信用してほしければそれ相応の態度を取ってください

haru.

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酷い仕打ち

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  アルバート様がユリア様を側に置くのには訳があると言われてから耐え続ける日々。

  何故か毎朝同じ馬車で登校して、お昼を一緒に食べて、帰りも同じ馬車で下校していく二人。

  どこからどう見ても仲睦まじい恋人のような行動。
  ユリア様は性別関係なしに友人を一人も作らず、常にアルバート様の側にひっついていた。

  その間婚約者の私とは挨拶一つ交わさず、二人して申し訳なさそうな視線を向けてくるから余計惨めな気持ちになった。

  三年間ユリア様の側にいて私を蔑ろにすると決めたのなら徹底的にやってほしい。中途半端な優しさや憐れみは逆に辛くなってしまう。

  そう思っていた。
  だが現実はもっと厳しかった。

  貴族達が通う学園には夜会の為のダンス授業があった。パートナーは婚約者がいる者は婚約者同士で、婚約者のいない者はパートナーを授業前に予約しておくのが暗黙の了解であった。

  私は入学前からそれを知っており、アルバート様とパートナーになる約束をしていた。貴族だからか自分がした約束は絶対に守る為、アルバート様に確認をする事なく授業に臨んだ。

「ではまずパートナー同士で集まってください」

  大きなホール開場での授業が始まり、教師の言葉と共に生徒達はそれぞれ動き出す。

  私もメアリーと別れ、アルバート様を探しに向かった。

「……え」

  生徒達の間をすり抜けて、ホールの隅にアルバート様の姿を見つけた私は信じられない光景を目にした。

「私ダンス苦手だから不安だな」

「大丈夫。俺がフォローするから安心して踊るといい」

  そこには不安そうな表情をしているユリア様の頭を優しく撫でているアルバート様の姿があった。私との約束をすっかり忘れている様子のアルバート様はすぐ側で立ち尽くしている私の姿が見えていないようだった。

「どうされましたか、シェルト嬢。婚約者が見つからないのですか?」

  ホール内でポツンと一人でいる私の姿を見た教師が心配して駆け寄ってきた。

「あ、其処にいるようですね。ルヴェルダン様、此方に貴女の婚約者が居ますよ。早くいらっしゃい」

「え、……カタリナ……あ、約束!」

「何をしているのですか。授業を始めますよ」

「あ、え……でも……」

「……アルバート様」

  此方へ来るように急かす教師。
  パートナーとなると約束していた私の姿と自分の隣で不安そうな表情で見上げてくるユリアの姿を見比べたアルバート様は申し訳なさそうな表情をして「カタリナ約束を破ってしまってすまない。だがパートナーはユリア嬢を選ばせてほしい」と言ってきた。

「あ、貴方いま何を言ったかわかっているのですか!? 婚約者ではなく、別の令嬢を選ぶというのですか!」

  生徒に礼儀作法を教える立場にある教師はあまりの常識外れの行動に目をつり上げて声を荒げた。

「そ、それは……ですが婚約者には謝罪しましたし、これは私達の問題なので先生は控えて頂けるとーー」

「まぁ! なんですって!?」

「あ、その、言葉が過ぎてしまった事は申し訳ございませんが、ですがパートナーはユリア嬢にーー」

  アルバート様と先生の言い合いが続く。
  その光景を呆然と見ていた私は、それが何処か遠い所の知らない人の出来事のように思えた。じゃないと正気でこの場には立っていられなかった。

  周囲からの好奇の視線がビシビシと突き刺さる。
  授業が終わった瞬間、学校中にこの出来事は広まるだろう。

  婚約者にパートナーを断られた令嬢として面白可笑しく噂されてしまう事だろう。

  もう遅いけど、それでもなんとかしなくちゃ。
  でも足が、体が、口が動かない。

  この状況に打ちのめされてしまった私は意識を遠くに飛ばして逃げる事しか出来なかった。

「カタリナ! 君からも言ってくれ! 君なら私が居なくても別の子息とダンスパートナーになれるよな。そうだよな」

「な、自分の婚約者になんて仕打ちをするのですか!」

「ですからカタリナも了承済みの事ですから! な、カタリナ! ……カタリナ? 」

「……シェルト嬢? 大丈夫ですか? ……シェルト嬢!」

  様子の可笑しい私の姿にようやく気がついたのか、アルバート様と教師は慌てて近寄ってきた。不安そうに伸ばしてくるアルバート様の手を本能的に避けた私は教師は向かって早退したいと告げた。

「先生、申し訳ないのですが気分が悪くなってしまいました。早退しても宜しいでしょうか」

「え、えぇ……勿論構いませんよ」

  私の身に起きた事に同情してくれているのか「家でゆっくりと休みなさい」と優しく声をかけてくれた。

「ありがとうございます。……皆様も本日は私のせいで授業を中断させてしまいまして誠に申し訳ございませんでした。本日はこれで失礼致します」

「カ、カタリナ……」

  様々な視線に耐え、ホールの中央で周囲に謝罪をした私は引き止めるアルバート様の声を意図的に無視して屋敷に帰宅した。


    
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