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 気が付けば朝日が昇っており、徹夜をしたんだなと理解した。集中しすぎていて、気が付かなかった。

「……少し休みますか」

 師匠が眩しそうにしながら、朝食の用意を始める。目の下には、おもいっきりクマが出来ているのを見て、私にもできていそうだな、なんて思う。
 少し食べて、寝たら、また調べよう。
 パンとスープという至って簡単な食事を終えれば、また書物へと向かう。どこかに呪いの詳しい文献がないか。あるいは、解呪への手がかりとなるヒントは得られないものかと。

「何をそんなに必死になっているんだ」

 ノックもなしに扉が開いたかと思えば、不躾な言葉をかけられた。
 ふんぞり返った俺様な立ち姿。翡翠色の短髪に青い瞳。顔は地味目だけれど、目つきがきついのは内面を表しているのかとさえ思える。鍛えてもいないだろう、ヒョロっとした体躯だけれど、身に着けているものは豪華で、装飾も派手だ。むしろ、重くないの?歩けるの?と心配になってしまう。
 しかし、その豪華さと態度だけで理解する。それなりに地位の高い人だと。

「……出て行ってもらえますか」

 師匠が軽蔑の眼差しを込めながら、感情を抑えた声で言い放った事に少し驚いた。そこまで感情を露わにした事など、見た事なかったからだ。

「はっ。くだらない死にかけの為に働く位なら僕の為に働く方が有意義だと、何故わからん」

 侮蔑の表情を込めて吐き捨てられた言葉に、怒りで背筋が逆立つような感覚に襲われ、身体が震える。
 失礼にも、程がある!
 怒りを含ませた瞳で、そいつに視線を向ける。
 ……それなりに地位が高い事だけは理解しているのだ。ここで不敬だ何だのと言われて研究が出来なくなるのも困るから、文句も言えないけれど……。
 本当に、人間というのは嫌になる。
 師匠は構わず睨みつけているけれど、そんな私達の様子など気が付いていないのか、意に介していないのか。そいつは更に言葉を続けた。

「王太子が死ねば、継承権二位の僕が王太子となり、次期国王となるのだ! お前も弟として、より僕に仕えればいい」

 ――王弟の第一子。反王太子派の旗印。

 発言により、こいつがリムド・ハーバー公爵令息だと気が付いた。王太子殿下の命を狙う者達が掲げる、次期国王。
 確かに地位は高い……高いけれど……それよりも私には気になった言葉があった。

「……弟……?」

 呆気にとられた表情で呟けば、ハーバー公爵令息が私の様子に気が付いた。

「……何だケイト。お前、自分の身分を言っていなかったのか?」

 罰の悪そうに視線を反らせた師匠に、私はハーバー公爵令息の言った事が真実であると悟った。
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