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~第一章~
白いローブの治癒師様
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何だか色々バレて周囲は騒然としていた。
焦っていた私とは違ってトロイアスは『どうだ! アクリアーナ様は凄いだろう!』と誇らしそうな表情をしながら胸を張っていた。
いや、この状況で何でそんな気持ちになれるのよ。
「え、第二王女様が白いローブの治癒師様なのか?」
「あ、あの孤児院の隣にある神殿に行くとタダで治療してくれるっていう?」
「凄い治癒師様なのに偉ぶったりもせずに親切で優しいって評判の治癒師様なのか?」
「あれだろ! 死にかけていた冒険者も助けたっていう奇跡の治癒師様!」
「しかも治癒だけじゃなくて他の魔法も凄いらしいぞ!」
「そんな凄い方が第二王女様なのか!?」
「いや、さっきの話だともう王女様じゃないんだろ?」
「はぁ? 国は一体何を考えてるんだ! こんな素晴らしい方を城から追い出すなんて……」
「確か色がどうとか言ってたよな!」
「金髪青目じゃないって事か!? たったそれだけなのか!? ありえないだろう……色なんてただの付属だろう?」
混乱や私の噂はどんどんと広がり、冒険者ギルド前には大勢の人が集まっていた。
この状況はかなりマズイ。そう思った。
ギルマスもそう思ったのか、話を止めて立ち去るように言っていたが大勢の群衆の前では声が通らずに立ち尽くしていた。
「……アクア様、如何なされますか。」
答えなんてわかってる筈なのにあえて問いかけてくるちょっと意地悪なトロイアスに私は命じた。
「…………この場を収めます。民を静かにさせなさい。」
「承知致しました。」
少し気まずい思いをしながら頭を下げるトロイアスの姿を見た。
はぁ……もう王女じゃないのに何やってるんだろう。
トロイアスだって騎士じゃないのに、私の命令に従ったりしてどういうつもりなのよ。
まぁ、でもこの事態は私の失態だもの。
自分で収めなきゃ。……妙な噂が流れたらそれこそ民やお父様達に迷惑がかかる。
トロイアスは騒ぐ街の人達の前に立ち、剣の鞘に入れたまま地面へと叩きつけた。
地面が響くような音を数回鳴らした。
「静かにせよ。アクア様が話される。」
大きな声ではなかったが体に響くような低い声が周囲に響き渡り、騒然としていた音は静まり返った。
「お待たせ致しました。」
満足したのか、トロイアスは私へ向き直り頭を下げながら後ろに控えた。
周囲の注目が私に集まっている。
私が何を話すのか、興味を持った目で見つめてくる。
王女時代は家族の後ろに隠れてばかりで民の前で話した事なんてなかったのに……。
顔も名前もうっすらとしか覚えてもらえない、そんな王女だったのにな。
「街中で騒がしくしてごめんなさい。私は先日までこの国の第二王女だったアクリアーナです。今は訳あって王女の地位を辞してこの街で暮らしています。アクアと名乗っておりますので、どうぞお見知りおきを。……皆さん、知りたい事が沢山あるかと思います。中途半端に聞かされて困惑されていますよね。ですがどうか、王家からの知らせを聞くまでこの話は皆さんの胸に留めておいて下さいませんか? 私が王族で無くなったのは誰のせいでもないのです。私は今の暮らしに不満はありませんし、自由に行動がとれる事にも満足しています。……ですからどうか今の話に惑わされず、これからの私を見てはくれませんか? 王族としてではなく、一人の人間として生きる私を……。」
情けない話だけど、私はあの子みたいに人を魅了する力もカリスマ性もない。
王族でなくなった今、彼等に命令する権利もないから私に出来る事は彼等の善意を信じて頼む事だけだ。
誰も反応を示さないまま沈黙が続いた。
かつてない程心臓がバクバクと動いており、緊張を止められなかった。
やっぱり偽物じゃ民の心は動かせなかったか……と諦めかけていると、孤児院の女の子が叫んだ。
「アクリアーナ様でもアクア様でも私はいいよー!」
ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべながら「どっちも同じだもん! アクア様が王女様じゃなくなったって関係ないよ! 優しくて温かくて頼りになる私の大好きな人だもん!」と言ってくれた。
その女の子の発言を皮切りに子供達や冒険者、街行く人達が私の存在を認めてくれた。
「そうだよ! アクア様が王女様でも平民でも関係ないよ! 」
「ああ! どんなアクア様だって俺達の大切な人だ!」
「ま、まぁ……王女様が治癒師様だってのには驚いたが、治癒師様には世話になったからな。」
「王族や貴族達の決めた事を俺達がとやかく言った所で何にもならねぇよ。……しかもガキ共がこんなに慕ってるんだから悪い奴ではないな。」
「それに王女様の言う通り、下手な噂話なんてしないで王家からの話を待つべきよね。……不敬だー。とかって罰せられても嫌だもの。」
「忠告してくれるなんて優しい王女様ねー。」
「あんな素敵な方なら私も今度治療してもらおうかしら? 腰が痛いのよねー。」
好意的な意見に思わず頬を緩ませて微笑んだ。
「俺的にはあの栗色の髪可愛いと思うけどなー。顔も貴族は知らんが平民の中じゃ、すんげぇ美人だと思うし!」
「それな! 俺も思うわ! 平民になったなら俺等にもワンチャンあんのかな?」
「うはぁー夢あんな、それ!」
「今度飯でも誘ってみるかなー?」
「あ、下街デートなんてした事ないんじゃねぇー?」
「……ちょっといいか。」
