ピクトグラム君とバーチャルヘルパーちゃん ~異世界転生した底辺絵師ですが自由気ままに世界の常識を描き直そうと思います~

日奈 うさぎ

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第一章

第4話 エフリクス・イマジネーション

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「こ、これって……」

 俺がウサギちゃんを殴り飛ばしたという訳ではない。
 むしろ拳にすら当たっていない。
 ただその代わりに、何か妙なものが飛び出していた。

 それはなんとピクトグラム――つまりは絵だ。

 それも「非常口」などに使われる看板に描かれる、駆ける人の図。
 あれが立体的になって飛び出し、ウサギちゃんを押し返してしまったのだ。

『やりましたねぇ! 開眼おめでとうございまーすっ!』

「開、眼……?」

『そうでぇす! あなたはこの世界における原理を理解し、自分の持つ力を発現させることができました。これはつまり、あなたにこの世界で生きる資格が生まれたということに他なりませぇん!』

「俺に、生きる資格……」

 正直、実感が湧かない。
 資格だとか、開眼だとか原理だとか言われてもさっぱりだ。

 だけど不思議と納得はできてしまっている。
 もしかしたら俺には今のようなことが出来ると知ってしまったからかもしれない。

『実感が足りないようでしたら左腕をご覧くださーい』

「え? あれ、な、なんだこれ!?」

 しかしへるぱにこう言われて、俺は強引に実感させられてしまった。

 左腕、手首の付近に紋様が浮かび上がっていたのだ。
 それも非常口のピクトグラムのアイコンが小さくポツンと。

『それがあなたの能力の証。今お使いになった力の象徴にございまぁす』

「非常口……そうか、これであのウサギちゃんを退場させたってことか」

『ハイ。その力を名付けるならば【非常口:放】といった感じでしょうか』

「……そうだな。多分そんな感じだろうね」

 おかげで納得できたことに合点がいった。

 きっとこの力は俺の中ですでに出来上がった存在なのだ。
 なぜなら俺の想像力で生まれたものだから、在ることが俺にとっての前提となるのだろう。
 だから使える。操れる。そう心が理解しているのだ、と思う。

「なぁへるぱ、お前は俺がこれを使えるってわかっていたのか?」

『イイエ。そんな訳ないじゃないですかヤダー』

「じゃあなんで試すようなことをしたのさ?」

『その通り試しただけでございまっす。この程度で生き残れなければ今後もきっと野垂れ死ぬだけですし?』

「おいお~い、随分と転生者様に優しくない扱いだなぁ」

 こんなへるぱの気の抜けた回答にこっちも思わず気が抜けてしまった。
 それで疲れていたのを今さらに思い出し、つい尻餅を突く。

『しかしこの世界に訪れたということは〝エフリクス・イマジネーション〟を開放させられる可能性がある者ということに違いはありませぇん。故にこの結果は必然であったと言える訳なのでーす』

 気付けばへるぱの服装も元に戻っていた。
 コロコロと服装が変えられるのはともかく、演出がもうバーチャルチューバーにそっくりだ。
 画面端に居座る辺りが特にな。

「じゃあ俺の想像力次第で力がまだ鍛えられるってことなのかな」

『イェスイェース! 今の戦いでもレベルが上がって拡張性が増えてますよーっ!』

「へぇ……? まるでRPGみたいだな」

『そんな訳でへるぱちゃんからの朗報をお伝えしまーす!』

 お、なんだ?
 もしかしてボーナス展開とかそういうのか?

『後ろをご覧くださーい』

 そう思い、期待のままに背後へと振りむく。
 するとさっき見た夕焼けがまたしても見えた――のだが。

 心なしか、ウサギちゃんも再現されているように見える。

 しかもよくよく見れば一匹どころじゃない。
 二匹、三匹、現在進行形でどんどんと増えているようにさえ見えるんだが?

『そんなあなたにボーナスチャレーンジ! チャージングラビットAのスキル効果発動!〝緊急召集〟、この効果が発動した時、付近の仲間に危険を伝えて呼ぶことができる。この効果は自動発動であり、他スキルに邪魔されない』

「はああああああああああああああ!!!!!?????」

『ちなみに勝率は約0.7%。でも大丈夫、あなたは強いから平気です!』

「その大丈夫はまったく根拠が無い奴ゥ!」

 ダメだ、もう数えきれないくらい増えている。
 あんなのに追い付かれたら絶対無理だ。轢き殺されて跡形も残らない。
 そもそもその数字、仮に主人公補正があってもどう考えたってヤバいだろうが!

 だから俺は素直に戦略的撤退を選ぶ!

 もはやスタミナ切れどころの話じゃない。
 追い付かれないためにも足が折れようが走るしかない。

 何が何でも生きるんだ!
 俺がこの世界でも想像し続けるためにっ!
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