信用してほしければそれ相応の態度を取ってください

haru.

文字の大きさ
1 / 10

見知らぬ令嬢

しおりを挟む
  私、シェルト伯爵家のカタリナと婚約者のアルバート様は学園入学と同時に家同士の繋がりで結ばれた婚約者。

  ルヴェルダン侯爵家の嫡男だったアルバート様と私は学園の入学前、一年間をかけて互いの相性確認して、婚約に関する契約書を作り上げて決められた婚約だった。

  互いの両親は貴族にしては珍しい子煩悩で家庭を大切にしており、私達の意思を尊重して婚約を進めてくれた両家の親達へとても感謝していた。

  家の為に無理矢理嫁がされる令嬢もいる中で、私はとても幸せな婚約を結べたと思う。

  優しくて頼りになるアルバート様。
  お茶会の際に毎回私の驚くサプライズを用意してくれているとても優しい婚約者だと思っていた。

  きっとアルバート様となら幸せになれると、そう思っていた。









「ねぇ、あれ本当に許してもいいの?」

「……あれには訳があるそうよ」

  アルバート様の側で親密な様子を漂わせている見知らぬ令嬢を見つめながら友人のメアリーが心配そうに問いかけてきた。

  学園に入学してから数ヵ月。
  婚約者として側にいる筈のアルバート様は何故か私ではなく、遠い親戚の子供だとかいう見たこともない可愛らしい令嬢の側にいた。それも毎日ずっとだ。

  私達の婚約お披露目はもう既に済ませている為、周囲は現状を興味深く観察していた。

  婚約者を蔑ろにするアルバート様へ厳しい視線を向ける者。
  私に憐れみの視線を向ける者。
  面白がってあることないこと噂する者まで現れ出した。

  格下の婚約者を決めた侯爵子息は結婚前に愛人を決められた。とかなんとか、事実無根の事まで一人歩きし始めていた。

  その状況に不安を覚えた私は自分の気持ちを抑えて、伯爵令嬢としてアルバート様へ説明を求めた。

  だがアルバート様は訳があると言うだけでなんの説明もしてくれなかった。

「訳があって一緒に居るだけなんだ。どうか信じてほしい」

「ではその事情をお聞かせください」

「それは……ちょっと言えないんだ」

「学園内は周囲の目もあるのですよ? もう少し考えて行動して頂けませんか」

「……わかっている。だが本当に仕方がないんだ。少しでいいんだ。耐えてくれ」

  そう言ってアルバート様はルヴェルダン侯爵家でのお茶会を学園に通う間は止めにしたいと言い出し、私は侯爵家を出入り禁止にされた。

「三年、たった三年でいいんだ。どうか私との婚約の為にも我慢してくれ」

  切羽詰まった様子で頭を下げて懇願してくるアルバート様の姿に私は何も言えなくなり、とりあえずは信じてみる事にした。

  それに学園でアルバート様の側にいるユリア様にも「私の事情でご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。ですがアルバート様と私はそのような間柄ではございませんので不安に思わなくとも大丈夫です」と言われてしまい、納得するしかなかった。


  だけど本来なら事情のあるなしに関わらず、婚約者以外の女性を側に置くなんて許されないのよ?
  それでも事情があるって言うのならせめて事情を説明してほしい。それが周囲から好奇の目に晒されて、婚約者に蔑ろにされている私に対する義務じゃないの?

  それなのに三年?
  アルバート様はたった三年って言ってたけど、私にとってはなのよ? それをわかってる?

  
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...