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人々は声の主を探そうとしていると、暗雲が立ち込め、それは徐々に人の顔になった。
その顔は……神、と呼ばれる者として書物に描かれている人と同じ顔。
精霊達は神の顔を模ったものの周囲に集まり、飛び交う。そんな神秘的な光景に、皆口を開く事が出来ないようだ。
思わずといった感じで神官達は跪くも、神はそれを見る事もしないどころか、その視線は私に向けられる。
「っ!?」
テオが反射的に私の前へ出て庇うよう立ちふさがってくれる……大丈夫なのに。なんて思いながら、胸が熱くなる。
こうやって大切にされたのは本当に……どれくらいぶりだろう。
どれだけ私の心は傷ついてきたのだろう……。
『戻ってこい、我が娘、女神よ……今は……リタ、か?』
バッと、その場に居た者達の視線が、一斉にこちらへ向けられ、恐る恐ると言った感じで神官達も顔を上げて私の様子を伺っている。
表情や瞳には戸惑いが見える。まさか、とでも言いたいのだろう。後ずさる者や、首を振る者も居る。
テオに至っては、一瞬ビクリと身体が揺れたが、まだ警戒するよう私を背中に隠したままだ。
「……そうね」
私の返す言葉に、テオは視線をこちらに向けて、驚いたよう目を見開かせている。
周囲は膝から崩れ落ちる者、天を仰ぎながら涙を流す者、ただただ頭を地面に擦り付ける者、そして……。
「誰が精霊の愛し子だ!」
「嘘つきやがって!」
「リタ嬢を殺すなんて事を言いやがって!」
見事な責任転嫁。詰め寄られる殿下とシャラ。
ここに居る皆が……というか、テオ以外全ての人間は、誰も止めなかったのに。
『そうだ……私の娘を供物という名の生贄にしようとは、どういう事だ!』
神の怒鳴り声に、皆威圧され怯える。
『ターナー!娘を預けた家の者が、何故間違える!』
名指しにされた父は震えあがり、周囲は睨むよう父へ視線を向けた。
義母に関しては、私は関係ないと言わんばかりに父から数歩距離を取った。
『しかも、わけのわからぬ娘が愛し子だと?ターナーの血筋がない、どこの馬の骨ともわからぬ娘に、どうしてそう思えた!』
「あ……」
「そういえば……」
そこで初めて気が付いたと言わんばかりに、周囲は呆気にとられる。
義母の連れ子。つまりターナーの血を継いではいない。
「お許し下さい!ターナー家の名前が強すぎて!」
「九死に一生を得たものですから!」
『女神様の家族だから守っただけ!』
『女神様が家族大事にするって言ったから守っただけ!』
反論する声に精霊が怒って言う。その声も聞こえたのだろう、皆は涙目になってこちらを向いたが、私はその視線に答える気すらなかった。
全ては、もう今更なのだ。
その顔は……神、と呼ばれる者として書物に描かれている人と同じ顔。
精霊達は神の顔を模ったものの周囲に集まり、飛び交う。そんな神秘的な光景に、皆口を開く事が出来ないようだ。
思わずといった感じで神官達は跪くも、神はそれを見る事もしないどころか、その視線は私に向けられる。
「っ!?」
テオが反射的に私の前へ出て庇うよう立ちふさがってくれる……大丈夫なのに。なんて思いながら、胸が熱くなる。
こうやって大切にされたのは本当に……どれくらいぶりだろう。
どれだけ私の心は傷ついてきたのだろう……。
『戻ってこい、我が娘、女神よ……今は……リタ、か?』
バッと、その場に居た者達の視線が、一斉にこちらへ向けられ、恐る恐ると言った感じで神官達も顔を上げて私の様子を伺っている。
表情や瞳には戸惑いが見える。まさか、とでも言いたいのだろう。後ずさる者や、首を振る者も居る。
テオに至っては、一瞬ビクリと身体が揺れたが、まだ警戒するよう私を背中に隠したままだ。
「……そうね」
私の返す言葉に、テオは視線をこちらに向けて、驚いたよう目を見開かせている。
周囲は膝から崩れ落ちる者、天を仰ぎながら涙を流す者、ただただ頭を地面に擦り付ける者、そして……。
「誰が精霊の愛し子だ!」
「嘘つきやがって!」
「リタ嬢を殺すなんて事を言いやがって!」
見事な責任転嫁。詰め寄られる殿下とシャラ。
ここに居る皆が……というか、テオ以外全ての人間は、誰も止めなかったのに。
『そうだ……私の娘を供物という名の生贄にしようとは、どういう事だ!』
神の怒鳴り声に、皆威圧され怯える。
『ターナー!娘を預けた家の者が、何故間違える!』
名指しにされた父は震えあがり、周囲は睨むよう父へ視線を向けた。
義母に関しては、私は関係ないと言わんばかりに父から数歩距離を取った。
『しかも、わけのわからぬ娘が愛し子だと?ターナーの血筋がない、どこの馬の骨ともわからぬ娘に、どうしてそう思えた!』
「あ……」
「そういえば……」
そこで初めて気が付いたと言わんばかりに、周囲は呆気にとられる。
義母の連れ子。つまりターナーの血を継いではいない。
「お許し下さい!ターナー家の名前が強すぎて!」
「九死に一生を得たものですから!」
『女神様の家族だから守っただけ!』
『女神様が家族大事にするって言ったから守っただけ!』
反論する声に精霊が怒って言う。その声も聞こえたのだろう、皆は涙目になってこちらを向いたが、私はその視線に答える気すらなかった。
全ては、もう今更なのだ。
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