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「今更になって何なんだ! もうラウラは戻ってこないのに!!」
大粒の涙を零しながら、エマは怒りをぶつけるように叫んだ。
――お前が盲目にならなければ。
――周囲の言葉にきちんと耳を傾けていれば。
――ラウラと言葉を交わしていれば。
ずっと言われてきていた言葉だが、今はとても胸に響く。
無視をして、何も聞いてこなかった自分自身に叱咤したい程。
だけれど、ホセは嫌だった。認めたくなかった。ラウラが居ないなんて事を。
もう一度やり直したい。
ラウラ。
ラウラ!!
君は一体どこに居るんだ。
「……」
フラフラと正気を無くしたように、ホセはその場から立ち去る。その後ろ姿を、王太后とエマは怒りに満ちた目で見ていた。
「陛下!? 陛下!!」
「一体、陛下はどこへ行ったんだ……」
「執務が溜まっていく……民達の生活が立ちいかなくなる……」
王城を駆けずり回る宰相や文官達。
パウラまでも廃妃とされ、王城から追い出されてしまい、民達の間には国王に対しての不安どころか不信感ばかりが芽生えていた。
それどころか、貴族達の心も国王陛下にはなく、最悪、謀反が起こってしまう。
だからこそ、何とか執務をと行ってもらい、よりよい国へと進めていっていたのだが……陛下はいつも上の空だった。
ラウラと呟いたかと思えば発狂し、ろくに食事もとらなくなり、入浴さえ面倒くさがる。気が付けばずっとベッドの上に居てもおかしくない有様だ。
「どんどん廃人と化している……」
「宰相! 陛下が居ました!」
あまりの事に、ずっと頭を悩ませている宰相は深く溜息をついた。そこへ、文官の一人が中庭の方を指さし叫ぶ。
地面に座り込むような国王陛下。近くには庭師のような男。
宰相達は急ぎ、その場へと向かった。
「おやめください! 国王陛下!」
涙目になり慌てふためく庭師は、悲鳴に近い声で懇願している。
「ラウラ……どこだい、ラウラぁ~」
ホセは虚ろな目で、花を引き抜き、土を掘り返している。
もはやその姿は正常とは思えない。
「おやめください! 陛下!」
「止めろ! 放せ! ラウラ! どこだラウラ! ラウラー!!」
文官達が何人かでホセを抑え込むと、ホセは怒り狂う。
もはや目の前に居るのが宰相や文官達だとは理解していないのだろうと思える程だ。
「……部屋へ……」
頭痛が酷くなる。
ホセの存在そのものが、宰相にとって悩みの種でしかない。
「しかし……宰相……」
書類の山が気になるのか、文官がおずおずと言葉をかけてくるが、宰相も考えなしなわけではない。
「……ミケル様が居る。もうミケル様に頼るしかあるまい」
大粒の涙を零しながら、エマは怒りをぶつけるように叫んだ。
――お前が盲目にならなければ。
――周囲の言葉にきちんと耳を傾けていれば。
――ラウラと言葉を交わしていれば。
ずっと言われてきていた言葉だが、今はとても胸に響く。
無視をして、何も聞いてこなかった自分自身に叱咤したい程。
だけれど、ホセは嫌だった。認めたくなかった。ラウラが居ないなんて事を。
もう一度やり直したい。
ラウラ。
ラウラ!!
君は一体どこに居るんだ。
「……」
フラフラと正気を無くしたように、ホセはその場から立ち去る。その後ろ姿を、王太后とエマは怒りに満ちた目で見ていた。
「陛下!? 陛下!!」
「一体、陛下はどこへ行ったんだ……」
「執務が溜まっていく……民達の生活が立ちいかなくなる……」
王城を駆けずり回る宰相や文官達。
パウラまでも廃妃とされ、王城から追い出されてしまい、民達の間には国王に対しての不安どころか不信感ばかりが芽生えていた。
それどころか、貴族達の心も国王陛下にはなく、最悪、謀反が起こってしまう。
だからこそ、何とか執務をと行ってもらい、よりよい国へと進めていっていたのだが……陛下はいつも上の空だった。
ラウラと呟いたかと思えば発狂し、ろくに食事もとらなくなり、入浴さえ面倒くさがる。気が付けばずっとベッドの上に居てもおかしくない有様だ。
「どんどん廃人と化している……」
「宰相! 陛下が居ました!」
あまりの事に、ずっと頭を悩ませている宰相は深く溜息をついた。そこへ、文官の一人が中庭の方を指さし叫ぶ。
地面に座り込むような国王陛下。近くには庭師のような男。
宰相達は急ぎ、その場へと向かった。
「おやめください! 国王陛下!」
涙目になり慌てふためく庭師は、悲鳴に近い声で懇願している。
「ラウラ……どこだい、ラウラぁ~」
ホセは虚ろな目で、花を引き抜き、土を掘り返している。
もはやその姿は正常とは思えない。
「おやめください! 陛下!」
「止めろ! 放せ! ラウラ! どこだラウラ! ラウラー!!」
文官達が何人かでホセを抑え込むと、ホセは怒り狂う。
もはや目の前に居るのが宰相や文官達だとは理解していないのだろうと思える程だ。
「……部屋へ……」
頭痛が酷くなる。
ホセの存在そのものが、宰相にとって悩みの種でしかない。
「しかし……宰相……」
書類の山が気になるのか、文官がおずおずと言葉をかけてくるが、宰相も考えなしなわけではない。
「……ミケル様が居る。もうミケル様に頼るしかあるまい」
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