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7.お気に入りの髪飾り
しおりを挟む今日はレイモンドと街へ出かける日である。
自室の鏡の前で身だしなみをチェックし、時間を確認する。今日の服は桜色のワンピース。レイモンドの赤い髪と同系統の色だっため選んだ物だ。
(少し早いけれど、もう行こうかしら)
このまま自室にいても落ち着かずに何かを始めて遅れてしまいそうだ。
寮の外で少し待っていれば、レイモンドが駆け寄ってきた。待たせたことに謝罪をされたが、ステラが早くきてしまっただけなので、その旨を伝える。
私服のレイモンドを初めて見たステラは、制服以外の姿も素敵だなと思いながらこっそりと見ていた。
「ステラ嬢、今日も一段と可愛らしいな」
(ひょっ……!)
ステラは思わず俯いた。可愛らしいと言ったレイモンドの瞳は甘さと熱を持っているように感じられ、蕩けそうだったのだ。
心臓も大きな音を立てて動いているし、顔も熱い。にやけそうになる顔に力を入れるが、変な顔をしているに違いない。
絶対にレイモンドに顔は見せられない。
「すまない。今日のステラ嬢は花の妖精のようだっから見惚れてしまってつい……」
レイモンドから追撃が来た。
「ぅ、あ、りがとうございます……」
消え入りそうなか細い声だったが、なんとか声を出せた。ちょっとだけレイモンドに視線を向けたが、恥ずかしすぎて今日はもうレイモンドの顔を見れないかもしれない。
「やはり貴女は可愛らしい人だ」
「っも、もう勘弁してくださいませ!」
ステラはレイモンドから視線を外し、真っ赤になった顔に手を当てた。
「では、ステラ嬢。行きましょう」
「は、はい」
顔の熱が引いてきたころに、レイモンドが声をかけてきた。
学園から街までは徒歩で行く。その間、無言で歩くのも嫌だったため、ステラは話し続けた。途中でレイモンドが歩行を合わせてくれていることに気づいて嬉しくなり、話が止まってしまったりもしたが、いつの間にか街へとついていた。
その日は噂になっている劇を見ることになった。
友人のメイルと見ようと思っていたのに、好きな人と見ることになったと聞いた時は根掘り葉掘り聞いてしまった。
まさか自分も好きな人と見ることになるとは。
劇場に入ればそこかしこで今から始まる劇について話している。ステラも観劇の前には話したいと思うが、レイモンドに話しても退屈に思われるかもしれないからとパンフレットを隅々まで読むことで我慢した。
劇場から出ると、ステラはレイモンドに連れられて飲食店へとやってきた。
そこでレイモンドに劇はどうだったかと聞かれ、ステラは思ったことを次々と口に出していった。
「——それに対して主人公が、君以外目に入らないよ、と言っていたところ、も……ぅ、ごめんなさい。話しすぎですよね」
レイモンドが頷きながら楽しそうに聞いてくれるため、ついつい夢中になって自分だけが話していたことに気がついた。内容的にもレイモンドは劇には興味がなかっただろうに、ステラに合わせてくれたのだ。
そして、ステラの話の勢いに引くどころか続きを促してくる物だから、ステラは生き生きと話すことができた。
昼食を終えた後はさまざまな場所を回り、最後に雑貨屋へと来た。
メイルが街へ行くたびにお土産を買ってくるので、今度は渡す側になるのだ、とはりきって選んだ。
メイルに渡すのはティーカップ。でかでかと可愛らしい猫の顔が描かれたカップで、猫が好きなメイルにピッタリだと思って購入した物だった。
帰りもレイモンドと並んで歩き、寮の前まで送ってもらった。
中へ入ろうとすれば呼び止められ、渡されたのは花の飾りがついたピンだった。花は小ぶりで可愛らしく、レイモンドが選んでくれた物だと思うと、これがもう一生手に入らない高級な物のように思えてきた。
「嬉しいです! ありがとうございます、レイモンド様!」
これはもう毎日つけるしかない。それに、今日のことのお礼も兼ねて何かをプレゼントしたい。そうと決まれば早く自室へ戻ろう。
「それじゃあ本当にありがとうございました! また明日!」
レイモンドに別れを告げて自室へと戻り、ステラは紺色のハンカチにレイモンドのイニシャルと、横に狼を刺繍した。
後日それを渡せば、レイモンドは嬉しそうに微笑んだ。
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