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13.各報告書

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「領主が居ればそれで問題なさそう……」

 暗に呟かれたガルムの貴族なんて必要あるのか、という言葉に私は吹き出した。
 男爵と言っても平民あがりのガルムが言うのであれば、それは平民の声なのだ。国民あっての国だというのに、国民から必要ないとされている貴族のお粗末さ。
 国民が居らず、王族と貴族だけの国なんてないという事を理解していないのか。

「邪魔者がどくまで、こちらでお茶でもどうぞ。ガルムも」
「ありがとうございます」

 ベルが紅茶を入れてくれて、それを飲む。
 あの二人が居なくなるまで私達はここでゆっくりしていれば良いだろう。ついでにガルムから国の情勢も聞かせてもらおう。

「あいつらもサボリか」

 のんびりと会話をしようとした時、ジェンがボソリと言った言葉に、それもそうだ!と皆が吹き出した。
 王太子自ら逢瀬の為に授業をサボるという駄目な模範。きっとそれも貴族の令息令嬢達は受け入れているのかと思えば、余計にこの国と関わる気は起きなくなっていた。

 ——早く婚約破棄を突きつけて欲しい。





 王城の客間、今は私の居室でベルの入れてくれたお茶を飲みながら、ノルウェット帝国から連れて来た影の報告を読む。

「ガルムの情報は全て正確ね」

 結局、あれから二人は放課後まで逢瀬を重ねた為、私とガルムはのんびりと語り合った。ガルムはさすが商人というだけあり、各国の情勢は特産品に詳しく、それなりに知識も豊富な為に飽きる事はなく有意義な時間を過ごせた。
 そして王太子含む貴族の事も不敬にならないのであれば、と教えてくれた。

「皇女様に取り入ろうとしている……ようには見えませんでしたね」
「礼儀作法がなってないから不敬を言われる前に遠ざかりたかったようだけれど、それを咎めないとなれば別に良いという感じだったわね」

 平民上がりというのもあって少しは警戒していたが、特に害があるようには思えなかった。
 それでも信憑性を確かめる為、帝国の者達が調べた報告書にしっかり目を通してみたが、どれもガルムの言う通りだった。
 王太子殿下とミルム伯爵令嬢の度重なる逢瀬、周囲は祝福しており、真実の愛で結ばれていると言われている。その距離感も近く、婚約者が居る殿方と未婚令嬢の距離感ではなく、苦言を呈したものは周囲の者達から爪弾きにされ虐げられる。

「アメリア・ミルム伯爵令嬢……ね」

 王太子殿下の恋人とされる令嬢。特に悪い噂があるわけでもなく、男を侍らせているというわけでもない。伯爵家なのであれば王太子殿下の婚約者として家柄も問題はない。
 問題があるとするならば、王太子殿下には婚約者が居るという一点だ。しかも、王国が属している帝国皇女である。

「婚約をなくして付き合えば、まだ少しは情状酌量の余地がある事に気が付いていないのかしら」
「王国側から婚約を白紙にして欲しいなどと申し入れ出来ないと思いますが」
「それでも浮気という行為をするよりは一度申し入れを試みた方が余程賢いのではなくて?帝国自体を下に見ている貴族も多いのだし、簡単に不敬な申し入れもしそうなものなのに」

 考えても理解出来ないのは、もう人としての知能差というか物事を見る角度というか……どれだけ全体を見る事が出来ているのか。つまり、出来る私に出来ない奴の考えは分からないというもの。
 ……出来ない奴が上に立っているのも、どうかと思うけれど。これは書類だけでは分からない問題ね。
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