そんな中でちょっと問題のある言動をした者達をトロイアスは騒ぎにならないように、こっそりと隅に連れて行き優しくおはなしをした。
焦っていた私とは違ってトロイアスは『どうだ! アクリアーナ様は凄いだろう!』と誇らしそうな表情をしながら胸を張っていた。
いや、この状況で何でそんな気持ちになれるのよ。
「え、第二王女様が白いローブの治癒師様なのか?」
「あ、あの孤児院の隣にある神殿に行くとタダで治療してくれるっていう?」
「凄い治癒師様なのに偉ぶったりもせずに親切で優しいって評判の治癒師様なのか?」
「あれだろ! 死にかけていた冒険者も助けたっていう奇跡の治癒師様!」
「しかも治癒だけじゃなくて他の魔法も凄いらしいぞ!」
「そんな凄い方が第二王女様なのか!?」
「いや、さっきの話だともう王女様じゃないんだろ?」
「はぁ? 国は一体何を考えてるんだ! こんな素晴らしい方を城から追い出すなんて……」
「確か色がどうとか言ってたよな!」
「金髪青目じゃないって事か!? たったそれだけなのか!? ありえないだろう……色なんてただの付属だろう?」
混乱や私の噂はどんどんと広がり、冒険者ギルド前には大勢の人が集まっていた。
この状況はかなりマズイ。そう思った。
ギルマスもそう思ったのか、話を止めて立ち去るように言っていたが大勢の群衆の前では声が通らずに立ち尽くしていた。
「……アクア様、如何なされますか。」
答えなんてわかってる筈なのにあえて問いかけてくるちょっと意地悪なトロイアスに私は命じた。
「…………この場を収めます。民を静かにさせなさい。」
「承知致しました。」
少し気まずい思いをしながら頭を下げるトロイアスの姿を見た。
はぁ……もう王女じゃないのに何やってるんだろう。
トロイアスだって騎士じゃないのに、私の命令に従ったりしてどういうつもりなのよ。
まぁ、でもこの事態は私の失態だもの。
自分で収めなきゃ。……妙な噂が流れたらそれこそ民やお父様達に迷惑がかかる。
トロイアスは騒ぐ街の人達の前に立ち、剣の鞘に入れたまま地面へと叩きつけた。
地面が響くような音を数回鳴らした。
「静かにせよ。アクア様が話される。」
大きな声ではなかったが体に響くような低い声が周囲に響き渡り、騒然としていた音は静まり返った。
「お待たせ致しました。」
満足したのか、トロイアスは私へ向き直り頭を下げながら後ろに控えた。
周囲の注目が私に集まっている。
私が何を話すのか、興味を持った目で見つめてくる。
王女時代は家族の後ろに隠れてばかりで民の前で話した事なんてなかったのに……。
顔も名前もうっすらとしか覚えてもらえない、そんな王女だったのにな。
「街中で騒がしくしてごめんなさい。私は先日までこの国の第二王女だったアクリアーナです。今は訳あって王女の地位を辞してこの街で暮らしています。アクアと名乗っておりますので、どうぞお見知りおきを。……皆さん、知りたい事が沢山あるかと思います。中途半端に聞かされて困惑されていますよね。ですがどうか、王家からの知らせを聞くまでこの話は皆さんの胸に留めておいて下さいませんか? 私が王族で無くなったのは誰のせいでもないのです。私は今の暮らしに不満はありませんし、自由に行動がとれる事にも満足しています。……ですからどうか今の話に惑わされず、これからの私を見てはくれませんか? 王族としてではなく、一人の人間として生きる私を……。」
情けない話だけど、私はあの子みたいに人を魅了する力もカリスマ性もない。
王族でなくなった今、彼等に命令する権利もないから私に出来る事は彼等の善意を信じて頼む事だけだ。
誰も反応を示さないまま沈黙が続いた。
かつてない程心臓がバクバクと動いており、緊張を止められなかった。
やっぱり偽物じゃ民の心は動かせなかったか……と諦めかけていると、孤児院の女の子が叫んだ。
「アクリアーナ様でもアクア様でも私はいいよー!」
ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべながら「どっちも同じだもん! アクア様が王女様じゃなくなったって関係ないよ! 優しくて温かくて頼りになる私の大好きな人だもん!」と言ってくれた。
その女の子の発言を皮切りに子供達や冒険者、街行く人達が私の存在を認めてくれた。
「そうだよ! アクア様が王女様でも平民でも関係ないよ! 」
「ああ! どんなアクア様だって俺達の大切な人だ!」
「ま、まぁ……王女様が治癒師様だってのには驚いたが、治癒師様には世話になったからな。」
「王族や貴族達の決めた事を俺達がとやかく言った所で何にもならねぇよ。……しかもガキ共がこんなに慕ってるんだから悪い奴ではないな。」
「それに王女様の言う通り、下手な噂話なんてしないで王家からの話を待つべきよね。……不敬だー。とかって罰せられても嫌だもの。」
「忠告してくれるなんて優しい王女様ねー。」
「あんな素敵な方なら私も今度治療してもらおうかしら? 腰が痛いのよねー。」
好意的な意見に思わず頬を緩ませて微笑んだ。
「俺的にはあの栗色の髪可愛いと思うけどなー。顔も貴族は知らんが平民の中じゃ、すんげぇ美人だと思うし!」
「それな! 俺も思うわ! 平民になったなら俺等にもワンチャンあんのかな?」
「うはぁー夢あんな、それ!」
「今度飯でも誘ってみるかなー?」
「あ、下街デートなんてした事ないんじゃねぇー?」
「……ちょっといいか。」
そんな中でちょっと問題のある言動をした者達をトロイアスは騒ぎにならないように、こっそりと隅に連れて行き優しくおはなしをした。
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