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16: 友人が出来ました。
しおりを挟む俺にオキナが探していたと教えてくれたのは、文官志望の男爵令息で、名前をオボロ・ツーキと言うらしい。オリーブがかった茶色い巻き毛に藤色っぽい茶色の瞳の彼は、真面目で堅そうな見た目とは裏腹に、話せば穏やかで優しかった。
一緒に居るのは、幼馴染みの同じ男爵令息のブロンズ・ヒメ、ヒメィシュ・ウレー、シュー・ウレー。そして、平民のペン・タドルムとマーク・ドガリーで、人懐っこい彼等は快く俺を後列組に向かい入れてくれた。
今、学園生活五年目にして初めて、級友達とお喋りしながら次の講義室まで移動してます。わーーwwドキドキしゅるぅ♪
「そういや、君ってΩなの?」
「そうなんだよ、Ωに見えない外見だけどね。」
ブロンズの問いに答えれば、全員からおお、と感嘆が洩れる。まぁ、貴族や学園にはソコソコΩ居るから麻痺するけど、市井に出れば超超レアらしいからな、Ωって。
「ごめんな、俺らΩとこんな親しくなったの初めてだからさ…。学園に入学するまでΩ見たことも無かったし…。」
平民のペンがポリポリと頬を掻きながら言う。
結構大きな商会の跡取り息子であるペンがそう言うのなら、本当に平民にΩは少ないんだろう……ん、でも、あれ?
「繁華街には結構Ω居るけどなぁ……。」
「ちょっ、俺そんな遊んでるよーに見える??俺らの年で繁華街に出入りするヤツなんて、家業がそーゆー店に食材や物品卸してるよーな商売のヤツだけだぜ!」
「あんなとこ、端っこにある中古服屋に服見に行くのでさえドキドキすんのに……。」
ぽそっと呟いた俺の疑問に、ペンが顔を真っ赤にして言い、マークもヒェェ、とすっとんきょうな声をあげて言った。
マジかぁ……。俺って知らない間に遊び人の仲間入りしてたんだな。
「……ネオンは繁華街良く行くの?流石、侯爵家だなぁ。大人だ。でも、ほどほどにしなきゃだよ。」
「まぁ、Ωって働き口とか限られてるらしいし、どういう業種か知らないけど、集まるところに集まりやすいのかもね。その方が何かあった時に協力しやすいし?」
大人だ、とヒメィシュがキラキラした眼差しで俺を見、ヒメィシュの従兄弟シューがメガネをくいっと直して集まった方が協力しやすいと言う。
確かに。
俺がアパルトマンを又貸ししてる恋心と乙女心もΩだ。
俺が12の時にアパルトマンを解約して安ボロアパートに住んで何とか浮いた金を自分の小遣いに出来ないかと不動産屋の張り紙を眺めてたら、身なりの良さとカラーを見て、家賃多めに出すからΩ同士シェアしないかと声を掛けてきたのが馴れ初めだった。
結局、Ωだからセキュリティがしっかりした所に住みたいが外国人なので自分では借りれないという二人と俺の思惑が合致し、丸っと又貸しして今に至るが、これもΩ同士故の協力と言って良いだろう。
俺の今住んでるボロアパートも、お人好しマスターが居るテルカズヨシダのすぐ裏という、出来るだけ安全そうな所を乙女心が選んでくれた経緯がある。
それに、恋心と乙女心の住んでるあのアパルトマンは今はシェアハウスになっており、住んでるヤツ全員Ωな上、時々ヒートだけ泊まりにくるヤツとかも居るらしい。
ふぅん、そう考えると俺もちゃんとΩしてるんだな。何か嬉しい♪
そうやってその日はオボロ達と1日一緒に過ごし、俺は何だか凄く充実したキャンパスライフを体験した。
後、オキナの件は手紙を出すことにした。何か会うのは躊躇われるしな。
初めての充実したキャンパスライフ、友人と一緒に食べるランチに浮かれた俺は、放課後、ちょっと二センチほど地面から浮いてる感じの足取りでボロアパートまでの家路をフワフワ歩いていた。
いやぁ、我慢してくれてたオキナには悪いけど、今までの追っかけライフも俺的には全魂ぶっ込んだ感じで悪くはなかった。
でも、その合間にちょっと友人が出来たりとか、軽くドリーミンしてたけど皆無だったし、令嬢令息が集う茶会とかでも令嬢やΩっ子達に歓談の輪に入れて貰えるわけでもなく、αβ令息達に話しかけて貰える訳でもなく、只管そんな光景を肴にお茶をテイスティングする正真正銘"茶"会だったから、本当に今日、オボロ達と仲良くなれたのは嬉しかった♪フフン~♪
「ネオン…?!」「フーンフ~♪フン??」
パシッと腕を掴まれ驚いて振り向くと、ジュリアが驚いた顔して俺を見ていた。
えっ!!???
この格好で俺って気付いたの!?マジ!?凄くない??!
驚く俺と驚くジュリア。暫し固まってしまったが、先に石化が解けたのはジュリアだった。
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