【完結】婚約破棄の代償は

かずきりり

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地下には聖なる泉とその空間があり、そこに聖獣が住んでいた。
聖獣は、自分の友と呼べる人物に近辺を統一させ、城を建てさせ、世話を含め自分がゆっくり生活できるように整えたと言われている。
その変わりに聖獣は極端な自然災害から国を守る。
つまり、小さいものは自然の摂理として放置されるが、余程となる大きな天候や災害、獣の被害などからは守られるため民たちが酷い貧困に飢えることがないのだ。
聖獣は国の象徴と言われ、何よりも聖獣の意見が優先されるのだが、そもそも人間の事に興味がない聖獣は、人間の暮らしに意見することはない。
言うとしたら、ただ一つ
ー自分の世話係の任命だけだー
多数の人間に自分の居住地を犯されたくない聖獣は、聖獣が認めた人しか近寄ることが許されない。
そして、お世話係も、自分と少しでも似た波動と心の者を探して任命するのであるーー。

ただ、それだけ。
つまり似た波動であれば良いだけで、変わりはいくらでもいるのだ。



城の地下、ゆうに3メートルほどある毛に覆われたものが目の前に広がる。

「それにしても、珍しいことをしたね、どうしたの?」

軽い口調で目の前にいる白いフワフワの壁に問う。
言わずもがな、目の前にある白いフワフワとした壁こそが、聖獣なのだ。
…威厳より可愛らしい表面が印象的である。

「気に入らんかったからなぁ」
「それだけで!?」

あまりに簡単な理由に驚いてしまった。
お世話係の任命以外で口開くことのない聖獣が、国王の退位と第一王子の廃嫡を口にしたと言うのに。

「我かてのぅ、そうコロコロとお世話係を変えたくはない。マーガレットは我と波動がとても似ていて心地いいのだ。」

そう言って、私を白い真綿…正確には毛皮だが…で包むようにする。

「子どもの責任は親と言うじゃろぉ。周りも見ることの出来んアホゥが時期国王とは…内戦が起こってしまっては我もゆっくり眠れんからのぉ」

のほほんと言う聖獣。
しかも戦争ではなく、内戦と言い切った…。いや確かに国の歴史も知らない馬鹿だったけれど。

「それにマーガレットには第二王子の方が良かろう~。愛はなくても、せめて愛された結婚をすると良いだろうに」
「え?」
「ん?」

毛皮に包まれたついでと言わんばかりに、持っていたブラシで目の前の毛をといていたら、何か不可解なことが聞こえた気がする。

「なんじゃ?気がついておらんかったのか?あれだけ第二王子に思われておきながら?」
「いやいやいや、目の前のフワフワ毛皮以外に愛せませんので。人間の男など論外です」
「…マーガレットは人間じゃろぉが」

呆れたため息が聞こえる気がするが、無視だ無視。
しかし第二王子が…というと、自由にしていて良いと言っていた以上、結婚してからもお世話係自由!むしろ毎日一日中入り浸り放題!!

「うむ。前国王はマーガレットを道具のように思い、第一王子を時期国王にするためにマーガレットと婚約させたからのぉ」

聞きたくなかった事実だが、だからこそ私を聖獣という餌で釣ったのか。
年齢的に第一王子と聞いていたが、面倒くさい後継争いなんて知ったことではない。
ていうか心で思っていることを読むんじゃない。仮にも乙女だ!恥ずかしい!

ククク…と聖獣は笑う。
笑ってる隠しきれてませんが?



そしていつでも登城しても良いという許可だった私は、毎日一日中もふもふ生活しても良いよと言われ、急げとばかりに最短で第二王子と結婚し、王妃となりました。
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