【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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 ミケルはパウラの代わりに王妃の仕事を全て完璧にこなしていた。
 そしてホセがこんな状態になり、どうしてもすぐに必要な書類の決裁をミケルに任せていたのだけれど、それすらも全てこなしているのだ。
 国王となるべきは、ミケル様だったのではないか……。
 前国王陛下が、急に崩御しなければ……。
 実力や慧眼も、ミケルの方が上回っているというのは、貴族達すべての見解だ。

「……王太后やエマ様にも頼んでみよう」

 国王と王妃の仕事をミケル様一人で回せないと言うならば、まだご健在な王太后様に公務へと戻っていただき、大変な部分はエマ様にも手伝ってもらうしかない。
 宰相はそう心に決め、ミケルの元へと向かった。
 そして、ホセは文官達に自室ではなく離宮へと追いやられた。
 これ以上、恥ずかしい姿を晒すなという意味もあるが、一番は目の前に居られる事が煩わしいからだ。
 何年もの間、迫害してきた相手を今になって欲した所で、誰の同情も買えやしないのだ。

「ラウラ……あぁ……俺は……」

 ホセは一人、離宮に取り残された事にも気が付かず、ただラウラを思っていた。
 悲し気な目をした少女はラウラで。
 幸せにすると決めた少女もラウラで。

「あってはならない……あってはならないんだ!!」

 ホセは現実を受け入れられなくなっていた。
 自分の犯した過ちを認めたくなかった。
 大切なものを、思い出を汚したくなかった。
 罪悪感に潰され、現実を否定し、もはや何が現実なのかも分からなくなりそうだ。

「……全て、あいつが悪いんだ……」

 壊れそうな心。否、もうホセの心は壊れているのかもしれない。
 自責の念に堪えられなくなったホセは、その責任を他者へと向けた。

「王家を……俺を騙したアイツが! 全てアイツのせいだ!!」

 憎しみに燃えた目。
 涙が溢れるも、その目は吊り上がり、嚙みしめた唇からは血がしたたり落ちる。
 憎い。
 ラウラと自分を引き裂いた相手が。
 ラウラとの再会を邪魔した相手が。
 ラウラとの時間を奪った相手が。
 全ての元凶が憎々しい。

 ――そう、全てパウラへの憎悪へと変わったのだった。

「憎い……憎い憎い憎い憎い!」

 声に出せば、一層思いは強くなるというもの。
 ホセは、思い立つとすぐに立ち上がり、離宮内にある剣を持ち出すと、そのまま王城から走り去った。
 向かう先はナバーロ侯爵家である。

「知っていて隠しやがって! 不敬だ! 反逆だ!」

 目は血走り、叫びながら走るホセ。
 民達はそんなホセに恐怖心を抱き、震えて道をあけ近寄らないようにしていたのだが、ホせは全く気が付いていない。否、見ているのは恨みの対象達だけだ。
 ホセを気味悪がり、民達は衛兵に通報をするけれど、ホセは知りもせず、ただ真っすぐにナバーロ侯爵邸まで駆け抜けてきた。
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