140文字だけの小説

桜海 ゆう

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9 夏のヨルに

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  「産まれた時はさあ、始まりは無からなのに最期は、骨が残るじゃない」

    夏の夜になると、私の部屋まできて突飛な話をしだす大学生の姉。黒縁の眼鏡を人差し指でグイッとあげる。

  
   夏バテ気味でベッドに横になっている私を姉はドアを開けて仁王立ち。


   「でも、恐竜でも人間でも最期は骨として遺るでしょ?あれって、自分はこの世界に生きた証を遺していると思うの。たから、妹よ、産まれてきてくれて、ありがとう」


     姉は突然、私に感謝する。論文の煮詰まり始めた夏の夜だ。
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