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エイミーの場合
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「エイミーお前には失望したよ」
エイミーは俯いている。
ダンは左手で震えるメリンダの手を安心させるように優しく握り込んだ。
婚約者であるエイミーは公爵令嬢である。
本来なら侯爵家であるダンの方が身分は低い。
だが一昨年父が亡くなりダンは学生でありながらもう侯爵位を継いでいるので、令嬢であるエイミーと違い自分のことを自分で決断する権利を持っている。
侯爵になってから初めての大きな決断が自分の婚約破棄になるとは。
残念で仕方ない。
ダンとエイミーは幼い頃から婚約者同士として交流してきた。
それがおかしくなったのは一年ほど前からだ。
エイミーが学園の授業でメリンダと出会った。
初めはよかった。
メリンダは男爵令嬢で二人には家の格も経済的にも大きな差があった。
だが気が合った二人は、まるで姉妹のように一緒に行動してそれをダンは微笑ましく見ていた。
エイミーを通してダンもメリンダと知り合い話すようになっていった。
ところが時々、メリンダの表情が曇っていることにダンは気がついた。
気のせいですと何度もはぐらかされたのちに聞き出した内容は耳を疑うものだった。
エイミーがメリンダをいじめている。
教科書が破られる。
靴を隠される。
話しかけても無視される。
嘘の試験時間を教えられる。
廊下で足を引っ掛けられる。
髪飾りを貶される。
そんなことあるはずないと思って観察していると、確かにエイミーの言葉に棘を感じた。
それとなくエイミーに注意をするも改善されない。
そして、ダンは馬術競技の授業で、エイミーのラケットが当たり、メリンダが落馬するのを目撃してしまった。
メリンダの話は本当だったのだ。
いつの間にエイミーはそんな人間になっていたのだろうか。
学生でありながら実家を継いで忙しく登校することもエイミーに会うことも少なくなっていた。
そうして少し距離を置いているうちに、ダンの気持ちはエイミーから離れてきた。
その分メリンダの相談に乗ることが増えていった。
そして
卒業記念パーティを前にエイミーを断罪し、婚約を解消した。
それでも長年の付き合いで情もあるし、メリンダにもお願いされていたことと相手が公爵家であること密室での断罪となった。
エイミーの親である公爵夫妻も苦い顔をしてはいたが何も言わなかった。
ダンはメリンダの手を取り、卒業記念パーティーに向かう。
ダンの贈ったドレスも宝石も、メリンダによくにあっていた。
「本当によかったの」
ごめんなさいねお母さま。
そんなに心配しないでください。
私はいわゆる老け専という者である。
最低15歳以上年上でないと範囲外なのだ。
私の初恋はダン様のお父様。
ずっとおしたいしていました。
もちろん妻も家族もおられるのですから、ご迷惑をおかけるするつもりはありませんでした。
ただただお話ししたりして、娘になるのを楽しみにしていましたのに、病でお亡くなりになるなんて。
だから、もうダン様には用はないのです。
かといって貴族の婚約はそう簡単にくっついたり離れたりできないのです。
そこで考えました。
ダン様の方から婚約破棄していただこうと。
うまい具合に授業で知り合ったのが男爵令嬢のメリンダでした。
豊かでない男爵家はほとんど平民と同じ生活レベルでした。
さりげなく仲良くなって、どんどん私の生活をみせました。
ドレスや華やかなパーティー、煌めく人脈、豪華な食事。
店で屋敷で傅かれる経験。
レディとして男性に扱われる経験。
私といることで、見える世界が変わったのです。
上流の世界をどんどん経験させるとある時期から顔つきが変わりました。
上流の人間になったのです。
正確にはそう錯覚したのです。
そこからは簡単。
さりげなく卒業したら私とはお別れと匂わせたのです。
そこで自分の立ち位置を自覚したのでしょう。
そして、今の自分を維持するべく動き出しました。
すなわち、私から婚約者を奪おうとダン様に近づいたのです。
彼女の訴えるいじめは本当です。
でも、証拠はありません。
そして、破棄ではなく解消された婚約。
公爵令嬢と婚約解消して公爵令嬢の親友の男爵令嬢と寄り添う二人。
状況からまわりがどう判断するかは自明。
私の被害は最小限です。
「ええ、これでよかったのです」
さて、お父様のエスコートで私達も卒業記念パーティーに向かいましょう。
パーティーには国中の貴族や生徒の家族が来ています。
最近ちょっといいなって思っている、伯爵様もいらしているはずです。
