぬ声は無い。
疑似電波を大地へと送り、世界中に直接届けられるのだから。
故に、この通信は彼の意識する範囲―――すなわちフランス全土にも届いている。
現在戦闘中、あるいは戦闘準備中のあらゆる通信網へと。
それに限ってはフルオープンチャンネルによる強制介入である。
「そのデューク=デュランが命じる。 これより全ての戦闘行動を停止せよ。 繰り返す。 これより全ての戦闘行動を停止せよ。 これは決して冗談でも気の迷いでも何でもない。 我々の戦いは終わった。 【救世同盟】の敗北として」
その中で惜しみなく放たれたのは、事実上の敗北宣言。
それもただ戦いの負けを認めただけではない。
今回の【救世同盟】という存在そのものがグランディーヴァに負けたという宣言である。
それも世界中に向けて。
この通信を傍受出来た全ての者達への宣言として。
世界へ向けての声は普通の電波放送だ。
ほんの少し、誰かが拾うだけで十分だから。
「これ以上の戦いを私は望まない。 【救世同盟】としても。 それでも戦う事を選ぶのならば、私がその戦いを止める為に赴くとしよう。 私にはそれだけの気概があるという事は理解して頂きたい」
そんな通信の最中、二人がとうとう茶奈達の下にまで到達し。
無言で勇が頷きを見せると、彼女達もまた静かに後へと続く。
そうして気付けば―――
勇とデュラン、仲間達が揃って並ぶという仰々しい様子が露わとなっていて。
それを遥か先から眺めていた救世同盟兵達は何を思ったのだろうか。
通信を聞いて半信半疑だった者も、その光景を見た途端にその歩を進めていき。
武器も装備もかなぐり捨て、その歩みは次第に駆け足へと変わっていく。
その姿はまるで勇達に続かんとせんばかりに。
屋敷の前へと辿り着いた勇達一行。
そこで仲間達に見せたのは、デュランと勇が並んで皆の前に立つ姿だった。
もう誰一人として敵意を見せず。
二つの勢力の人員が入り乱れる様にして立つ。
内心では敵意を抱く者もいるだろう。
それでも争いにならないのは、それだけデュランの影響力が大きいから。
皆、待っているのだ。
先程の通信に続くであろう、彼の意思を。
「何も言わずに付いてきてくれてありがとう。 とはいえ、私の仲間は殆ど力尽きてしまったみたいで、この場には来れない者が多いみたいだけどね」
とはいえ、こうして付いて来たデュラン直属の仲間はエクィオとキャロだけだ。
アルバとピューリーは気絶したままで動かす事も憚れたから、命力だけを与えて置いてきて。
サイはもうこの場所にはおらず、アージも重傷で動けそうになく。
パーシィは瀬玲の秘術によって傷こそ癒されているが、当然死んだ様に眠ったまま。
黒鷲は既にもうこの世にはいない。
それでもデュランは今居る者達に伝えねばならないから。
魔剣使いでも無い救世同盟兵達もがこうして集まったから。
だからこそデュランは高々と語る。
目の前に集まってくれた者達へと。
仲間でも、そうでなくとも関係無く。
「先程の通信で私が宣言した事は真実だ。 今日この日、【救世同盟】はグランディーヴァに敗北した。 私の意思が折れた事によってね」
詳しい事情を知らなくとも、茶奈達もなんとなくそう理解していたのだろう。
そんなデュランの言葉を前に驚く事も無く、ただただ静かに耳を傾けるのみ。
逆にエクィオ達も一般兵達も、戸惑いを隠せない様だが。
「私はユウ=フジサキとの戦いの最中で真理に到達した。 どうやら私も彼と同じ天士へと成れる資格があったらしくてね。 その力で私は地球の声を聞いたんだ。 そして私の推し進めようとした理念が誤解から生まれた過ちであった事に気付かされた」
でもそう語るデュランも全てを伝えるつもりは無い。
地球の中心でデュゼローと会ってきた、などと言ってもまだ仲間達にはわからないから。
だからその事実は敢えてぼやけさせ、要点だけを伝える事にしたのだ。
余計な誤解を与えない様に。
「同志デュゼローがやろうとしていた事が間違いだったのだ。 その理念に則って行動した私も同様にね。 怨みや怒りで戦い続けても世界は救われないのだと。 その先に待つのは絶望しか無いのだと」
それでいて伝えねばならない事はしっかりと伝える。
自身が間違っていたという事、その根源の人物も間違っていたという事。
きっと内心ではデュランも苦しいだろう。
自分を責めるよりもずっと。
恩師の事を「過ちを犯した罪人」として扱わねばならないのだから。
でもこれは何よりデュゼロー自身が望んだ事だから。
だから今はデュランとしてデュゼローを責める事選んだのだ。
己もが罪人であり、その意思を汲んだ者だから。
彼の無念もまた引き継ぐ事を心に誓う為に。
「そこで私はこのユウ=フジサキと対話した末に決めた。 これより【救世同盟】はその理念を捨て、【双界連合グランディーヴァ】と協力体制を敷く事をここに宣言する!!」
そう、デュランは【救世同盟】である事を捨てるつもりは無かったのだ。
ただその志を本来あるべき姿に戻すだけ。
〝愛で世界を救う〟というカタチに。
しかしこれにはデュランの仲間達も動揺を拭えない。
こんな事を突然言われても、簡単に受け入れられる訳も無いのだから。
誰しも不安に思うだろう。
