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「義姉さん」
「! ……ミケル王子殿下! ……私はまだホセ王太子殿下と婚姻を結んでいませんよ。義姉さんだなんて……」
「良いんだよ。義姉さんほど兄さんを愛している人なんて居ないし、これほど王太子妃に相応しい人も居ない……泣いても良いんだよ」
逃げるよう立ち去った先に居たのはミケルで、ラウラに優しい言葉をかける。
砕かれた心に染みわたるような優しさで、ラウラの目は涙ぐんだ。
「義姉さんの深い愛や血のにじむ努力……僕等は義姉さん以外、兄さんの伴侶として認めないから」
力強いミケルの言葉に、ラウラは少しだけ自信を取り戻して行く。
「……ありがとう」
今にも溢れそうな涙を目いっぱいに貯めながらも、優しく微笑み感謝の言葉を伝えるラウラ。
その姿は儚げで庇護欲をそそられるけれど、相手は王太子の婚約者で結婚式を控えている。
誰にも見られる事がないよう、ミケルはラウラの姿を自分の身体で隠すように移動した。
ミケルは知っている。事の全貌を。そしてエマや国王、王妃も。
「ホセ!!」
仲睦まじくしているホセとパウラの間にエマは入り込んだ。
ミケルがラウラの元へと行っているし、後は任せて大丈夫だろう。ならば自分はこちらに対処しようと。
「何だ姉上。デートの邪魔をするのか」
「デートですって? 何を言っているの、この愚か者が!」
「偽られた婚約者に価値などない」
頑なとしてラウラを拒否するホセは、パウラの肩を抱いてエマに背を向けた。
これイオ上、話す事などないという意思表示だろう。
「仮にも王太子ならば、きちんと調べなさい!」
「このペンダントが何よりの証だ!!」
暗に騙されているという言葉が気に食わなかったのか、ホセは怒鳴るように返すと、そのままパウラと立ち去った。
調べようと思えば、いくらでも調べられる。
それをせずに目を曇らせているホセにエマは落胆した。……いつからあんなに愚か者となったのだろうと。
王家の影を使わずとも、エマとパウラはきちんと全貌を調べる事が出来たのに、どれだけ伝えてもホセに響かないのだ。
「ラウラ……」
エマはラウラの事だけが心配だった。
愛している人からの完全な拒絶は、どれほど心が痛いのだろうかと。
「ホセ、目を覚まして」
エマが微かな希望を胸に抱いているのと同じで、ラウラも少しの可能性だけを追い求め、夢を見、縋りついていたのだ。
――結婚してしまえば大丈夫だと。
きっと、分かりあえる未来が待っていると。
◇◆◇
バシーーーーンッ!!
大きな平手打ちが国王の執務室に響いた。
「あんた! 何て事を……!」
「あぁあ……ラウラ! ラウラァアッ!!」
「! ……ミケル王子殿下! ……私はまだホセ王太子殿下と婚姻を結んでいませんよ。義姉さんだなんて……」
「良いんだよ。義姉さんほど兄さんを愛している人なんて居ないし、これほど王太子妃に相応しい人も居ない……泣いても良いんだよ」
逃げるよう立ち去った先に居たのはミケルで、ラウラに優しい言葉をかける。
砕かれた心に染みわたるような優しさで、ラウラの目は涙ぐんだ。
「義姉さんの深い愛や血のにじむ努力……僕等は義姉さん以外、兄さんの伴侶として認めないから」
力強いミケルの言葉に、ラウラは少しだけ自信を取り戻して行く。
「……ありがとう」
今にも溢れそうな涙を目いっぱいに貯めながらも、優しく微笑み感謝の言葉を伝えるラウラ。
その姿は儚げで庇護欲をそそられるけれど、相手は王太子の婚約者で結婚式を控えている。
誰にも見られる事がないよう、ミケルはラウラの姿を自分の身体で隠すように移動した。
ミケルは知っている。事の全貌を。そしてエマや国王、王妃も。
「ホセ!!」
仲睦まじくしているホセとパウラの間にエマは入り込んだ。
ミケルがラウラの元へと行っているし、後は任せて大丈夫だろう。ならば自分はこちらに対処しようと。
「何だ姉上。デートの邪魔をするのか」
「デートですって? 何を言っているの、この愚か者が!」
「偽られた婚約者に価値などない」
頑なとしてラウラを拒否するホセは、パウラの肩を抱いてエマに背を向けた。
これイオ上、話す事などないという意思表示だろう。
「仮にも王太子ならば、きちんと調べなさい!」
「このペンダントが何よりの証だ!!」
暗に騙されているという言葉が気に食わなかったのか、ホセは怒鳴るように返すと、そのままパウラと立ち去った。
調べようと思えば、いくらでも調べられる。
それをせずに目を曇らせているホセにエマは落胆した。……いつからあんなに愚か者となったのだろうと。
王家の影を使わずとも、エマとパウラはきちんと全貌を調べる事が出来たのに、どれだけ伝えてもホセに響かないのだ。
「ラウラ……」
エマはラウラの事だけが心配だった。
愛している人からの完全な拒絶は、どれほど心が痛いのだろうかと。
「ホセ、目を覚まして」
エマが微かな希望を胸に抱いているのと同じで、ラウラも少しの可能性だけを追い求め、夢を見、縋りついていたのだ。
――結婚してしまえば大丈夫だと。
きっと、分かりあえる未来が待っていると。
◇◆◇
バシーーーーンッ!!
大きな平手打ちが国王の執務室に響いた。
「あんた! 何て事を……!」
「あぁあ……ラウラ! ラウラァアッ!!」
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