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第三章
29.真が聖女?
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これを……この屍を積み上げたのは真だというのか。
同じ平和な日本から来たというのに……。
――生きる為。
分かっている。
私は諦めてしまった。そこが違いなのだろう。
こんな私が、この世界で生きていて良いのだろうかとネガティブな思考が私を襲ったけれど、真が私の肩に手を置いた。
「仲間を守る為なら、俺は何でもする! 投降するなら今のうちだ!」
守ると思っておきながら、守られている。
何て心強い言葉だろう。
その反面、私は自分の小ささを思い知った気がして、涙が溢れてきた。
「……瑞希!」
たじろぐ敵兵達は戦意喪失しているらしく、キィ達がこちらへと向かってきて抱き合った。
体温が温かい。
心臓の鼓動を感じる。
吐く息が当たる。
生きている。
生きているんだ!
生きて……こんなに生きている事を実感できる日が来るなんて思ってもみなかった。
生きている事に感謝する日が来るなんて思いもしなかった。
そこからは戦場の処理だ。
後方支援にも近かった為、すぐに人手は確保出来た。
投降する敵には縛り上げた状態だが回復をかけ、抵抗する敵は容赦なし。
ウィルはキィの目を隠すようにしていた。既に……と思うけれど、これ以上見せる必要はないだろう。
私もデイルに抱きしめられて、その様子を眺めていた。
「マコト様!」
「ありがとうございます!」
助けられた兵達は、真に対して頭を下げ跪く。
そんな兵達に真は呆れた視線を向けた。
「……別にあんたらを助けたわけじゃないんだけどなぁ」
そう呟く真の身体が少し震えていた。
「……真っ」
震えを抑えるように、私は真の手を握り締めるけれど、真はどこか悔しそうで悲しそうな表情を浮かべる。
「……人、殺しちゃったな……」
「……真……」
平気なわけない。
キィだってそうだろう。
これからずっと、それを背負って生きなくてはいけないのだ。
「……聖女……か?」
この場に相応しくないだろう質問を投げかけてきたのは王太子だった。
周囲の兵達も騒めくが、それを受け入れているかのように、次々と跪いていく。
「その力……聖女のようだが……いや、だけど……マコトは男……だよな」
呆然としながら、王太子は言葉を続ける。
そうだ。男だ。
贈り人は女で、聖女は神力の強い者に与えられる称号だ。
確かに真の神力は私達以上だろう。その差は歴然すぎる。
ただ……男なのだ。
男だからこそ、真の扱いは私達とは違った。
「贈り人万歳!」
「マコト様万歳!」
呆然としている王太子をよそに、兵達は勝手に騒ぎ始める。
しかし、そんな事は気にもしていない真は、敵兵達の確保が済んだ穴を元に戻し……そして、倒れた。
同じ平和な日本から来たというのに……。
――生きる為。
分かっている。
私は諦めてしまった。そこが違いなのだろう。
こんな私が、この世界で生きていて良いのだろうかとネガティブな思考が私を襲ったけれど、真が私の肩に手を置いた。
「仲間を守る為なら、俺は何でもする! 投降するなら今のうちだ!」
守ると思っておきながら、守られている。
何て心強い言葉だろう。
その反面、私は自分の小ささを思い知った気がして、涙が溢れてきた。
「……瑞希!」
たじろぐ敵兵達は戦意喪失しているらしく、キィ達がこちらへと向かってきて抱き合った。
体温が温かい。
心臓の鼓動を感じる。
吐く息が当たる。
生きている。
生きているんだ!
生きて……こんなに生きている事を実感できる日が来るなんて思ってもみなかった。
生きている事に感謝する日が来るなんて思いもしなかった。
そこからは戦場の処理だ。
後方支援にも近かった為、すぐに人手は確保出来た。
投降する敵には縛り上げた状態だが回復をかけ、抵抗する敵は容赦なし。
ウィルはキィの目を隠すようにしていた。既に……と思うけれど、これ以上見せる必要はないだろう。
私もデイルに抱きしめられて、その様子を眺めていた。
「マコト様!」
「ありがとうございます!」
助けられた兵達は、真に対して頭を下げ跪く。
そんな兵達に真は呆れた視線を向けた。
「……別にあんたらを助けたわけじゃないんだけどなぁ」
そう呟く真の身体が少し震えていた。
「……真っ」
震えを抑えるように、私は真の手を握り締めるけれど、真はどこか悔しそうで悲しそうな表情を浮かべる。
「……人、殺しちゃったな……」
「……真……」
平気なわけない。
キィだってそうだろう。
これからずっと、それを背負って生きなくてはいけないのだ。
「……聖女……か?」
この場に相応しくないだろう質問を投げかけてきたのは王太子だった。
周囲の兵達も騒めくが、それを受け入れているかのように、次々と跪いていく。
「その力……聖女のようだが……いや、だけど……マコトは男……だよな」
呆然としながら、王太子は言葉を続ける。
そうだ。男だ。
贈り人は女で、聖女は神力の強い者に与えられる称号だ。
確かに真の神力は私達以上だろう。その差は歴然すぎる。
ただ……男なのだ。
男だからこそ、真の扱いは私達とは違った。
「贈り人万歳!」
「マコト様万歳!」
呆然としている王太子をよそに、兵達は勝手に騒ぎ始める。
しかし、そんな事は気にもしていない真は、敵兵達の確保が済んだ穴を元に戻し……そして、倒れた。
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