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「え……? あれ? 梨花?」
大学に来れば、やはりというか絶対に美和と大地が絡んでくる。
私は呼びかけられた声に振り向くどころか、足を止める事さえせずに歩き続ける。
「え、梨花だよね!? 凄いイメチェン!」
「梨花……?」
それでも、正面に割り込んで私の行く道を遮って話しかけてくる図々しさは、どこからくるんだろうと学びたくない尊敬が溢れ出る。
同時に、それ以上の嫌悪感も湧き出ているのだけれど。
冷たい眼差しだけを返せば、大地がボーっとこちらを見つめていた。
……いつもなら何かと上から目線で煩いし、一昨日約束を破った事に関して何か言ってきそうなものだけれどと疑問に思い大地の顔を訝し気に眺めると、少しだけ顔を赤く染めて慌て始める。
「あ、似合ってるね。凄く良いよ」
「は?」
大地の言葉に、思わず顔を顰めて声を出してしまった。
美和は不服そうに顔を歪め、肘で大地を突いている。
一体、何がしたいんだろう、このふたりは。
私は見せつけるように大きな溜息を吐き、その場から離れようと一歩を踏み出すのだけれど、すぐに諦めるふたりではなかった。
「ちょっとちょっと梨花! そういえば一昨日はどうしたのよ!? いきなり約束破るなんて!」
「そ……そうだぞ! 何度も連絡したのに……体調が悪かったのか?」
またも行く先に割り込んで、勝手に話し続けるふたり。
流石に、二対一だと突破しにくい。
「すっごい良いお店だったんだから! また大地と予定合わせて行ってきた方が良いって!」
「そうだな! 教室に行くまでの間に、次の予定でも決めようか」
ふたりの脳内は、とても都合良いものばかりで構成されているのだろうか。
そして、駒のように都合良く動かせた私も、その一部だったのだろうと今ならよく理解できる。
「別れたい。てか、別れたって言ったよね。次なんてないよ」
「納得してねぇし!」
「ちょっとそれ、いくらなんでも梨花勝手すぎない!?」
冷たく言い放つ私の言葉に、ふたりは牙を向くように表情を怒りへと染め、怒鳴りつけてきた。
自分の都合良く動かないと、こういう風になるんだなと冷めた気持ちでふたりの表情を眺める。
ずっと言いなりになり続けてきて、都合良く扱われてきたのだ。こんな二人を見るのなんて初めてだし、ある意味で滑稽にすら思えて笑えてくる。
二人の言いなりで、ずっと言う事を聞いてきた。一人になるのが怖くて。幼馴染という関係が崩れてしまうのではと怖くて。
でも……前回の人生を辿って思うのだ。
――何も怖い事なんてないと。
大学に来れば、やはりというか絶対に美和と大地が絡んでくる。
私は呼びかけられた声に振り向くどころか、足を止める事さえせずに歩き続ける。
「え、梨花だよね!? 凄いイメチェン!」
「梨花……?」
それでも、正面に割り込んで私の行く道を遮って話しかけてくる図々しさは、どこからくるんだろうと学びたくない尊敬が溢れ出る。
同時に、それ以上の嫌悪感も湧き出ているのだけれど。
冷たい眼差しだけを返せば、大地がボーっとこちらを見つめていた。
……いつもなら何かと上から目線で煩いし、一昨日約束を破った事に関して何か言ってきそうなものだけれどと疑問に思い大地の顔を訝し気に眺めると、少しだけ顔を赤く染めて慌て始める。
「あ、似合ってるね。凄く良いよ」
「は?」
大地の言葉に、思わず顔を顰めて声を出してしまった。
美和は不服そうに顔を歪め、肘で大地を突いている。
一体、何がしたいんだろう、このふたりは。
私は見せつけるように大きな溜息を吐き、その場から離れようと一歩を踏み出すのだけれど、すぐに諦めるふたりではなかった。
「ちょっとちょっと梨花! そういえば一昨日はどうしたのよ!? いきなり約束破るなんて!」
「そ……そうだぞ! 何度も連絡したのに……体調が悪かったのか?」
またも行く先に割り込んで、勝手に話し続けるふたり。
流石に、二対一だと突破しにくい。
「すっごい良いお店だったんだから! また大地と予定合わせて行ってきた方が良いって!」
「そうだな! 教室に行くまでの間に、次の予定でも決めようか」
ふたりの脳内は、とても都合良いものばかりで構成されているのだろうか。
そして、駒のように都合良く動かせた私も、その一部だったのだろうと今ならよく理解できる。
「別れたい。てか、別れたって言ったよね。次なんてないよ」
「納得してねぇし!」
「ちょっとそれ、いくらなんでも梨花勝手すぎない!?」
冷たく言い放つ私の言葉に、ふたりは牙を向くように表情を怒りへと染め、怒鳴りつけてきた。
自分の都合良く動かないと、こういう風になるんだなと冷めた気持ちでふたりの表情を眺める。
ずっと言いなりになり続けてきて、都合良く扱われてきたのだ。こんな二人を見るのなんて初めてだし、ある意味で滑稽にすら思えて笑えてくる。
二人の言いなりで、ずっと言う事を聞いてきた。一人になるのが怖くて。幼馴染という関係が崩れてしまうのではと怖くて。
でも……前回の人生を辿って思うのだ。
――何も怖い事なんてないと。
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