12 / 40
12
しおりを挟む
「そう言っても、王妃の事業が全く進んでいないんだ。少しだけでも進めて欲しい」
けれどホセは全く引く気がないようで、分かったとは言ってもらえず、その場からどいてもらえない。
何とかパウラに執務を進めて欲しいようで、落ち込んだように顔を俯けたパウラは険しい表情へと変えた。
何で! どうして!
イライラした気持ちからパウラの身体が少し震える。
「頼む、ここが頑張り時なんだ!」
声高に噂されていないとは言え、ホセだって国王なのだ、流石に現状の把握位はしている。
民から信頼が厚く、真面目に執務を行っていたラウラに非なんてなかった。あるとすればパウラの発案を盗んでいた事だが、それを知るのはパウラやホセと言った少数だけだ。
そして廃妃にした上、自分の独断でパウラを王妃にしたが、一切執務を行っておらず貴族達からの不信感も募っている。
――パウラの優秀さを知れば、黙らせる事が出来る!
パウラの事を周囲に知らしめる事さえ出来れば、今の現状を打破できるとホセは考えていた。
少し……少しだけで良い!
発案者が取り仕切れば、きっと事業は更に発展すると。
焦りと期待からパウラの肩を掴んで頼むと懇願するけれど、それはただパウラの機嫌を更に損ねるだけなのだが、ホセはそれに気が付かない。
「……お腹がっ」
「!」
お腹を押さえて前のめりになるパウラを見て、ホセは焦って後ずさる。
しかし、周囲の人達は「またか」という視線をして、二人に気が付かれないよう小さく溜息を吐いた。
都合良く体調が悪くなるパウラに、焦るのはホセだけ。もはや周りは仮病だろうと思っていた。
また進まないのか……。
先行きのない書類の山を目の前に、途方に暮れるしかない。
「もういい。僕がやるよ」
宰相がミケルを呼びに行ったのか。
二人は王妃の執務室に入ってくると、ミケルは置かれた書類に目を通した。
「ミケル! 何を……」
「コレとコレの予算は大丈夫だけれど、こちらの予算は再度提出をするよう伝えてくれ。あと、この事業計画は練り直しを」
「畏まりました」
「あとこの治水工事なんだけど、周囲の森林に関する報告書もあげてくるように伝えて」
ミケルはテキパキと指示を出し、その言葉を聞いた周囲の人達は書類を持って、今までの遅れを取り戻すかのように急いで執務室から飛び出していく。
「……何で……」
その光景を見ていたホセは、呆然とし呟いた。
何の資料も見ていないのに、ただ文官達が持ってきた書類をチラリと見ただけで、あれだけ的確な指示がどうして出せるのか。
けれどホセは全く引く気がないようで、分かったとは言ってもらえず、その場からどいてもらえない。
何とかパウラに執務を進めて欲しいようで、落ち込んだように顔を俯けたパウラは険しい表情へと変えた。
何で! どうして!
イライラした気持ちからパウラの身体が少し震える。
「頼む、ここが頑張り時なんだ!」
声高に噂されていないとは言え、ホセだって国王なのだ、流石に現状の把握位はしている。
民から信頼が厚く、真面目に執務を行っていたラウラに非なんてなかった。あるとすればパウラの発案を盗んでいた事だが、それを知るのはパウラやホセと言った少数だけだ。
そして廃妃にした上、自分の独断でパウラを王妃にしたが、一切執務を行っておらず貴族達からの不信感も募っている。
――パウラの優秀さを知れば、黙らせる事が出来る!
パウラの事を周囲に知らしめる事さえ出来れば、今の現状を打破できるとホセは考えていた。
少し……少しだけで良い!
発案者が取り仕切れば、きっと事業は更に発展すると。
焦りと期待からパウラの肩を掴んで頼むと懇願するけれど、それはただパウラの機嫌を更に損ねるだけなのだが、ホセはそれに気が付かない。
「……お腹がっ」
「!」
お腹を押さえて前のめりになるパウラを見て、ホセは焦って後ずさる。
しかし、周囲の人達は「またか」という視線をして、二人に気が付かれないよう小さく溜息を吐いた。
都合良く体調が悪くなるパウラに、焦るのはホセだけ。もはや周りは仮病だろうと思っていた。
また進まないのか……。
先行きのない書類の山を目の前に、途方に暮れるしかない。
「もういい。僕がやるよ」
宰相がミケルを呼びに行ったのか。
二人は王妃の執務室に入ってくると、ミケルは置かれた書類に目を通した。
「ミケル! 何を……」
「コレとコレの予算は大丈夫だけれど、こちらの予算は再度提出をするよう伝えてくれ。あと、この事業計画は練り直しを」
「畏まりました」
「あとこの治水工事なんだけど、周囲の森林に関する報告書もあげてくるように伝えて」
ミケルはテキパキと指示を出し、その言葉を聞いた周囲の人達は書類を持って、今までの遅れを取り戻すかのように急いで執務室から飛び出していく。
「……何で……」
その光景を見ていたホセは、呆然とし呟いた。
何の資料も見ていないのに、ただ文官達が持ってきた書類をチラリと見ただけで、あれだけ的確な指示がどうして出せるのか。
1,098
あなたにおすすめの小説
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~
由良
恋愛
「じゃあ、右で」
その一言で、オリヴィアは第一王子アルベルトの婚約者に決まった。
おざなりな決め方とは裏腹に、アルベルトはよき婚約者として振舞っていた。
彼女の双子の妹とベッドを共にしているのを目撃されるまでは。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる