3 / 40
03
しおりを挟む
「あぁ、パウラ。やっと一緒に居られるんだな」
「嬉しいわホセ様。どれほど、この時を待ち望んだ事か」
朝日が差し込む国王陛下の私室。
そのベッドの上で、産まれたままの姿でシーツに包まっている二人は、甘い時間を過ごしていた。
「王妃の部屋も早くパウラ好みに変えなくてはな」
ホセは睨むような目つきで、隣接された王妃の私室へと視線を向けた。
ラウラを部屋から追い出した二人だが、王妃の部屋はラウラの好みに合わせられている。
そんな所でパウラを過ごさせたくはないと、ホセは自らの部屋へと招き入れたのだ。
「ありがとうございます。ホセ様」
「パウラが苦しまなくて良いように、ラウラの痕跡は全て消し去ろう」
ホセはパウラの額に軽くキスを落とすと、ベッドから下りて上着を羽織る。
それに倣うようにパウラもガウンを纏った。
するとそこへ、ドンドンと力に任せて扉を叩く音が響き渡った。
「ホセ! いるんでしょう!? ホセ!!」
無視をしようか。
眉間に皺を寄せて扉を見つめるホセ。
怯えたようにホセへと身を寄せるパウラは、一体何事かと小さくホセを見上げて不安そうな表情を見せる。
その愛らしさに、頬を緩めたホセはパウラの顔へ触れようとした。
「……パウラ……」
「ホセ!」
その瞬間、バタン! と大きな音を立てて扉が開いた。
そこに立っていたのは、声から分かった人物そのもので――ブランカ・フェルナンデス王太后。つまりホセの母親だ。
王太后は自分の視界へと飛び込んできた光景に理解が追い付かなかったのか、一瞬動きが止まったが、すぐに理解すると顔を真っ赤にして仲睦まじい様子の二人を睨みつけた。
「あんた……何をやっているの!!」
ブランカ王太后は怒声をあげながら二人へと近づいていく。
それをホセは面倒くさそうに眺めながらも、パウラを自分の後ろへと隠した。
「ラウラを追い出したのは本当なの!? そんな娘と何をしていたの! ……まだ喪も開けていないのに!!」
悲痛な声を絞り出すブランカ王太后は、その目を潤ませた。
この国では、喪に服す期間が一年と定められている。慎ましやかに、祝い事を裂け、故人を偲ぶのだ。
「うるさい! お前には関係ない!」
「母にお前など……!」
しかし、ホセはそんな事どうでも良いと言わんばかりに、暴力的な言葉をあげた。
国の事を、国王となった者が自ら破るとは……。
ブランカ王太后は怒りで赤く染めていた顔を、今度は真っ青に染め上げた。
「あんな奴を俺に押し付けて王妃にするなど許せるか! 俺は真に愛する人と結ばれる!」
ホセはブランカ王太后を突き飛ばした。煩いという気持ちだけでなく、長年の恨みを込めた声と力だった為、ブランカ王太后はその場に倒れ込む。
「嬉しいわホセ様。どれほど、この時を待ち望んだ事か」
朝日が差し込む国王陛下の私室。
そのベッドの上で、産まれたままの姿でシーツに包まっている二人は、甘い時間を過ごしていた。
「王妃の部屋も早くパウラ好みに変えなくてはな」
ホセは睨むような目つきで、隣接された王妃の私室へと視線を向けた。
ラウラを部屋から追い出した二人だが、王妃の部屋はラウラの好みに合わせられている。
そんな所でパウラを過ごさせたくはないと、ホセは自らの部屋へと招き入れたのだ。
「ありがとうございます。ホセ様」
「パウラが苦しまなくて良いように、ラウラの痕跡は全て消し去ろう」
ホセはパウラの額に軽くキスを落とすと、ベッドから下りて上着を羽織る。
それに倣うようにパウラもガウンを纏った。
するとそこへ、ドンドンと力に任せて扉を叩く音が響き渡った。
「ホセ! いるんでしょう!? ホセ!!」
無視をしようか。
眉間に皺を寄せて扉を見つめるホセ。
怯えたようにホセへと身を寄せるパウラは、一体何事かと小さくホセを見上げて不安そうな表情を見せる。
その愛らしさに、頬を緩めたホセはパウラの顔へ触れようとした。
「……パウラ……」
「ホセ!」
その瞬間、バタン! と大きな音を立てて扉が開いた。
そこに立っていたのは、声から分かった人物そのもので――ブランカ・フェルナンデス王太后。つまりホセの母親だ。
王太后は自分の視界へと飛び込んできた光景に理解が追い付かなかったのか、一瞬動きが止まったが、すぐに理解すると顔を真っ赤にして仲睦まじい様子の二人を睨みつけた。
「あんた……何をやっているの!!」
ブランカ王太后は怒声をあげながら二人へと近づいていく。
それをホセは面倒くさそうに眺めながらも、パウラを自分の後ろへと隠した。
「ラウラを追い出したのは本当なの!? そんな娘と何をしていたの! ……まだ喪も開けていないのに!!」
悲痛な声を絞り出すブランカ王太后は、その目を潤ませた。
この国では、喪に服す期間が一年と定められている。慎ましやかに、祝い事を裂け、故人を偲ぶのだ。
「うるさい! お前には関係ない!」
「母にお前など……!」
しかし、ホセはそんな事どうでも良いと言わんばかりに、暴力的な言葉をあげた。
国の事を、国王となった者が自ら破るとは……。
ブランカ王太后は怒りで赤く染めていた顔を、今度は真っ青に染め上げた。
「あんな奴を俺に押し付けて王妃にするなど許せるか! 俺は真に愛する人と結ばれる!」
ホセはブランカ王太后を突き飛ばした。煩いという気持ちだけでなく、長年の恨みを込めた声と力だった為、ブランカ王太后はその場に倒れ込む。
850
あなたにおすすめの小説
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~
由良
恋愛
「じゃあ、右で」
その一言で、オリヴィアは第一王子アルベルトの婚約者に決まった。
おざなりな決め方とは裏腹に、アルベルトはよき婚約者として振舞っていた。
彼女の双子の妹とベッドを共にしているのを目撃されるまでは。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる