【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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「一体どうなっているんだ」
「王妃様は一体いつになったら執務を携われるというのだ」
「指示すら出してもらえないぞ」
「国王陛下から、指示は王妃から貰えと言われているのに」
「全ての事業は王妃に任せたと言ってらっしゃる」
「ずっと体調不良だと言われているが、もはや疑いたくなるな」
「しっ! 不敬だぞ」

 パウラは王妃となってから、ずっと執務から逃げ続けていた。
 だからこそ、王城内だけでなく貴族達の間にも不信感が溢れ出てきてしまっており、噂は王城内だけに留まらなくなっていた。
 ホセは支持だけでもと言うけれど、パウラずっと体調不良だと言ってまともな指示すら出していないのだ。
 皆、ホセがラウラを一方的に廃妃とした上、パウラを強引に後釜につけたこと。そしてパウラを溺愛している事から、不敬を恐れて声高に言わないだけだ。

「王妃様。ここの予算の振り分けを……」
「……それは貴方に任せるわ」

 全く執務室へ行かないというのも外聞がある。
 仕方なくパウラは執務室へ来て仕事をするけれど、微笑みながら手元の書類を返した。
 だって、やれと言われた所で出来るわけがないのだ。パウラはそもそも頭が良くない。

「いえ、さすがに予算振り分けは私共では……」
「最終確認はするわ。……姉のショックで混乱していて考えがまとまらないの……」

 ラウラが亡くなったおかげで、こんな言い訳も出来るようになった。
 しかし周囲の人々は怪訝な顔をするだけだ。悲しみに暮れる気なのかと。自分は姉を引きずり下ろし、廃妃とした上で着の身着のまま追い出したくせにと、心の中で罵っていた。

「……お部屋に戻らせてもらうわね」

 少しだけ顔を出したから、もう良いだろうとパウラは返事を聞かず席を立つ。
 書類を持っていた人は小さく「あっ」と声を出すけれど、引き留めまではしない。所詮、引き留めた所で何が出来るんだと思っているのだが、パウラは身分のおかげだと高をくくっている。
 事業を全て任せると言われても、そんなの無理だ。一体何の事業をしているのかさえ把握していないし、する気もない。
 ただ、パウラは嘘をついただけだった。
 ラウラが行っていた事は全て自分の案で、ラウラに奪われたのだと。
 だから任せられたとしても、この先の構想はない。

「パウラ、もう少し頑張れないか?」
「ホセ様!?」

 扉を開けようとしたタイミングで、ホセが王妃の執務室へとやってきては、そんな事を言いだした。

「しかし……考えがまとまらなくて……」

 流石に国王陛下を押しのけて部屋に帰るわけにもいかず、パウラは弱々しく涙を浮かべ、上目遣いで訴える。
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