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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~す、凄すぎて何もわからない……!~
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空気が張り詰める。
緊張が肌を突く。
まるで稲妻が駆け巡ったかの如く。
剣聖と【グリュダン】の対峙はそれ程までに静かだった。
いつぶつかり合うとも知れぬ状況で、勇達が唾を飲む。
相手は魔者でも、今までの相手と違って意思疎通など不可能だから。
ならもはや戦い以外の選択肢は皆無なのだと。
そう、【グリュダン】は普通の魔者などではない。
生死という概念そのものが通用しない、真の怪物なのだ。
ならばこの巨人には、緊張という感情さえ無縁と言えよう。
『ボ オ オ オ オ オォォォーーーーーーンッッ!!!』
その時、突如として重低の激音が場に響く。
なんと、【グリュダン】が咆えたのだ。
何たる凄まじい音量か。
それは遠くに居る福留達にさえも届く程で。
ならば近場の剣聖や、勇とちゃなへの影響は計り知れない。
サウンドウェーブが襲ったのである。
大気を、大地を揺るがす程の振動波が。
それも余りの威力ゆえに、勇とちゃなが吹き飛ばされそうにもなるという。
だが、その中でも剣聖は不動だった。
全く動じていない。
大気と大地が揺れようとも、微動だにしていないのだ。
まるでこの振動を一切受け付けていないかの様な。
しかしその途端、そんな剣聖が突如として影で覆われる事に。
巨大な右拳が下ろされていた。
今の一瞬で、ほぼ無挙動で。
それというのも、【グリュダン】は知っているから。
別に振り上げなくとも、人間など超重の拳を降ろすだけで簡単に死ぬのだと。
だから速い。
今までの攻撃もそう。
全てにおいて溜めが無いのだ。
だから反応速度が異常であると感じさせていて。
そしてたったそれだけで、大地は一瞬にして激動に晒される事となる。
ドギャゴオォォォンッ!!
そんな拳が間も無く大地を突き、激震が周囲へ走り込む。
衝撃波が、地震が、更には反発力による大地の隆起もが。
たちまち勇とちゃなが跳ね飛ばされるまでの突風をも生み出していて。
直後、周囲の何もかもを吹き飛ばしていく。
余りの激音ゆえに、他全てを無音の事象と化しながら。
ならば直撃地点の剣聖はどうなったのだろうか。
なんと、剣聖は降ろされた腕スレスレに跳ねていた。
まるで今の衝撃すらも全て無効化したかの様に軽やかと。
「ハッハァァァーーーーーーッ!!」
その動き、まるで羽毛か。
跳ね上がりながらも動きはしなやか、かつぐるぐると自由に身体を捻らせているという。
ただ、その最中に刻まれた斬撃は巨腕表皮を容赦なく抉り取っていくという。
それも豆腐に通す包丁の如く、抵抗を感じさせずに幾度と無く。
しかもその末に、自慢の太い脚が巨人の腹部を蹴り上げていて。
その直後、勇達は驚くべき瞬間を目の当たりにする。
超巨体が、浮いていた。
あたかも巨大なハンマーで腹部を殴られたかの様に身体を曲げながら。
余りの衝撃ゆえに、打撃地点の一帯大気が歪んで見える。
そうなるまでの強烈な衝撃が巨人を襲ったのだろう。
なれば、これはもはや爆発の領域である。
そう比喩する以外に無い威力が、今の剣聖の蹴りにはあったのだ。
とはいえ、これだけで終わる訳も無い。
打ち上げられた【グリュダン】がなお戦意を見せつける。
身体五つ分ほど飛ばされたにも拘らず、両足でしっかり着地してみせるという。
それどころか、今度は自ら高く跳ねていて。
一瞬にして、あの巨体がなんと剣聖の直上へ。
まるで空を包み隠さんばかりに。
「うおおッッ!!?」
一方の剣聖はまだ着地したばかり。
にも拘らずの超速接近に堪らず狼狽える姿が。
それ程に凄まじい蹴り出しだった。
景色の彼方で、地面が空高く弾け飛ぶ程に。
勇達がもはや立ち上がる事さえ困難となるまでの激震をもたらして。
しかもその足が直後には剣聖を襲う事に。
その巨体とは思えぬ鋭い回転蹴りが見舞われたのだ。
空を切り裂かんまでの、縦に弧を描いた豪快な一撃として。
これではもはや叩き付けだ。
そう言わんばかりの勢いで巨大な爪先が迫っていたのだから。
しかしそうであろうと剣聖は怯まない。
この圧倒的な一撃を前に、なんと魔剣二刀を掲げて迎え撃っていて。
更にはその刃をレールの如く並べ、打ち込まれた足先を滑らせながら走り行く。
「かぁぁぁーーーーーーッッ!!!」
するとどうだ。
打ち込んだはずの巨大な足先が捻られていく。
まるでスリップするかの如く。
それも巨躯までもが巻き込まれ、遂には転倒するという。
しかもその倒れた先には剣聖が待ち構えていて。
またしても跳び上がり、魔剣二刀を叩き付ける。
ドッギャァァァーーーーーーンッッッ!!!!
これでまた【グリュダン】が高く打ち上がる事に。
今度はその巨体が空中でぐるりと回る程により激しく、空高く。
そして剣聖は今、それさえ追い越す程に高く飛び上がっていた。
いつ跳ねたかもわからない。
打ち上げたと思ったら、既に飛び上がっていたのだから。
まるで空中で跳ねたと言わんばかりに。
「ぬううううんッッッ!!!!」
更には強大な命力を魔剣より放ち、二刀一刃として叩き付ける。
なればもはやその巨体とて成す術無く。
バッキャァァァッッ!!!
たちまち、あの巨体が彼方へと叩き落される事に。
先程とは違う、着地さえ叶わない程の威力を伴って。
故に、景色の彼方で巨体が転がっていく。
幾度と無く大地を激震させて。
砂塵にも足る土煙に撒かれながら。
その末に剣聖は平然と大地へ降り立つという。
相変わらずの笑みを浮かべたままに。
「す、凄すぎて何もわからない……!」
そんな一部始終を見ていた者達はもはや誰もが理解出来なかった。
今の攻防がとても人間の為せる業とは思えなくて。
なにせ数千トンもありそうな巨体を何千メートルと叩き飛ばしたのだから。
だからこそ勇もちゃなも唸るしかない。
その人間離れした圧倒的身体能力を前に。
これが最強なのか、と。
そう、これこそが〝剣聖〟。
魔剣使いの頂点にして究極たる実力者の強さなのである。
緊張が肌を突く。
まるで稲妻が駆け巡ったかの如く。
剣聖と【グリュダン】の対峙はそれ程までに静かだった。
いつぶつかり合うとも知れぬ状況で、勇達が唾を飲む。
相手は魔者でも、今までの相手と違って意思疎通など不可能だから。
ならもはや戦い以外の選択肢は皆無なのだと。
そう、【グリュダン】は普通の魔者などではない。
生死という概念そのものが通用しない、真の怪物なのだ。
ならばこの巨人には、緊張という感情さえ無縁と言えよう。
『ボ オ オ オ オ オォォォーーーーーーンッッ!!!』
その時、突如として重低の激音が場に響く。
なんと、【グリュダン】が咆えたのだ。
何たる凄まじい音量か。
それは遠くに居る福留達にさえも届く程で。
ならば近場の剣聖や、勇とちゃなへの影響は計り知れない。
サウンドウェーブが襲ったのである。
大気を、大地を揺るがす程の振動波が。
それも余りの威力ゆえに、勇とちゃなが吹き飛ばされそうにもなるという。
だが、その中でも剣聖は不動だった。
全く動じていない。
大気と大地が揺れようとも、微動だにしていないのだ。
まるでこの振動を一切受け付けていないかの様な。
しかしその途端、そんな剣聖が突如として影で覆われる事に。
巨大な右拳が下ろされていた。
今の一瞬で、ほぼ無挙動で。
それというのも、【グリュダン】は知っているから。
別に振り上げなくとも、人間など超重の拳を降ろすだけで簡単に死ぬのだと。
だから速い。
今までの攻撃もそう。
全てにおいて溜めが無いのだ。
だから反応速度が異常であると感じさせていて。
そしてたったそれだけで、大地は一瞬にして激動に晒される事となる。
ドギャゴオォォォンッ!!
