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~第一章~
マルヴィーア王国騎士団 第三師団長
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男達に囲まれてどう対処するか悩んでいると、見覚えのある男が私の前に現れた。
身長が私の倍あるのでは? と思うくらい大きくて体つきの良い男。黒の短髪で鋭い目付きの野性味溢れる顔つき、ワイルドというよりは野獣といった雰囲気だ。
「お怪我はありませんか? アクリーー」
「ああーー! 今はアクアって名乗ってるの、怪我はしてないから心配しなくて大丈夫!」
覗き込むように私の顔や体を見る男。
恐らく私の動きで怪我の有無を判断してるのだろう。
「ねぇ、それよりも仕事は? 何で此所にいるの?」
こんな所になど用はない筈だ。
隊服も着てないし、サボりなの?
サボりはありえないかと思いながら問い詰めた。
すると奴はあっさりと白状した。
それもとんでもない発言をーー。
「騎士団なら辞めました。私はアクア様の騎士ですので、アクア様がいないのならあの場に用はありません。」
目を見開く私にふわっと笑いかける男。
「えっ……冗談だよね? き、騎士団だよ? そんな簡単に辞められないでしょ。」
「いえ、辞めてきました。陛下からの許可も得ております。……あ、話の途中で申し訳ございません。少し野暮用が出来ました……」
そう言った男は私の背後にいた男の顔をぶん殴り、此方に怒鳴りながら走ってくる男達を睨みつけた。
「おい! お前に話があるんだよ!」
「ちょっと顔かせやーー!」
酔っぱらい男が殴られる光景を目の当たりにし、鋭い眼光に走る足を止めた男達。
「何だ、お前ら来ないのか? この方に手出しするのなら相手になるぞ。ああ゛!?」
「ヒィッ……!」
巨大な大男に凄まれて腰を抜かした男達。
いや、やり過ぎー!
もう被害者じゃなくなってる気がする。
まぁ、流石はマルヴィーア王国騎士団 第三師団長 トロイアスって所だよね。
平民の荒くれ者達をまとめた第三師団の長であり、アクリアーナの護衛騎士だった男だ。
何故国の騎士団に平民だけの師団があるのか、それも第二王女の護衛騎士になどなっているのかというと……
あれは私が10歳くらいの時だったかな、貴族達の横暴が激化していたらしく騎士団内で平民を虐げる行いが横行していた。
身分があるから対等な扱いにはならないと彼等も覚悟して騎士団に入っただろう。
だが貴族のミスの押し付けや尻拭いをさせられ処罰を受けるのはいつも平民。処罰を受ける度に階級は下がり給料も下がる。庇った貴族は感謝もしないし、報酬をくれる訳でもない。それでも危険な仕事は毎日のようにやってくる。
平民騎士の鬱憤が溜まるのは当然だった。
貴族達は甘く考えていたが、私から見たら暴動一歩寸前だった。そしてお父様もそう考えたらしい。
このまま貴族とは同じ師団で仕事させれば、とんでもない事が起きると。
貴族の平民を見下す態度や横暴は国王が叱責した所で変わりはしない。
こういった気持ちの変化や考え方は急激には変わらないのだ。
だからお父様は貴族と平民を分ける事にした。
騎士団にいる以上身分の差はあるし、これからも理不尽な事はあるだろう。
だがそれでも仕事場だけでも区別すれば多少の防波堤になるのではと考えた。
王族貴族の護衛担当する近衛騎士が所属の第一師団。
王都や周辺の問題を管轄する騎士が第二師団。
そして平民騎士だけで作られた第三師団。
主に冒険者だけでは被害が抑えられていない地区の魔獣の討伐に向かったり、第二師団から回された仕事をこなしたりする。言うなれば便利屋だ。
平民だったトロイアスは18歳にして平民騎士……いや騎士団最強の力を持つ騎士だった為、若くして第三師団長に任命された。
その頃私はまだまだダメ王女で貴族達からかなり嫌われていた。
お父様が選別して付けてくれた護衛騎士は、国王陛下の前では忠誠を誓う癖に私を影で蔑む嫌な奴だった。
自分が王族として劣っているのが悪いと耐えに耐えた。
だがある時、前日した魔力量を増やす特訓の疲れが抜けずフラフラしながら歩いていた。
その態度が貴族として許せなかったのだろう。
「王族がみっともない姿を晒すな!」
背中を蹴り飛ばしながら怒鳴られた。
運の悪い事に其処は王城の庭先でお姉様が御自身の部屋からバッチリと見ていらっしゃった。