彼等が【救世同盟】として戦ってきたのは、世界を救う為で。
ひいては善行であり、正義感によるものだった。
それをこうして否定され、更には罪にもなりえるとなれば。
「皆の動揺はわかる。 当然だ。 今までやってきた事を否定するにも等しい宣言なのだからね。 ただ心配はしないで頂きたい。 これまでで【救世同盟】として犯してきた罪を皆に償わせる様な事はしない!! 全ては私に責任があるのだから!!」
けれどデュランはその罪さえも自身が背負う事を決めた。
デュゼローと共に。
それが今の〝デューク=デュラン〟の志だから。
その名を語り続ける覚悟が今の彼にはあるのだから。
「【救世同盟】が生み出した罪は全て、私が背負う。 そしてその罪と罰を受け入れる為に、償う為に私はグランディーヴァと共に戦う事を決めた!! その想いを受け継ぎ、皆の未来へと繋げる為に!!」
その声に力が籠り、拳が強く振り上げられる。
決意を露わにした力強い握り拳を。
「だがそれでも理解出来ぬ者は居るだろう。 だから私は皆が去る事を止めはしない。 これより先で【救世同盟】を去った者を責める事も許さない! 責めるのならば私を責めよ!! 私はその声を真摯に受け止めよう!!」
そうして広げられた両手が、その決意を体現する。
誰もの声を受け止めんばかりに。
「しかし私やユウ達だけではアルトラン・ネメシスという存在に立ち向かう事は厳しいと言わざるを得ない。 だからこそ私は恥を忍んで敢えて望む!! 敢えて願う!! どうか皆の力を貸して欲しい!! 真に世界を救う為に!! それが【救世同盟】代表、デューク=デュランの最後の頼みだあッ!!!」
この一声はまさに団体の代表たる存在に相応しい叫びだった。
それ程までに力強く、誇り高く、気高く。
それでいて、皆の心を掻き毟らんばかりに貫いたのだ。
だからこそ、こうなるのは必然だったのだろう。
ウオオオオオオーーーーーーッッッ!!!!!
その瞬間、場が突如として雄叫びに包まれた。
皆、そんな事を言われて昂らない訳が無かったのだ。
誰しも世界を愛し、国を愛し、正義を愛した者達だから。
決して戦いを目的としている訳ではなく、全ては世界を救う為だったから。
例えデュランが罪を犯したとしても。
その全ての責を負う者だとしても。
彼等はそんな事が出来るデュランだから付いて来たのだ。
【救世同盟】の代表だからではない。
デューク=デュランという存在を慕ったから今ここに居るのだ。
だからこの場に去る者など居はしない。
皆、デュランの声にただ応えるだけだ。
「我々も貴方と共に戦う!!」と。
デュランはこの日、こんなに感謝した事は無いだろう。
自分はつくづく、良い〝家族達〟に恵まれたのだと。
喜びの余り、その両拳を胸元で握り締めてしまう程に。
その目を潤わせる程に。
「皆ありがとう……!! ではこれより【救世同盟】は志を改め、グランディーヴァと共に世界救済計画を実行しようと思う。 ……でも今日はこれで終わりにしよう。 皆、帰るべき所に帰ってくれ。 もしかしたら今以上に厳しい戦いが待っているかもしれないから。 皆の時間を大事にして欲しいから」
でも涙は見せない。
デュラン達の戦いはまだ始まったばかりだから。
まだ弱みを見せる所では無いから。
だから彼等は勇んで帰るだろう。
そんな涙と弱みを見ない為に。
そんな事など見なくても聞かなくてもわかるから。
彼等もまたそれくらいわかる〝人〟なのだから。
こうして【双界連合グランディーヴァ】と【救世同盟】による、フランス国土を巻き込んだ戦いが終わりを告げた。
どちらの団体も消える事無く。
その意思を統一するという結果を残して。
これで事実上、この地球上における人類同士の戦いに終止符が打たれた事になる。
デュラン達以上の人間や魔者はもう存在しないから。
戦うべき相手ももう居ないから。
だからもう敵はただ一人―――アルトラン・ネメシスだけだ。
ただ、この戦いで失った物も少なくは無いだろう。
【救世同盟】が間違っていたという事実は少なくとも、信じていた者達に失望を与えたから。
そういった意味ではアルトランの思惑通りの形になったと言わざるを得ない。
けれど、それが人類にとっての後退を意味する訳ではない。
勇とデュランが手を取り合った事で、確実に世界の天秤は正に傾きつつある。
その心がある限り、まだ勇達に残された手はあるのだから。
例えその存在がアルトランに悟られようとも、勇達は抗い続ける。
最後の最後まで、世界を救えるその日まで。
終わりなんて迎えない為に。
彼等は―――その力を余す事無く奮い続ける。
第三十六節 完
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鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
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※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
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