【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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「流石に屋根裏部屋は可哀そうだと、気付いた母が言ってくれて……」
「そ……そうなんです!」

 同情を得るような、涙の潤んだ上目遣いで訴えるパウラに対し、ナバーロ侯爵夫人は慌てるように同意の声を上げた。

(おかしい)

 パウラはラウラに酷い虐めを受けていたのだ。
 部屋の交換なぞして、もしラウラが実家に帰ってそれを知ったら、どんな目にあうか想像つくだろう。
 ならば、交換なぞせずに、新たな自室を別に作れば良いだけだ。
 辻褄は合うが……ありえないのではないか?
 ほんの少しの疑惑、綻びが、ホセの心をどんどん追い詰めるように疑問の渦が思考を飲み込んでいく。

 おかしい。
 おかしい。
 おかしい。

 ――何かが、おかしい――と。





 ◇◆◇





【11歳】

「これでラウラ嬢は正式にホセの婚約者となった。これからよろしく頼む」
「嬉しいわ! 王太子妃教育、頑張りましょうね」

 色んな手続きを経て、ようやくホセ・フェルナンデス王太子とラウラ・ナバーロ侯爵令嬢の婚約が結ばれた。
 国王と王妃は満面の笑みで嬉しそうに微笑む。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「ラウラをよろしくお願いいたします」

 ラウラとナバーロ侯爵も頭を下げ、和やかな挨拶が進む。
 ホセ王太子とラウラ侯爵令嬢が正式に顔を合わせるのは王太子妃教育が終わってからとなっている為、この場にホセは居ない。
 今日は王太子妃教育を始める前の顔合わせみたいなものだ。
 だけれど、国王と王妃はこの日を待ちわびていた。ラウラが王太子の婚約者となるのを、心待ちにしていたのだから。

「ラウラ。早くホセと正式に会うためにも、厳しくいきますよ?」
「はい! よろしくお願いいたします!」

 四人がこれからの未来に希望を灯し、楽しい時間を過ごしていた頃――ホセは王城を抜け出していた。

「ったく! 決まりが何だ! 会いたいのに……やっと婚約出来たんだ!」

 拗ねているような叫びかと思いきや、歓喜に満たされた声へと変わる。
 ホセは、やっと婚約する事が出来たという喜びを胸にナバーロ侯爵家へ一人やってきたのだ。
 愛しの婚約者と会う為に。
 決まりなんて、どうでも良い。
 何がなんでも、あの子と結婚するんだ。
 それに勇敢なあの子なら、どんな事でも乗り越えてくれる。
 希望と期待、そして信頼だけを胸に抱いていた。

「お……王太子殿下!? 侯爵は今、王城に……」

 先ぶれもなく、いきなりやってきたホセに、執事達は驚き慌てる。
 正式な婚約が整い、侯爵とラウラお嬢様は今王城へと赴いた筈なのだがという疑問も頭の中に浮かんでくる。
 そして……正式なお披露目がまだ先である事も。
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