そして話がお父様達へと流れ、その騎士は処罰されて消えていった。
出来損ないの王女のせいで、騎士が処罰された。
貴族達からの心証はかなり悪かったし、恨みも買ったと思う。それに私の護衛に付きたがる者はもう居なかった。
王族に仕えられるとはいえ、出来損ないのダメ王女になんか関わりたくないらしい。
それにお父様達も護衛だけは信頼できる者がいいと仰られて第三師団から選別する事になった。
私を嫌う貴族より平民の方が信頼できるとお父様は仰った。平民なら派閥もないし、それに貴族に反発のある彼等なら手先になる心配もなかった。
そして最低限の人選が終わった後、毎日顔を合わせるだろうから後は自分で選びなさいと言われ直感で選んだ。
それがトロイアスと他三名。計四名が私の護衛騎士となった。
平民で荒っぽかった彼等が護衛となり、私の噂はまたも一つ増えた。
ーー凡人王女が野蛮な平民を王城に連れ込んだ。
噂事態はどうでも良かった。
今更一つ、二つ増えた所で困った状況は変わらないから。
だけど貴族騎士が側から離れたのは私の気持ち的にはホッとした。
一日中嫌みを言われるのは嫌だし。殴られたり蹴られたりもごめんだ。
それに引き換え、トロイアス達は私を特別敬いはしなかったが蔑みもしなかった。
貴族達が見たらギョッとするだろうが、近所の子供に接するように私を扱ってくれた。
私を嬢ちゃんと呼び、くすねてきたお菓子を食べさせてくれた。
影で私の悪口言っていた侍女を悪戯で懲らしめてくれたり、食べ物に妙な物を入れる料理人達を咎めてくれた。
彼等のお陰で楽しいと思える瞬間が増えた。
そして私を一番過保護に守ろうとしてくれたのが、トロイアスだ。
最初は小娘の護衛にされたのが不満なのか、必要以外は全く喋ってくれなかった。それなのにある時突然、人が変わったように過保護になった。
本来交代制で私の護衛と第三師団の職務をこなしていた筈がいつからか私の側から離れなくなった。
何度も隊長の職務を優先しろと言ったけど、緊急事態以外なら副隊長に任せてるから問題ないと言われた。
第三師団の職務を放棄しているように見えた不真面目な隊長。本来なら部下からの不満や騎士団内で問題になりそうだが、そこはやっぱり力が全てらしく7年経った今も騎士団最強の座を守り続けていた為、第三師団の隊長を勤めていた。……筈だった。
部下からもかなり尊敬されてるって話だったけど辞めて本当に大丈夫なの?
ずっと側から離れなかった癖に、突然遠征に行くって言い出したり……何なの? 一体……。
最近、不審な行動ばかりしていたトロイアスを眺めていると地面に座り込んで後退りしている相手に「おい、うちのアクア様になんの用だ? 何処のもんだ、お前ら……やんのかぁ!?」とやーさん顔負けの脅し文句で問い詰めている姿があった。
や、やめてーー! その人達もう降伏してるから!
凄い目立ってるよ! 怪しい奴等だって注目浴びちゃってるよ! どうすんのこれーー!
身長が私の倍あるのでは? と思うくらい大きくて体つきの良い男。黒の短髪で鋭い目付きの野性味溢れる顔つき、ワイルドというよりは野獣といった雰囲気だ。
「お怪我はありませんか? アクリーー」
「ああーー! 今はアクアって名乗ってるの、怪我はしてないから心配しなくて大丈夫!」
覗き込むように私の顔や体を見る男。
恐らく私の動きで怪我の有無を判断してるのだろう。
「ねぇ、それよりも仕事は? 何で此所にいるの?」
こんな所になど用はない筈だ。
隊服も着てないし、サボりなの?
サボりはありえないかと思いながら問い詰めた。
すると奴はあっさりと白状した。
それもとんでもない発言をーー。
「騎士団なら辞めました。私はアクア様の騎士ですので、アクア様がいないのならあの場に用はありません。」
目を見開く私にふわっと笑いかける男。
「えっ……冗談だよね? き、騎士団だよ? そんな簡単に辞められないでしょ。」
「いえ、辞めてきました。陛下からの許可も得ております。……あ、話の途中で申し訳ございません。少し野暮用が出来ました……」
そう言った男は私の背後にいた男の顔をぶん殴り、此方に怒鳴りながら走ってくる男達を睨みつけた。
「おい! お前に話があるんだよ!」
「ちょっと顔かせやーー!」
酔っぱらい男が殴られる光景を目の当たりにし、鋭い眼光に走る足を止めた男達。
「何だ、お前ら来ないのか? この方に手出しするのなら相手になるぞ。ああ゛!?」
「ヒィッ……!」
巨大な大男に凄まれて腰を抜かした男達。
いや、やり過ぎー!