そんな拳が間も無く大地を突き、激震が周囲へ走り込む。
衝撃波が、地震が、更には反発力による大地の隆起もが。
たちまち勇とちゃなが跳ね飛ばされるまでの突風をも生み出していて。
直後、周囲の何もかもを吹き飛ばしていく。
余りの激音ゆえに、他全てを無音の事象と化しながら。
ならば直撃地点の剣聖はどうなったのだろうか。
なんと、剣聖は降ろされた腕スレスレに跳ねていた。
まるで今の衝撃すらも全て無効化したかの様に軽やかと。
「ハッハァァァーーーーーーッ!!」
その動き、まるで羽毛か。
跳ね上がりながらも動きはしなやか、かつぐるぐると自由に身体を捻らせているという。
ただ、その最中に刻まれた斬撃は巨腕表皮を容赦なく抉り取っていくという。
それも豆腐に通す包丁の如く、抵抗を感じさせずに幾度と無く。
しかもその末に、自慢の太い脚が巨人の腹部を蹴り上げていて。
その直後、勇達は驚くべき瞬間を目の当たりにする。
超巨体が、浮いていた。
あたかも巨大なハンマーで腹部を殴られたかの様に身体を曲げながら。
余りの衝撃ゆえに、打撃地点の一帯大気が歪んで見える。
そうなるまでの強烈な衝撃が巨人を襲ったのだろう。
なれば、これはもはや爆発の領域である。
そう比喩する以外に無い威力が、今の剣聖の蹴りにはあったのだ。
とはいえ、これだけで終わる訳も無い。
打ち上げられた【グリュダン】がなお戦意を見せつける。
身体五つ分ほど飛ばされたにも拘らず、両足でしっかり着地してみせるという。
それどころか、今度は自ら高く跳ねていて。
一瞬にして、あの巨体がなんと剣聖の直上へ。
まるで空を包み隠さんばかりに。
「うおおッッ!!?」
一方の剣聖はまだ着地したばかり。
にも拘らずの超速接近に堪らず狼狽える姿が。
それ程に凄まじい蹴り出しだった。
景色の彼方で、地面が空高く弾け飛ぶ程に。
勇達がもはや立ち上がる事さえ困難となるまでの激震をもたらして。
しかもその足が直後には剣聖を襲う事に。
その巨体とは思えぬ鋭い回転蹴りが見舞われたのだ。
空を切り裂かんまでの、縦に弧を描いた豪快な一撃として。
これではもはや叩き付けだ。
そう言わんばかりの勢いで巨大な爪先が迫っていたのだから。
しかしそうであろうと剣聖は怯まない。
この圧倒的な一撃を前に、なんと魔剣二刀を掲げて迎え撃っていて。
更にはその刃をレールの如く並べ、打ち込まれた足先を滑らせながら走り行く。
「かぁぁぁーーーーーーッッ!!!」
するとどうだ。
打ち込んだはずの巨大な足先が捻られていく。
まるでスリップするかの如く。
それも巨躯までもが巻き込まれ、遂には転倒するという。
しかもその倒れた先には剣聖が待ち構えていて。
またしても跳び上がり、魔剣二刀を叩き付ける。
ドッギャァァァーーーーーーンッッッ!!!!
これでまた【グリュダン】が高く打ち上がる事に。
今度はその巨体が空中でぐるりと回る程により激しく、空高く。
そして剣聖は今、それさえ追い越す程に高く飛び上がっていた。
いつ跳ねたかもわからない。
打ち上げたと思ったら、既に飛び上がっていたのだから。
まるで空中で跳ねたと言わんばかりに。
「ぬううううんッッッ!!!!」
更には強大な命力を魔剣より放ち、二刀一刃として叩き付ける。
なればもはやその巨体とて成す術無く。
バッキャァァァッッ!!!
たちまち、あの巨体が彼方へと叩き落される事に。
先程とは違う、着地さえ叶わない程の威力を伴って。
故に、景色の彼方で巨体が転がっていく。
幾度と無く大地を激震させて。
砂塵にも足る土煙に撒かれながら。
その末に剣聖は平然と大地へ降り立つという。
相変わらずの笑みを浮かべたままに。
「す、凄すぎて何もわからない……!」
そんな一部始終を見ていた者達はもはや誰もが理解出来なかった。
今の攻防がとても人間の為せる業とは思えなくて。
なにせ数千トンもありそうな巨体を何千メートルと叩き飛ばしたのだから。
だからこそ勇もちゃなも唸るしかない。
その人間離れした圧倒的身体能力を前に。
これが最強なのか、と。
そう、これこそが〝剣聖〟。
魔剣使いの頂点にして究極たる実力者の強さなのである。
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