全て切り捨てて自分の幸せを掴みます~都合良い駒として生きるのはやめてやる~

かずきりり

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「じゃあ行こうか」

 そう言って、優しく差し伸べられる手。
 素直にその手を取って、私も穏やかに微笑む。
 それから私達はウィンドウショッピングを楽しんだ。

「これ梨花に似合いそう」

 そう言って隼人は清楚で可愛らしい感じの服を選んでくる。
 隼人の中にある私のイメージは、そういう感じなのだろうか。

「あぁいうのは?」

 全く違うものを私が選んだ時、隼人はどういった反応をするのか見たくて、ボーイッシュな恰好を指さしてみた。

「お、良いね! あぁいうのも似合いそう! 梨花は他にどんなのが好き?」

 隼人は楽しそうな顔をして私の方を見た為、驚いて目を見開いてしまった。
 私の意見を聞いてくれ、好きな物を訊ねてくれる。たったそれだけの事なのだけれど、私には縁のなかった事。

「こんな大人っぽ……いや、ちょっと肌が出過ぎかなぁ……」

 隼人が手にとったのはシンプルだけど少し飾りがある服だったのだけれど、よく見ると首元が大きく開いている。
 さすがに恥ずかしいかなと答える前に、隼人はソッと服を戻し次の服を物色し始めたのを見て、私は吹き出してしまった。

「……何……? ……梨花の肌を公衆の面前であんま晒して欲しくないだけなんだけど。駄目? もしかして着たかった……?」

 少し拗ねたような顔をして隼人が言うものだから、私は思いっきり笑ってしまった。
 照れたようにして顔を背ける隼人の姿は、とても年上とは思えず、むしろ可愛らしいと思えてしまう程だ。
 これほど頼りとなる相手に抱く感情としては違うのだろうけれど、愛らしいとさえ思えてしまう。

「私、隼人が最初に選んでくれたようなものが好きだけど、動きやすいのも欲しいかな?」
「! じゃあ、それ買おうか? 他も見る?」

 素直に自分の好みを伝えれば、嬉しそうな顔をして答えてくれる。
 嬉しい。楽しい。
 私達は、それからも色々と見て回り、三着程、服を買ってもらった。

「疲れてない? そこのカフェにでも入ろうか。飲みたいものある?」
「うん。大丈夫だよ」

 適度に疲れていないかは声をかけてくれていたけれど、服も買った事だしと、隼人は具体的な提案をしてくれて、私はそれに甘えた。
 私は好きな紅茶を頼み、香りを楽しむ。
 隼人はブラックコーヒーかと、密かに脳裏へと刻みながら。
 こんなデートは初めてで、私の中で隼人の存在は一気に大きくなった。

(……どうしよう……)

 私は、自分の心が揺れ動いているのを、しっかり自覚していた。
 気遣ってもらえて、意見までも聞いてもらえるのだ。
 誰かと一緒に居ると、しっかり自覚できたのは、もしかして初めてかもしれないのだ。
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