もう被害者じゃなくなってる気がする。
まぁ、流石はマルヴィーア王国騎士団 第三師団長 トロイアスって所だよね。
平民の荒くれ者達をまとめた第三師団の長であり、アクリアーナの護衛騎士だった男だ。
何故国の騎士団に平民だけの師団があるのか、それも第二王女の護衛騎士になどなっているのかというと……
あれは私が10歳くらいの時だったかな、貴族達の横暴が激化していたらしく騎士団内で平民を虐げる行いが横行していた。
身分があるから対等な扱いにはならないと彼等も覚悟して騎士団に入っただろう。
だが貴族のミスの押し付けや尻拭いをさせられ処罰を受けるのはいつも平民。処罰を受ける度に階級は下がり給料も下がる。庇った貴族は感謝もしないし、報酬をくれる訳でもない。それでも危険な仕事は毎日のようにやってくる。
平民騎士の鬱憤が溜まるのは当然だった。
貴族達は甘く考えていたが、私から見たら暴動一歩寸前だった。そしてお父様もそう考えたらしい。
このまま貴族とは同じ師団で仕事させれば、とんでもない事が起きると。
貴族の平民を見下す態度や横暴は国王が叱責した所で変わりはしない。
こういった気持ちの変化や考え方は急激には変わらないのだ。
だからお父様は貴族と平民を分ける事にした。
騎士団にいる以上身分の差はあるし、これからも理不尽な事はあるだろう。
だがそれでも仕事場だけでも区別すれば多少の防波堤になるのではと考えた。
王族貴族の護衛担当する近衛騎士が所属の第一師団。
王都や周辺の問題を管轄する騎士が第二師団。
そして平民騎士だけで作られた第三師団。
主に冒険者だけでは被害が抑えられていない地区の魔獣の討伐に向かったり、第二師団から回された仕事をこなしたりする。言うなれば便利屋だ。
平民だったトロイアスは18歳にして平民騎士……いや騎士団最強の力を持つ騎士だった為、若くして第三師団長に任命された。
その頃私はまだまだダメ王女で貴族達からかなり嫌われていた。
お父様が選別して付けてくれた護衛騎士は、国王陛下の前では忠誠を誓う癖に私を影で蔑む嫌な奴だった。
自分が王族として劣っているのが悪いと耐えに耐えた。
だがある時、前日した魔力量を増やす特訓の疲れが抜けずフラフラしながら歩いていた。
その態度が貴族として許せなかったのだろう。
「王族がみっともない姿を晒すな!」
背中を蹴り飛ばしながら怒鳴られた。
運の悪い事に其処は王城の庭先でお姉様が御自身の部屋からバッチリと見ていらっしゃった。
そして話がお父様達へと流れ、その騎士は処罰されて消えていった。
出来損ないの王女のせいで、騎士が処罰された。
貴族達からの心証はかなり悪かったし、恨みも買ったと思う。それに私の護衛に付きたがる者はもう居なかった。
王族に仕えられるとはいえ、出来損ないのダメ王女になんか関わりたくないらしい。
それにお父様達も護衛だけは信頼できる者がいいと仰られて第三師団から選別する事になった。
私を嫌う貴族より平民の方が信頼できるとお父様は仰った。平民なら派閥もないし、それに貴族に反発のある彼等なら手先になる心配もなかった。
そして最低限の人選が終わった後、毎日顔を合わせるだろうから後は自分で選びなさいと言われ直感で選んだ。
それがトロイアスと他三名。計四名が私の護衛騎士となった。
平民で荒っぽかった彼等が護衛となり、私の噂はまたも一つ増えた。
ーー凡人王女が野蛮な平民を王城に連れ込んだ。
噂事態はどうでも良かった。
今更一つ、二つ増えた所で困った状況は変わらないから。
だけど貴族騎士が側から離れたのは私の気持ち的にはホッとした。
一日中嫌みを言われるのは嫌だし。殴られたり蹴られたりもごめんだ。
それに引き換え、トロイアス達は私を特別敬いはしなかったが蔑みもしなかった。
貴族達が見たらギョッとするだろうが、近所の子供に接するように私を扱ってくれた。
私を嬢ちゃんと呼び、くすねてきたお菓子を食べさせてくれた。
影で私の悪口言っていた侍女を悪戯で懲らしめてくれたり、食べ物に妙な物を入れる料理人達を咎めてくれた。
彼等のお陰で楽しいと思える瞬間が増えた。
そして私を一番過保護に守ろうとしてくれたのが、トロイアスだ。
最初は小娘の護衛にされたのが不満なのか、必要以外は全く喋ってくれなかった。それなのにある時突然、人が変わったように過保護になった。
本来交代制で私の護衛と第三師団の職務をこなしていた筈がいつからか私の側から離れなくなった。
何度も隊長の職務を優先しろと言ったけど、緊急事態以外なら副隊長に任せてるから問題ないと言われた。
第三師団の職務を放棄しているように見えた不真面目な隊長。本来なら部下からの不満や騎士団内で問題になりそうだが、そこはやっぱり力が全てらしく7年経った今も騎士団最強の座を守り続けていた為、第三師団の隊長を勤めていた。……筈だった。
部下からもかなり尊敬されてるって話だったけど辞めて本当に大丈夫なの?
ずっと側から離れなかった癖に、突然遠征に行くって言い出したり……何なの? 一体……。
最近、不審な行動ばかりしていたトロイアスを眺めていると地面に座り込んで後退りしている相手に「おい、うちのアクア様になんの用だ? 何処のもんだ、お前ら……やんのかぁ!?」とやーさん顔負けの脅し文句で問い詰めている姿があった。
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