断罪された悪役令嬢はそれでも自分勝手に生きていきたい

たかはし はしたか

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ナディーレが王妃になったのは10の時。
結婚の早い王族としても異例の若さだった。
当時の国王と王太子が急逝。
当時3つの王子が即位することになったからだ。
当時の王妃と宰相の父とナディーレで新国王を支えるための結婚だった。
あれから35年。
子供にも恵まれ、王との仲も側妃との仲も悪くなく、希望を持てる毎日は忙しい。
ぐらりと揺れた。
どうやら第一王子が勢い余って王宮の壁を揺らしたようだ。
一瞬文官達のペンの音が止まり、すぐ再開する。
皆慣れたものだ。
執務室を埋める文官から上がってくる書類を宰相であるお父様と捌いていく。
お父様いえ宰相から赤い箱に入って渡されるのは王印のいるもの。
緑の箱は私のサインで良いもの。
文官から茶色の箱に入れて上がってくるものは確認のみ。
今日は月半ば。
午前中の執務に少しだけ、執務室付きのメイドの入れてくれたお茶を冷めないうちに飲める程度には余裕がある。
お茶を飲みながら白い箱をのぞく。
白い箱は王家に関する書類。
1番上は来年退職するベテランのメイドの退職金と17年前の壺破損弁償について。
壺は王宮の物。
メイドは王家に直接雇用された者。
退職金には勤務で知り得たことを漏らさない口止めの要素もある。
これはすこし調整が要る案件だ。
その下には側妃と第一王子のための費用の請求。
品物代としか書かれていないそれにはすでに国王のサインが入っている。
メイドの退職金のおよそ3倍。
いつになく多い。
たしか最近は訓練が激しくて装備が3日で壊れる事もあるらしい。
請求をそのまま決済済みの箱に回す。
これは必要経費だ。
いつも通り、王家が運用している相場の利益をそこに充てるよう手配だけしておく。
ダンジョン攻略が成功さえすれば、我が国は変われる。
災害がなくなり交易路も確立できる。
災害どころかダンジョン産の薬草も期待できるらしい。
そのためには第一王子には頑張ってもらいたい。
少しばかり経費がかかっても問題ない。
そのための王家だから。
書類を捌いて捌いて捌いて、いつものように午前中の執務を終えた。
明日からの視察のために今日は一日書類を裁かないといけない。
昼食を挟んで王印と私自身の王妃のサインを駆使して日が暮れるまで書類を捌き続けた。
慣れたものだが一人で王の分まで執務するのは骨が折れる。
だがそれでもダンジョン攻略の一助となるならいくらでも頑張れる。
私室に戻って夕食までのひと時。
王家の侍医から言われている体操をして過ごす。
体がほぐれて気持ちいい。
血が巡って気力が湧いてくる。
今日はもう一つ手配をしよう。
私付きのメイドに息子の第二王子を呼びに行かせる。
このところ問題になっている王太子と婚約者の関係をどうしようか。
未攻略のダンジョンを抱える我が国は、才能ある王はダンジョン攻略を行う。
ただ、才能あるものがここ数代産まれていなかったがために、災害の多い国であるという前提で国が成り立ってしまった。
前回のダンジョン攻略は95年も前のことになる。
その時は当時の国王を含めた28名の犠牲と、活性化したダンジョンや魔物による災害が頻発したという。
この国ではダンジョン攻略は公に口に出しにくいものとなってしまった。
才能はなくともダンジョン攻略を成し遂げたいと希望した王は、冒険者を側妃とした。
そして生まれた才能ある第一王子。
側妃の子が第一王子なのも、王妃の子が第二王子なのも意味あること。
この国で王妃とは王の後ろで外交や内政を補佐するものではない。
王は時に命懸けのダンジョン攻略を行うため、政治の実務は代々王妃が取り仕切ってきた。
ダンジョン攻略が行われなかった数代でそれが形骸化して、今王は側妃にうつつをぬかしているかのように思われているようである。
嘆かわしいことに貴族の大半がそんな様子である。
いや、そうあれと思ってふるまって圧力をかけているというべきだろうか。
そして王を理解しているものは王から距離を置く。
ダンジョン攻略の共となり95年前の27人のようになりたくないからだ。
リリアナは真面目で優秀。
だが、現状を十分理解しているとは言えない。
さてどうしたものか。
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