勘違い白豚令息、婚約者に振られ出奔。~一人じゃ生きられないから奴隷買ったら溺愛してくる。~

syarin

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ここから番外編(腹黒王が割と出ます)

24: 五匹のエルと、腹黒と。

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「………ケテ……タスケテ………陛下…浄化……魔力封じ…解除……ケテ……」

キャッキャと楽しそうな三匹のチビエルと三人の王様に、何とか痛む身体から声を絞り出すが一向に気付いてもらえる気配は無くて……。

(はぁ、動けない。痛い。重い。可愛いけど只管ベチャッとしている……うう。ぁぁぁぁ。)

泣いて抗議してるらしきルヴィエルの温かい涙と鼻水が、髪から後頭部へ、後頭部から首やこめかみへと伝って来ているのを感じ、何とかしたくて顔を横向ければ、肩に乗っていたサフィエルが顔の上にオムツから落ちてきた。うんむぅ…。うんちはしていないが、それでも、ずっしりむにゅぅっと水分を含んだ感触が頬骨とこめかみにめり込み気分を緩やかに沈ませる。

「うけけけけけ♪」

そのままご機嫌でバフンバフンとオムツビンタを繰り出され、なんかもう、抵抗する気も生気も全て消え失せていく。

(なんかもーいーや………。チビエル、かわいーし、うん。へーき。)

へーき………


……………ズ、ズン………………ダカダカダカ……!


「大変です!陛下s!どなたかいらっしゃいます!?」

「「「全員おるよー♪」」」

城に振動と、その後、馬でも人でもない何かが駈ける音が近づいてきたと思ったら、扉を開けて勢い良く大きな黒狼が駆け込んできた。
その背にはかっちりした黒と赤の軍服の上に黄緑の使い込まれたエプロンを着けたアゼル・ウルフ公爵が2人の赤子を抱えて乗っていた。

「ああ!やっぱりー!此処にはダイエルとルヴィエルとサフィエルか!さっき辺境伯領近くに行ったら丁度頭上をローズバレットが飛んでったんで慌てて回収してきたんです…ってウワ!?ビクトール……ソレ、生きてます?」

生きてます……。俺、生きてます…。

「コチャチャチャチャーーー!」「たぁーよ!!」

ぁぁぁぁ……!

「おおー!スリエル!エメラエル!」「スリたん♡エメたん♡こぉんにーちはー♪♪」「飴ちゃん!俺、飴ちゃん何処やったかいな!」

「今日は、辺境伯騎士団は何かの何かが何かして宴会ですからね……。教育上宜しく無いんで慌てて狼走らせて回収してきたんですよ……。これで五人かぁ、後三人…ぅゎ。ビクトールベッチャベチャ……。」

チビエル増えた!こっちくるぅぅ!と絶望しかけたが、アゼルがそっと追加チビエルのスリエルとエメラエルを留まらせ、更に俺の上からダイルヴィサフィの3エルを退かせてくれた。何てイイヤツなんだ!!ありがとう。ありがとう。優しい。ありがとう。酷いんだよ。陛下達ったら酷いんだよ。

「あ、ビクビクン忘れてたわ。なんや、寝てるんちゃう?」「ちょぉっとスクワットさせたらこれやからなぁ。にしてもロドリゴンとソードル又飲み会?アイツラ、ロレンツォが爵位継いで玄翼辞めた途端、飲み会三倍位に増えたよなぁ…。」「辺境伯騎士団だけどちやうで、ロレンツォ辞めて、あっちゃこっちゃの騎士団やら組織やらで飲み会増えてんで。辺境伯程ではないけどな。ほんで代わりに貴族会議とかの会談で酒が飲まれる回数がガクッと減ってん。」

「ロレンツォ様は仕事に酔いを持ち込むの大嫌いですからね…。」

ベラベラと陛下達は何もせずにお喋りに夢中だが、アゼルが相槌を打ちながら然り気無く俺に浄化を掛けてくれ、魔力封じの首輪を外してくれる。
お陰で魔力が巡ってきて、やっと動ける様になってきた。あああアゼルありがとう!ありがとうアゼル!!

「アゼルあり「全く、ビクトールは相変わらずへなちょこだよなぁ。さっきの潰れたカエルみたいな格好良く似合ってたぜ♪」

やっぱコイツ嫌いだ。

手を差し出してくれたので、有り難く手を借りて立ち上がり礼を言おうとしたのに、被せるように悪口を言ってくるアゼル。くぅ酷い!

回復させてから思う存分に叩きのめす、なんて、変な騎士道精神を持った三文小説の悪役みたいなやり口に、俺の気分は又又沈んでいった。

アゼル・ウルフ…元アゼル・トラフト侯爵子息。
その、大地の精霊を黒狼の姿で使役する技と、幼馴染み達との結束の固さ、機動力、連携、攻撃力は先王にして現法皇パーリエス・ヒルトゥーム陛下直属の組織"黒狼騎士団"として取り立てられ、今や公爵位まで授かっている。
そんなサクセスストーリーを進みながら、父である侯爵や兄達から二の次、三の次と蔑ろにされてきた過去を忘れず、きっちりトラフト家を困窮に追いやるなど、何処までも根に持つタイプの男だ。

(きっと俺は、サミュエルと先に婚約したことを何時までも許しては貰えないんだろう……。)

然り気無く踵で俺の足の甲をギッリギリと踏みしめ、笑顔でチビエル達を黒狼の背に乗せるアゼル。
その揺れるエプロンの結び目を眺めながら、俺はそっと痛みに耐えた。
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