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聖女ルシーダの場合 別ルート ハンナ
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朝起きて、自分の寝台を整える。
館を清掃。
朝食はパンとスープ。
午前中は晴れていれば庭仕事。
昼食はパンと季節の野菜とたまごか豆。
午後は客人がいれば応対し、いなければ散歩。
館を清掃。
夕食はいつも館から馬車で5分ほどのハンナの実家から届けられる。
今夜は焼きたてのまだ暖かいパンと揚げたじゃがいも、野菜の煮物、甘い焼き菓子とお茶までついてきた。
夕食の入っていたカゴには、ハンナからの手紙が入っていた。
そうね、今日でちょうどあの日から三年。
あの日、私に跪いたハンナはたくさんのことを話してくれた。
私は知らなかったが、ハンナは農耕中心の田舎領主の娘だった。
農耕中心のため、一度天候不良が来ると領主の蔵すら空になる。
そんな綱渡りの領地のため、働ける年になった若者は後継を残して出稼ぎに出る。
領主令嬢のハンナも王宮で勤めていたのは結婚前の箔付ではなくがっつり給金目当てであったそうだ。
手当が余分につくことで私付きを希望したらしい。
私付きの手当だけで、5年間に農耕用の馬を3頭と羊を15頭、新しい作物の種を7種類購入してそのうちの1つが土地に合っているということで本格的に導入されたのだそうだ。
私は驚いた。
聖女となってからの私には価値があった。
だから私の周りに来る者は、私に何かを与えてもらおうとする人ばかりだった。
そして代わりが見つかれば手のひらを返す者たちだった。
ハンナは違った。
私に求めるのではなく、自分で掴み取ってきた。
たまたま私の近くにいただけだった。
それはとても好ましく思えた。
だから、5年の刑期を終えて塔を出たその足で、王や神官の待つ広間ではなくハンナの実家の領地に向かった。
この3年、空いていた古い館に住み、暮らした。
自分で庭で野菜を育て、領地領民の怪我や病を癒やし祝福を与えた。
華やかさはないが穏やかな暮らしをルシーダは満喫した。
手紙は時候の挨拶に続いてなかなか顔を出せない事が詫びられていた。
仕方あるまい。
あれから、私に遅れること2年後領地に戻ったハンナは結婚した。
自分の結婚に関わる資金は自分で貯めたのだそうだ。
相手は同じ王宮勤めの貴族の三男坊。
ハンナは実家に夫は王宮に分かれて暮らす別居婚だった。
そして今は二人目の子の出産間近だ。
ハンナはしっかりものの母になっている。
あの時ハンナは自分を利用しろと言った。
刑期を終えても事実上の幽閉が決まっていた私を逃してやると。
自分を利用して逃げろと。
その代わり、実家の領地が立ち直るまで3年間助けてほしいと、取引をもちかけたのだった。
それに感動したのだ。
ハンナの賢さ、公平さ。
今までルシーダの聖女としての行いには報酬はなかった。
誰かに与えるだけであった。
ルシーダが与えられていた贅沢や権力は、ルシーダの行いではなく聖女としての存在に与えられていた。
道を誤った原因の一つである。
ほかにも十分な教育を受けていなかったことや取り巻きの存在、娘に跪き唆し無心する親兄弟の存在があった。
ハンナは私の聖女としての行いに、きちんと対価を設定したのだ。
これなら受ける側も与える側もない。
そのときはようやく自分の刑期が終わるのを感じた。
全ての罪に気づき向き合えたのだ。
そしてこれから進む道も。
そろそろ産まれそうだということ。
3年の約束が果たされたということと、その礼が書かれていた。
最後に感謝と別れの言葉。
ハンナは本当に賢く聡い。
ハンナは気がついていた。
私が旅立つ準備をしていることを。
度重なる天候不順に疲弊しきった人と土地はこの3年で甦った。
未だ領内に借金は残っているが、連続した豊作に倉は満たされ、領民も腹は満たされている。
そして今年からは新しく織物産業が集約され利益化が図られる。
また高等教育の学舎を開かれるのでいずれは王国中から人が集まる場所となるだろう。
作物の出来だけに左右されない領地作りが始まった。
もうこの地は大丈夫。
聖女である私がいることで、繰り返し祝福することで、穏やかに過ぎた3年間をこの領地は有効に活かした。
私がこの地で求められていたことは終わろうとしている。
そう、今私は旅立ちの準備を始めている。
ここでの暮らしで、私はたくさんのことを学び、感じた。
4つで聖女と認定されて神殿で過ごしてていた頃は感じることのなかったことを知った。
己のこれまでの行いに、羞恥と申し訳なさに眠れない夜もあった。
そして私は、今までにないほどに自分が聖女であることを感じていた。
自分が聖女であるという意味を。
国の中心にいた時よりも。
聖女として生きていこうと心を定めさせてくれる時間だった。
せっかくの暖かい食事を早速いただいてから、ハンナに返信の手紙を認める。
