断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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マリーの場合

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「マリー・ライン。罪状、殺人未遂、禁止薬物の密輸、暴行、その他の罪で只今より処刑とする」
両腕を縛られて、頭から袋を被せられる。
首を振って抵抗するが縄がかけられる。
いや、死にたくない。
怖いわ、助けてエルダー。
エルダー、エルダーエルダーエルダー
ガタンと音がして、床がなくなった。
強い衝撃、一瞬でマリーの意識はなくなった。
悪女マリーの最後。

のはずだった。

おかしい。
マリー(5歳)は目覚めたベッドの中で首をかしげる。
私は処刑されたはず。
愛する婚約者エルダーに愛されたくて、振り向いてほしくて、追いかけて束縛して。
彼の恋したサナを攻撃して、最後は殺そうとした。
そして全てが露見して。
最後に見たエルダーはサナに寄り添っていた。
兵士に連行される私には見向きもしなかった。
そして処刑されたはずなのに、なぜ私はここにいるのだろうか。
しかも幼くなって。
もしやこれが走馬灯というやつなのかしら。

3日が経ち、これが夢や幻ではないと、やっと私は時間が巻き戻っていることを確信した。
私は、生きている。
間違いない。
だって、目の前にあの日のエルダーがいる。
そう、今日は私がエルダーに初めて会った日。
お母さまが、友人であるエルダーのお母さまのところに私を連れてお見舞いに行った日。
つわりが重くて、ちょっと具合が良くないエルダーのお母さまを見舞った。
前と同じように、エルダーはエルダーのお母さまに言われて私をお庭に連れ出してくれた。
美しい金髪に晴れた日の空のような瞳の美少年のエルダーに、一目惚れをしたあの日のように、やはり胸が高鳴ります。
実感する。
やっぱり私はエルダーが好き。
でも2回目のせいでしょうか、押して押して押して、押すしかできなかった昔とちょっと違います。
なんといっても中身は23歳ですから。
幼いエルダーも素敵ですが、今すぐ彼に振り向いて欲しいとガツガツした気持ちにはなりません。
そうなると前は気づかなかった物が見えてきました。
エルダーがソワソワしているのがわかります。
私にお庭の説明をしてくれながら時々、ちらりと屋敷を振り返ります。
あそこはエルダーのお母さまのお部屋。
お母さまのことが心配なのね。
「エルダーさま、お部屋に戻りましょう」
「えっでも」
手を引いて屋敷に戻ろうとするとエルダーさまは立ち止まろうとする。
お母さまからお庭を案内するように言われたお客様、しかも年下から手を引かれて、困っているエルダーさまも素敵。
お母さまから言われたことを守りたいんですね。
でもいいんです。
「お母さまのとこ帰ろう」
手を引くと頷いてくださいました。
前の時は一緒にいたくて、エルダーさまを引き止めてしまいました。
エルダーさまのお母さまは、お産で命を落としました。
エルダーさまがお母さまといられる時間はもう残り少ないのを、私は知っています。
エルダーさまは手を引く私を見て笑顔でした。
「そうだね、かえろう」
ああああああああ、やっぱりエルダーさま大好き。

決めた。
せっかくもう一度やり直せるのだから。
今度こそエルダーさまと添い遂げます。
でも、私だけでなくエルダーさまも幸せにしたい。
これからのエルダーさまはお母様が亡くなったり、生まれたばかりの弟のためにと迎えられた気の合わない後妻にいじめられたりと色々な試練に見舞われる。
私は自分のことばかりで彼の負担になってばかりだった。
今ならエルダーさまが学園で出会ったサナに惹かれた理由がわかる気がします。
でも今からは違います。
暴力も付き纏いも、毒もなし。
だって私はこれからおこることを知っています。
絶対に選択を間違えない。
きっと。
  




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