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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)
17: しんみり天使と帝の後悔。
しおりを挟む少しでも、お力になりたいな…。
なんて考えていたら、無意識に見詰めてしまっていたのだろう。
水面から視線を外したタンスィート様とバッチリ目が合ってしまい、途端にタンスィート様がいつもの明るい顔になる。
(うう、しまった……。感傷にくらい、存分に浸らせてあげればよかったのに、僕のバカ!)
一抹の後悔と共に、タンスィート様の側に行く。
「どしたんエンゼリヒト。しんみりした顔して。」
「しんみりはタンスィート様もでしょう?アモネイと。」
その軽い空気に乗っかって、何でもない事の様に言えば、ぷすっと溜め息とも笑いとも取れる息を洩らして、タンスィート様がせやなぁ、と首肯した。
「まぁ仇死んでも、殺された兄王子達が帰ってくる訳やないしな…。寧ろ仇を見て色々想い出してんやろ…。ま、やることはもう、後片付けみたいなもんやし、暫くはゆっくり偲んでたらええわ。」
「……タンスィート様も、偲ぶ方がいらっしゃるんですか?」
その口調に思いきって聞いてみれば、思ったより明るい苦笑いが零れる。
「……あーー。いや、俺自身は全然絡みない感じやってんけどな。あのカズーンと一緒におったとか言うヤツな。」
誰かを偲んでいた訳でない事が少し気まずいのか、ポリポリと頬を掻きながらタンスィート様が続ける。
ヒルトゥームを攻め落として数ヵ国を纏める王になったと思ったら全て仕組まれてて逆に国が乗っ取られていたと云う急転直下を半ば忘れる位感傷に浸っているアモネイの近くにいれば、何だか相対的に自分が薄情な気がしてくるのも仕方がないと思う。
処刑以来、タンスィート様達を臣下に嫁がせようとした罪悪感やら操られていた事に対する警戒心でギクシャクしていたのを忘れて、ぼんやりタンスィート様に導かれるままに食堂へ、客室へ、と付き従い、肩をポンポン叩いて慰められれば、「良くしてくれた兄上達もアイツに殺されてたらしいんだ…」と肩を借りて涙ぐむアモネイ。
それだけショックなのだろうと、ビクトール様とジューン様がアモネイの好物をひっきりなしに勧めたり、いっそ酔い潰れさせた方が気が楽なのではとウェスティン様が酒をジャンジャン飲ませたりしているうちに、すっかり学園の頃と変わらない気のおけない関係に戻っていた。
でも、そんな所もアモネイの愛しい所なんだよね…なんて、僕は夕べを思い出してタンスィート様と同じ様な苦笑いを浮かべた。
「まぁ、何だかんだで俺が世界で一番尊敬してて一番好きなパリやんがさぁ、人生で唯一後悔してるんがその男爵を守られへんかった事らしくてさ。
なんや、他のんで忙しかったりで、気ぃ抜いとったんやて。ほんで、気付いた時にはキレイに証拠も消されとって……。裏で消そうにも向こうも中々でな。
今回、戦争を言い訳に堂々と追いかけ回せて、やっとこさ捕まえてんて。」
そう言って、ふぅ、とタンスィート様が溜め息を吐く。
あの王様の後悔……。策士の中の策士で完璧超人やで♪みたいな態度だったから、何だか意外だ。
でも、そうだよね。王様だって人間だもの、好きな人にプロポーズしてはしゃぐし、後悔することだってあるよね。
「時々、……それが、命日なんか、それとも思い出させる何かが有ったんかは判らへんけど、時々……。
しんみり酒呑んでは、『ええか、オマエラは、どんなに忙しゅうても気ぃ抜いて生きてたらあけへんで。
気ぃ抜いて、気に入っとるもんに大小やら優先順位付けたりしたんがそもそもの間違いやってん。目の前で野垂れ死んでも構わんモン以外はお気に入りや。気ぃ抜いたらあかん、手ぇ抜く所間違えてまう』とか耳タコレベルで言うんでなぁ。」
へぁぁ。タンスィート様は親子だけあって真似されると王さまそっくり!
そして気を抜くなってかなりの難題じゃないかな?って思うけど、生き方として気を抜くって事だから、まぁ、常に全力で生きろ、的な金言として僕も心に刻んでおこう。
何があったのか、どう云うことなのか、イマイチ判らないけど、確かに全力出して負けた結果と違って、気を抜いてたり手を抜いてたりして負けたら『あの時こうしていれば……』的な悔やみは何時までも纏わりつくよね。
「これで少しはパリやんもスッキリしたんかなぁ、俺も大事なんは大事にせななぁ、とか考えててん。」
その大事なものの中に、僕とアモネイも入れて貰えてると考えても良いのかな、なんて。
僕はどうだろう。
勿論、タンスィート様もビクトール様とジューン様とウェスティン様も皆僕の大切な友人で、王様の言葉を借りるなら、野垂れ死なせたくない人達だ。なんなら、サミュエル・コートニーだって野垂れ死なせたくない。
……そっか、僕、サミュエル・コートニーのこと、気に入ってたんだな。そっかぁ。
大事なものは大事に。少々しんどくても、後悔しないためにも全力で生きる。
「うん。」
僕は未だにしんみりしているアモネイの背中を見詰めて決意を新たにした。
もう幾日で新しい国でのお仕事が始まるのだ。
新生活に新身分。後悔しないためにも、全力で取り組まなきゃな。
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