断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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聖女ルシーダの場合

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顔の痛みと肌寒さで目が覚めた。
ここは罪人を入れる塔。
ため息をついて、硬い寝床というか寝床用と思われる台に起き上がる。
胸を塞ぐ罪悪感。
ルシーダはほんの半日前までは、あらゆるわがままを許される立場だった。
 

聖女
大陸のどこかで30年から50年に一度現れるといわれ、聖女のいるところ平和と繁栄があると言われている。
それが私、ルシーダだった。
この国では300年ぶりの聖女の誕生だった。
聖女だと認定された時から、幾人もの侍女がつき、希望は何でもかなえられるようになった。
親でさえも、ルシーダに意見することはできなくなった。
10歳の子供がそんな扱いを受けるとどうなるか。
ルシーダはどんどん増長した。
わがままを言い、気まぐれで周りを振り回し、気に入らないと排除した。
そして、ある朝それは崩壊した。
新たな聖女が見つかったのだ。
しかも元々平民のルシーダと違い、由緒正しい貴族の娘に。
気に食わなかった。
いつも通りに排除しようとして、排除されたのはルシーダの方だった。
それまでの8年間の行いで、ルシーダには味方がいなかった。
あっという間に今までの行いの証拠や証言が集まり、ルシーダは断罪された。
顔に罪人の焼きごてを押され、幽閉5年の罪とされた。

塔での5年間は単調に過ぎた。
朝晩食事が差し入れられる以外に変化はなく、一人きり。
たまに、逃してやるとか、取引を持ちかけてくるものがいるが、相手にしない。
罠かもしれないのに乗れるわけがない。
我が身はかわいいのだ。
焼きごての傷が癒える頃には反省も終わっていた。
やり過ぎたなと。
面白半分に貴族の結婚を決めた。
もう孫のいる女性に息子より若い男とかその逆とか。
めんどくさいからって、秋の収穫祭を取りやめさせた。
熱いお茶を出した侍女をクビにした。
仕事の遅れた侍女を一日中立たせた。
贅沢もいっぱい。
主に食べる方向で。
他にも色々。
でもね。
一通り反省したら逆に馬鹿らしくなった。
ただの小娘の言うことに何を右往左往してるのかと。
人のこと聖女だ何だと祭り上げて、何でも言うこと聞いて。
次ができたからいらないって。
馬鹿じゃないかと。
その程度の存在だと思っているなら初めから言いなりにならなきゃいいのよ。
結婚くらい自分で決めなさいよ。
わざわざ聞きに来なければいいのに。
聞きにくるからこちらも適当なこと言わないといけないのよ。
だから
「神殿の一室に生涯住むことを許す」
なんていわれて受けるわけないでしょう。
やり過ぎたと思うから罰は受けた。
ここからは好きにさせてもらうわ。
そのために塔の中で体を動かしてたんだから。
何をポカンとしてるの。
王も神官長もしっかりしてほしいわ。
これがこの国の長だなんて。
大丈夫かしら。
なぜ私が出て行かないと思ってたの。
勿体ぶって何を言い出すかと思えば。
神殿に幽閉するのがどこが温情なのよ。
罪人の証が顔にって、こんなものこうすればいいのよ。
ほら消えた。
聖女の癒しの力で、火傷が消えることぐらい分かりきったことでしょう。
私を憎む民に何をされるかわからないって。
それならそれで仕方ないでしょう。
あなたたちに何か関係あるの。
この国には聖女がいるじゃない。
王太子の隣にお腹の大きな聖女が。
まあ、深くは詮索しないわ。
あら、近衛兵に私を止めさせようなんて、乱暴ね。
残念でした。
かわいそうに。
吹き飛ばされちゃった。
でわ、ごきげんよう。
これから私自分の人生を生きる。
とりあえず、西の公爵領で砂金掘りしてみようと思う。
子供の頃からの夢だったんだ。

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