勘違い白豚令息、婚約者に振られ出奔。~一人じゃ生きられないから奴隷買ったら溺愛してくる。~

syarin

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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)

16: 天使は昨日のラッシュを思い出す。

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それから二日後。

僕達は船に揺られて居たけれど、ミャーミャーと頭上で姦しいウミネコはいない。
ぎらつく陽射しではなく、爽やかな風とぽかぽかとした陽射し。時々木漏れ日。

僕達はハレムナィトから暫く陸を移動した後、川を下って一路ヨルダルネを目指していた。

タンスィート様が新しく即位した国は、今は亡きヒルトゥーム王妃にして三王子の母モレッティ様のお里が中心なんだそうだ。
中心、というのは、領地や国の再編で数ヵ国がごちゃ混ぜになった新しい国なんだよね。

今回の戦で潰された貴族の領地は兎も角、粗方は領主である貴族がそのままそこの領地(ちょっと増量気味)を治めたままタンスィート様やコンクィート様、バロックィート様を王として傘下に着く感じなので、そんなに混乱はないそうなのだけど。

「それにしても……。」

船から景色を眺めていた僕の隣に肘を着いて、アモネイが呟いた。

「呆気ないもんだったな……。」

その瞳は何処か気の抜けた色をしていて…。僕はそっと彼の背中を撫でるしか出来なかった。

きっと昨日の処刑ラッシュの事を思い出しているのだろう。

何でも、第五王子を唆して他の王子を沢山殺させたり、第九王子を薬物中毒にした上で王にしようとしたりと悪行の限りを尽くしたカズーン元将軍とかいう人の処刑があったのだ。

王様の後ろでイキイキと踊ってた王子達も、実は生き残ったものの皆腕やら足やらを切り落とされてたらしくて、あの不思議なダンスは欠損が治ってとても元気になりましたよ♡アピールでもあったそう。

あの人数をピカピカに治せる程のポーションをヒルトゥームはポンと出せるとか、そりゃ勝てないわぁ。
流石にそんな国攻めてすんなり落ちたのはおかしすぎるデショ…とアモネイを見たけど、ヒルトゥームがそんなにポーションを溜め込んでるのは誰にも知られてなかったんだって。

確かに、学園でもポーション外交とか言う言葉を聞いたことがあって、ヒルトゥームがポーションを安定して産出してるのは知ってた。
けど、確か鉱山1つで二本とか、凄い貴重らしいって聞いてたから、まさかそんなザクザクあるとは……。
王様悪どいなぁ。流石だなぁ。あ、帝様か。

まぁ、そんな訳でピカピカ元気になった王子達だったけど、皆恨み骨髄って感じで。
アモネイも含め、カズーン元将軍の処刑にはそれはもう、出来るだけ苦しめたいという嘆願が殺到したそうだ。
そのせいか彼はトリを飾る大役で、延々と命乞いやら交渉やら責任転嫁やらを叫び続ける彼を沢山の瞳が様々な感情で見下ろす中、そのリクエストを出来るだけ叶えた処刑となった。うっぷ。…思い出しただけで少し気分が……。

今後の忠誠やら忠告やらの為か、先日の広間に集められた貴族達は全員強制参加だったので、僕はずっとアモネイの隣で目を閉じて耳を塞いで耐えていた。
きっと、ポーションでは癒せない、そういう事でしか癒せないものもあるんだろうし、そういう事でも癒せない、時間をかけるしかないものもあるのだろう。

ぼんやり水面を見つめるアモネイの背をそっと擦りながら僕は追想に耽る。

本当に昨日は色んな国の色んな人が処された。

セオリー通り国王が処された国もあれば、何故か国王は新しい国の要職に就いてて王配と公爵達が処されたり、男爵とか伯爵とか中途半端な貴族が処された国もあった。

でも、どの処刑の時も恨み骨髄の顔して見守る人達が居て……。

そういう人達を見つけて、自分の目的に協力して貰う代わりに復讐を成就させたり、願いを叶えたり……一体どれ程の調査と計画を繰り返してこの結果を得たのだろう。
本当、帝様凄いし、凄い執念だし、……コートニー侯爵は何か、御愁傷様って感じだな……。

あんなの、逃げれないよねー。と独り言ちてちょっと伸びをする。
その仰け反った視界にタンスィート様のしんみりする顔が見えて、又々昨日を思い出した。

確か、ヒルトゥームからは一人、身形の良いイケメン奴隷商人が処刑されたのだ。

何でも、カズーン元将軍と一緒に何処かに潜伏してたとかで、罪状は何処かの男爵を闇討ちしたとかだった。

一人だけ罪状の軽さが目立ち(いや、充分重罪なんだけど、他の人が物凄い悪行の数々なもんで……)、カズーンのついでに一緒におった悪人一人処しとこ♪みたいな王様独特のノリか何かなのかと思ったけど、仰ぎ見る王様の瞳は明らかに怒りだとか憎しみだとかと悔しさや哀しさが混じっていて、後、コートニー侯爵とロレンツォ・コートニーも似たような顔をしていて。

僕なんかが知らない、色んな事情があるのだろうなって思った。
タンスィート様のしんみりも、きっとあの奴隷商人由来なんだろう。と。

もし僕が、本当にこれからタンスィート様の側近として生きていけるならば、いつかその重荷を、少しでも軽くしてあげる事が出来るだろうか。

いつも明るくて頼りになったタンスィート様が、あんなにベタベタの西訛りだったことも、こんなしんみりした顔をする事も知らなかった僕だけど……。

それでも。

それでも、僕はずっとタンスィート様を友達だと思っていたから…。

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