【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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「そう言っても、王妃の事業が全く進んでいないんだ。少しだけでも進めて欲しい」

 けれどホセは全く引く気がないようで、分かったとは言ってもらえず、その場からどいてもらえない。
 何とかパウラに執務を進めて欲しいようで、落ち込んだように顔を俯けたパウラは険しい表情へと変えた。
 何で! どうして!
 イライラした気持ちからパウラの身体が少し震える。

「頼む、ここが頑張り時なんだ!」

 声高に噂されていないとは言え、ホセだって国王なのだ、流石に現状の把握位はしている。
 民から信頼が厚く、真面目に執務を行っていたラウラに非なんてなかった。あるとすればパウラの発案を盗んでいた事だが、それを知るのはパウラやホセと言った少数だけだ。
 そして廃妃にした上、自分の独断でパウラを王妃にしたが、一切執務を行っておらず貴族達からの不信感も募っている。

 ――パウラの優秀さを知れば、黙らせる事が出来る!

 パウラの事を周囲に知らしめる事さえ出来れば、今の現状を打破できるとホセは考えていた。
 少し……少しだけで良い!
 発案者が取り仕切れば、きっと事業は更に発展すると。
 焦りと期待からパウラの肩を掴んで頼むと懇願するけれど、それはただパウラの機嫌を更に損ねるだけなのだが、ホセはそれに気が付かない。

「……お腹がっ」
「!」

 お腹を押さえて前のめりになるパウラを見て、ホセは焦って後ずさる。
 しかし、周囲の人達は「またか」という視線をして、二人に気が付かれないよう小さく溜息を吐いた。
 都合良く体調が悪くなるパウラに、焦るのはホセだけ。もはや周りは仮病だろうと思っていた。
 また進まないのか……。
 先行きのない書類の山を目の前に、途方に暮れるしかない。

「もういい。僕がやるよ」

 宰相がミケルを呼びに行ったのか。
 二人は王妃の執務室に入ってくると、ミケルは置かれた書類に目を通した。

「ミケル! 何を……」
「コレとコレの予算は大丈夫だけれど、こちらの予算は再度提出をするよう伝えてくれ。あと、この事業計画は練り直しを」
「畏まりました」
「あとこの治水工事なんだけど、周囲の森林に関する報告書もあげてくるように伝えて」

 ミケルはテキパキと指示を出し、その言葉を聞いた周囲の人達は書類を持って、今までの遅れを取り戻すかのように急いで執務室から飛び出していく。

「……何で……」

 その光景を見ていたホセは、呆然とし呟いた。
 何の資料も見ていないのに、ただ文官達が持ってきた書類をチラリと見ただけで、あれだけ的確な指示がどうして出せるのか。
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