妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.

文字の大きさ
12 / 34
~第一章~

白いローブの治癒師様

しおりを挟む
  何だか色々バレて周囲は騒然としていた。

  焦っていた私とは違ってトロイアスは『どうだ!  アクリアーナ様は凄いだろう!』と誇らしそうな表情をしながら胸を張っていた。

  いや、この状況で何でそんな気持ちになれるのよ。 

「え、第二王女様が白いローブの治癒師様なのか?」

「あ、あの孤児院の隣にある神殿に行くとタダで治療してくれるっていう?」

「凄い治癒師様なのに偉ぶったりもせずに親切で優しいって評判の治癒師様なのか?」

「あれだろ!   死にかけていた冒険者も助けたっていう奇跡の治癒師様!」

「しかも治癒だけじゃなくて他の魔法も凄いらしいぞ!」

「そんな凄い方が第二王女様なのか!?」

「いや、さっきの話だともう王女様じゃないんだろ?」

「はぁ?  国は一体何を考えてるんだ!  こんな素晴らしい方を城から追い出すなんて……」

「確か色がどうとか言ってたよな!」

「金髪青目じゃないって事か!?  たったそれだけなのか!?  ありえないだろう……色なんてただの付属だろう?」

  混乱や私の噂はどんどんと広がり、冒険者ギルド前には大勢の人が集まっていた。
  
  この状況はかなりマズイ。そう思った。
  ギルマスもそう思ったのか、話を止めて立ち去るように言っていたが大勢の群衆の前では声が通らずに立ち尽くしていた。

「……アクア様、如何なされますか。」

  答えなんてわかってる筈なのにあえて問いかけてくるちょっと意地悪なトロイアスに私は命じた。

「…………この場を収めます。民を静かにさせなさい。」

「承知致しました。」

  少し気まずい思いをしながら頭を下げるトロイアスの姿を見た。

  はぁ……もう王女じゃないのに何やってるんだろう。
  トロイアスだって騎士じゃないのに、私の命令に従ったりしてどういうつもりなのよ。

  まぁ、でもこの事態は私の失態だもの。
  自分で収めなきゃ。……妙な噂が流れたらそれこそ民やお父様達に迷惑がかかる。

  トロイアスは騒ぐ街の人達の前に立ち、剣の鞘に入れたまま地面へと叩きつけた。
  地面が響くような音を数回鳴らした。

「静かにせよ。アクア様が話される。」

  大きな声ではなかったが体に響くような低い声が周囲に響き渡り、騒然としていた音は静まり返った。

「お待たせ致しました。」

  満足したのか、トロイアスは私へ向き直り頭を下げながら後ろに控えた。
  
  周囲の注目が私に集まっている。
  私が何を話すのか、興味を持った目で見つめてくる。

  王女時代は家族の後ろに隠れてばかりで民の前で話した事なんてなかったのに……。
  顔も名前もうっすらとしか覚えてもらえない、そんな王女だったのにな。

「街中で騒がしくしてごめんなさい。私は先日までこの国の第二王女だったアクリアーナです。今は訳あって王女の地位を辞してこの街で暮らしています。アクアと名乗っておりますので、どうぞお見知りおきを。……皆さん、知りたい事が沢山あるかと思います。中途半端に聞かされて困惑されていますよね。ですがどうか、王家からの知らせを聞くまでこの話は皆さんの胸に留めておいて下さいませんか?  私が王族で無くなったのは誰のせいでもないのです。私は今の暮らしに不満はありませんし、自由に行動がとれる事にも満足しています。……ですからどうか今の話に惑わされず、これからの私を見てはくれませんか?  王族としてではなく、一人の人間として生きる私を……。」

  情けない話だけど、私はあの子サマンサみたいに人を魅了する力もカリスマ性もない。
  王族でなくなった今、彼等に命令する権利もないから私に出来る事は彼等の善意を信じて頼む事だけだ。

  誰も反応を示さないまま沈黙が続いた。
  かつてない程心臓がバクバクと動いており、緊張を止められなかった。

  やっぱり偽物じゃ民の心は動かせなかったか……と諦めかけていると、孤児院の女の子が叫んだ。

「アクリアーナ様でもアクア様でも私はいいよー!」

  ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべながら「どっちも同じだもん!  アクア様が王女様じゃなくなったって関係ないよ!  優しくて温かくて頼りになる私の大好きな人だもん!」と言ってくれた。

  その女の子の発言を皮切りに子供達や冒険者、街行く人達が私の存在を認めてくれた。

「そうだよ!  アクア様が王女様でも平民でも関係ないよ!  」

「ああ!  どんなアクア様だって俺達の大切な人だ!」

「ま、まぁ……王女様が治癒師様だってのには驚いたが、治癒師様には世話になったからな。」

「王族や貴族達の決めた事を俺達がとやかく言った所で何にもならねぇよ。……しかもガキ共がこんなに慕ってるんだから悪い奴ではないな。」

「それに王女様の言う通り、下手な噂話なんてしないで王家からの話を待つべきよね。……不敬だー。とかって罰せられても嫌だもの。」

「忠告してくれるなんて優しい王女様ねー。」

「あんな素敵な方なら私も今度治療してもらおうかしら?  腰が痛いのよねー。」

  好意的な意見に思わず頬を緩ませて微笑んだ。

「俺的にはあの栗色の髪可愛いと思うけどなー。顔も貴族は知らんが平民の中じゃ、すんげぇ美人だと思うし!」

「それな!  俺も思うわ!  平民になったなら俺等にもワンチャンあんのかな?」

「うはぁー夢あんな、それ!」

「今度飯でも誘ってみるかなー?」

「あ、下街デートなんてした事ないんじゃねぇー?」

「……ちょっといいか。」

  そんな中でちょっと問題のある言動をした者達をトロイアスは騒ぎにならないように、こっそりと隅に連れて行き優しくをした。

  
しおりを挟む
感想 227

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...