素敵なロマンスグレーなおじさまなのです。
「お父様お願いします」
さあ行きましょう。
エイミーは俯いている。
ダンは左手で震えるメリンダの手を安心させるように優しく握り込んだ。
婚約者であるエイミーは公爵令嬢である。
本来なら侯爵家であるダンの方が身分は低い。
だが一昨年父が亡くなりダンは学生でありながらもう侯爵位を継いでいるので、令嬢であるエイミーと違い自分のことを自分で決断する権利を持っている。
侯爵になってから初めての大きな決断が自分の婚約破棄になるとは。
残念で仕方ない。
ダンとエイミーは幼い頃から婚約者同士として交流してきた。
それがおかしくなったのは一年ほど前からだ。
エイミーが学園の授業でメリンダと出会った。
初めはよかった。
メリンダは男爵令嬢で二人には家の格も経済的にも大きな差があった。
だが気が合った二人は、まるで姉妹のように一緒に行動してそれをダンは微笑ましく見ていた。
エイミーを通してダンもメリンダと知り合い話すようになっていった。
ところが時々、メリンダの表情が曇っていることにダンは気がついた。
気のせいですと何度もはぐらかされたのちに聞き出した内容は耳を疑うものだった。
エイミーがメリンダをいじめている。
教科書が破られる。
靴を隠される。
話しかけても無視される。
嘘の試験時間を教えられる。
廊下で足を引っ掛けられる。
髪飾りを貶される。
そんなことあるはずないと思って観察していると、確かにエイミーの言葉に棘を感じた。
それとなくエイミーに注意をするも改善されない。
そして、ダンは馬術競技の授業で、エイミーのラケットが当たり、メリンダが落馬するのを目撃してしまった。
メリンダの話は本当だったのだ。
いつの間にエイミーはそんな人間になっていたのだろうか。
学生でありながら実家を継いで忙しく登校することもエイミーに会うことも少なくなっていた。
そうして少し距離を置いているうちに、ダンの気持ちはエイミーから離れてきた。
その分メリンダの相談に乗ることが増えていった。
そして
卒業記念パーティを前にエイミーを断罪し、婚約を解消した。
それでも長年の付き合いで情もあるし、メリンダにもお願いされていたことと相手が公爵家であること密室での断罪となった。
エイミーの親である公爵夫妻も苦い顔をしてはいたが何も言わなかった。
ダンはメリンダの手を取り、卒業記念パーティーに向かう。
ダンの贈ったドレスも宝石も、メリンダによくにあっていた。
「本当によかったの」
ごめんなさいねお母さま。
そんなに心配しないでください。
私はいわゆる老け専という者である。
最低15歳以上年上でないと範囲外なのだ。
私の初恋はダン様のお父様。
ずっとおしたいしていました。
もちろん妻も家族もおられるのですから、ご迷惑をおかけるするつもりはありませんでした。
ただただお話ししたりして、娘になるのを楽しみにしていましたのに、病でお亡くなりになるなんて。
だから、もうダン様には用はないのです。
かといって貴族の婚約はそう簡単にくっついたり離れたりできないのです。
そこで考えました。
ダン様の方から婚約破棄していただこうと。
うまい具合に授業で知り合ったのが男爵令嬢のメリンダでした。
豊かでない男爵家はほとんど平民と同じ生活レベルでした。
さりげなく仲良くなって、どんどん私の生活をみせました。
ドレスや華やかなパーティー、煌めく人脈、豪華な食事。
店で屋敷で傅かれる経験。
レディとして男性に扱われる経験。
私といることで、見える世界が変わったのです。
上流の世界をどんどん経験させるとある時期から顔つきが変わりました。
上流の人間になったのです。
正確にはそう錯覚したのです。
そこからは簡単。
さりげなく卒業したら私とはお別れと匂わせたのです。
そこで自分の立ち位置を自覚したのでしょう。
そして、今の自分を維持するべく動き出しました。
すなわち、私から婚約者を奪おうとダン様に近づいたのです。
彼女の訴えるいじめは本当です。
でも、証拠はありません。
そして、破棄ではなく解消された婚約。
公爵令嬢と婚約解消して公爵令嬢の親友の男爵令嬢と寄り添う二人。
状況からまわりがどう判断するかは自明。
私の被害は最小限です。
「ええ、これでよかったのです」
さて、お父様のエスコートで私達も卒業記念パーティーに向かいましょう。
パーティーには国中の貴族や生徒の家族が来ています。
最近ちょっといいなって思っている、伯爵様もいらしているはずです。
素敵なロマンスグレーなおじさまなのです。
「お父様お願いします」
さあ行きましょう。
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