ハンナはもうじき出産する。
それを見届けて私はここを出ていく。
館を清掃。
朝食はパンとスープ。
午前中は晴れていれば庭仕事。
昼食はパンと季節の野菜とたまごか豆。
午後は客人がいれば応対し、いなければ散歩。
館を清掃。
夕食はいつも館から馬車で5分ほどのハンナの実家から届けられる。
今夜は焼きたてのまだ暖かいパンと揚げたじゃがいも、野菜の煮物、甘い焼き菓子とお茶までついてきた。
夕食の入っていたカゴには、ハンナからの手紙が入っていた。
そうね、今日でちょうどあの日から三年。
あの日、私に跪いたハンナはたくさんのことを話してくれた。
私は知らなかったが、ハンナは農耕中心の田舎領主の娘だった。
農耕中心のため、一度天候不良が来ると領主の蔵すら空になる。
そんな綱渡りの領地のため、働ける年になった若者は後継を残して出稼ぎに出る。
領主令嬢のハンナも王宮で勤めていたのは結婚前の箔付ではなくがっつり給金目当てであったそうだ。
手当が余分につくことで私付きを希望したらしい。
私付きの手当だけで、5年間に農耕用の馬を3頭と羊を15頭、新しい作物の種を7種類購入してそのうちの1つが土地に合っているということで本格的に導入されたのだそうだ。
私は驚いた。
聖女となってからの私には価値があった。
だから私の周りに来る者は、私に何かを与えてもらおうとする人ばかりだった。
そして代わりが見つかれば手のひらを返す者たちだった。
ハンナは違った。
私に求めるのではなく、自分で掴み取ってきた。
たまたま私の近くにいただけだった。
それはとても好ましく思えた。
だから、5年の刑期を終えて塔を出たその足で、王や神官の待つ広間ではなくハンナの実家の領地に向かった。
この3年、空いていた古い館に住み、暮らした。
自分で庭で野菜を育て、領地領民の怪我や病を癒やし祝福を与えた。
華やかさはないが穏やかな暮らしをルシーダは満喫した。
手紙は時候の挨拶に続いてなかなか顔を出せない事が詫びられていた。
仕方あるまい。
あれから、私に遅れること2年後領地に戻ったハンナは結婚した。
自分の結婚に関わる資金は自分で貯めたのだそうだ。
相手は同じ王宮勤めの貴族の三男坊。
ハンナは実家に夫は王宮に分かれて暮らす別居婚だった。
そして今は二人目の子の出産間近だ。
ハンナはしっかりものの母になっている。
あの時ハンナは自分を利用しろと言った。
刑期を終えても事実上の幽閉が決まっていた私を逃してやると。
自分を利用して逃げろと。
その代わり、実家の領地が立ち直るまで3年間助けてほしいと、取引をもちかけたのだった。
それに感動したのだ。
ハンナの賢さ、公平さ。
今までルシーダの聖女としての行いには報酬はなかった。
誰かに与えるだけであった。
ルシーダが与えられていた贅沢や権力は、ルシーダの行いではなく聖女としての存在に与えられていた。
道を誤った原因の一つである。
ほかにも十分な教育を受けていなかったことや取り巻きの存在、娘に跪き唆し無心する親兄弟の存在があった。
ハンナは私の聖女としての行いに、きちんと対価を設定したのだ。
これなら受ける側も与える側もない。
そのときはようやく自分の刑期が終わるのを感じた。
全ての罪に気づき向き合えたのだ。
そしてこれから進む道も。
そろそろ産まれそうだということ。
3年の約束が果たされたということと、その礼が書かれていた。
最後に感謝と別れの言葉。
ハンナは本当に賢く聡い。
ハンナは気がついていた。
私が旅立つ準備をしていることを。
度重なる天候不順に疲弊しきった人と土地はこの3年で甦った。
未だ領内に借金は残っているが、連続した豊作に倉は満たされ、領民も腹は満たされている。
そして今年からは新しく織物産業が集約され利益化が図られる。
また高等教育の学舎を開かれるのでいずれは王国中から人が集まる場所となるだろう。
作物の出来だけに左右されない領地作りが始まった。
もうこの地は大丈夫。
聖女である私がいることで、繰り返し祝福することで、穏やかに過ぎた3年間をこの領地は有効に活かした。
私がこの地で求められていたことは終わろうとしている。
そう、今私は旅立ちの準備を始めている。
ここでの暮らしで、私はたくさんのことを学び、感じた。
4つで聖女と認定されて神殿で過ごしてていた頃は感じることのなかったことを知った。
己のこれまでの行いに、羞恥と申し訳なさに眠れない夜もあった。
そして私は、今までにないほどに自分が聖女であることを感じていた。
自分が聖女であるという意味を。
国の中心にいた時よりも。
聖女として生きていこうと心を定めさせてくれる時間だった。
せっかくの暖かい食事を早速いただいてから、ハンナに返信の手紙を認める。
ハンナはもうじき出産する。
それを見届けて私はここを出ていく。
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