8 / 12
弟の世界
しおりを挟む「ねーちゃんだ!」
弟の世界につくと、バレは10歳の弟、ギルバー・ダーツに抱きつかれて、駅で尻餅をついてしまった。
バレは75歳になっていた。
弟のギルバー・ダーツは、バレの孫くらいの年齢だが、この世界は義務を果たす意外だ。
駅のホームで待っていた弟のギルバー・ダーツは、坊主の茶色の髪と丸いキラキラしたの瞳をした少年だった。
どことなく、祖母の1人、ギルバー・マナーに似ていた。
弟の世界住人五千人、弟ギルバー・ダーツ、カナリア市在住。
バレの弟は、駅のホームで独り、バレを待っていた。
バレが、列車から出てきた瞬間、バレに飛びついてきた。思い切り腰に抱きついてきて、バレはし尻餅をついてしまう。
「何で、私がパレをだと、思ったの?」
尻餅をついたバレの腰から腕を、背中まで回したまま、弟のダーツは、まんまるな瞳で、バレを見上げた
「おれ、知ってるんだ!ねーちゃんの音!大好きだから!」
にひひっとダーツは、笑うとまた、バレのおかに顔をうずめた。
隣で、見ていたはグランドが、微笑ましく笑った。
ストレートなダーツの表現に、いつもは無表情なバレの顔がゆるむ。
弟の世界は、3つ市で分けられていて、カナリア市は、世界の真ん中の市だった。
ブランドと駅前で、別れると、ダーツは、バレの右手を小さな汗ばんだ手で握ると、ぐいぐいバレを引っ張って歩く。
姉の世界の事もあり、バレは、初めて身近な「死」と向き合い、落ち込んでいたが、ダーツの生命力の力強さに、前へ前へと進んでいく。
丸い茶色の髪は、夕日に照らされ、まんまると太陽のように、つやつやと光っていた。
カナリア市は、駅前から10分もあるけばついた。小さなブラウンのアパートの1階の3軒屋ある、真ん中の家だった。
ダーツの右隣の限界の前に、ダーツと同じ年齢くらいの金色の髪の毛の男の子が立っていた。
「いいなあ、ダーツ、姉ちゃんに会えて、俺んとこ、まだ、来ないよ」
口をどがらせて、ダーツとバレを見た。
「にひひ」
笑いながら、ダーツはバレの手をつないだまま、バレを家に入れた。
どうやら、その世界ごとに旅する人間の滞在期間が違うため、到着もバラバラで不平等らしい。
アパートは、小さい台所と1つの子供の部屋と大人用の客間に、ぎっちりベッドが置いてあった。
大人1人が歩くのがやっとの部屋だ。
バレが、荷物をおろすと後ろから、また、にひひと笑い声がした。
振り向くと、ダーツが小さな両腕を後にまわして、もじもじしている。
数秒して、小さなお腹から、大音量の、ぐう~と言う威勢の良い音がした。
バレが、宙の国で産まれた時、弟と妹の国では、兄や姉が滞在期間は、世話をする事をすでに、知っていた。
「何か、食べ物を買いに行こうか?」
バレが言うと、ダーツは飛びはねて、喜んだ。
外に出ると、相変わらず金色の男の子が立っていた。確か、知らない家族でも、自分より年下の子供の世話をしても良いはずだ。
宙の国では、1ヶ月ごとの世界の旅の義務以外は、自由な制度になっている。
「あなたも、来る?夕食を一緒に」
確か、駅前には小さなお店があり、食材が手に入る。
その子は、少し口をとがらせて、もじもじしていたが、大きくバレにうなずくと、ダーツと手をつないだ。仲が良いらしい。
ダーツの友達は、タスと言う名前だった。
「俺、しお派!」
ダーツが、暗くなってきた星空に響くようにいった。
「俺、こしょう派!」
タスも、大声で主張する。
どうやら、弟の世界では、ジャガイモが有名で茹でて味付けをするだけで、おいしいと言う。
お店は、お客は1人もいなくて、70代くらいの老女が店番だった。
この人も、番人だろうか?駅員とは違い、宙の国の番人のように、頭から足まで黒い布をかぶっている。
バレの不安をよそに、ダーツがぐいぐいとバレのワンピースを引っ張る。
1袋のじゃがいもは、1パレだ。タスの分と2つずつ買っても、1ヶ月分60パレもしない。
塩と胡椒、トマトやパンケーキ用の素を買い、百パレだった。
帰る時、小さいのに、ダーツとタスが「俺が持つ!」と荷物の取り合いになって、困ったバレは、軽い野菜の袋を1つずつ持たせた。
帰って、ダーツの家で、3人分のじゃがいもを茹でて、祖母の世界で覚えたトマトサラダをバレは作った。
ホクホクの山盛りのじゃがいもと、トマトサラダを見た、ダーツとタスは歓声を上げた。
それぞれの皿に分け、ダーツは塩をかけ、タスは胡椒をかけ、バレはそのまま食べた。
「おいしい!」
思わず、バレは声を上げた。甘みがあり、味付けをしなくても、充分だ。
「弟の世界の名物なんだぜ!」
ダーツとタスは、自慢げに、にひひと笑った。
「うめえ!」
今度は、トマトサラダにダーツとタスが歓声をあげた。
それから3週間半、バレはダーツとタスに掃除の仕方、じゃがいものゆで方、トマトサラダの作り方を教えた。
タスの兄も姉もやって来ない。ブランドが言っていた「脱落者」なのかもしれないとバレは、思った。
兄か姉が来ると信じて、希望を持っているタスに、バレは言えなかった。
ダーツとタスに五百パレを渡し、バレは弟の世界を旅立つ事にした。手元には二百パレ程しか残らなかったが、妹の世界には、働く場所もあると聞いた。
ダーツもタスも、最初は寂しそうな顔をしたが、最後は、バレの茹でたじゃがいもとトマトサラダに笑って、駅まで見送ってくれた。
小さな、小さな手のひらが、いつまでも蝶のようにひらりひらと揺れていた。
バレは、宙の国を出てから、初めて「愛おしい」と言う感情を感じた。
バレは80歳になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる