親無し小太り取り柄無しな田舎娘がある日突然獣人伯爵の運命の番になった話

syarin

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26: アナグマ獣人とは何足るか

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「そうだった、ラートンは判っててもお嫁さんは判らないよね。ごめんごめん。あのね、私達バドワイザ家はね、イタチ系獣人達の王様みたいなお家でね。
ラーテルやクズリ、アライグマ、ラッコ、スカンク、フェレットみたいな種族からオコジョやテン、小さなカワウソにミンクまで、色んなイタチ系獣人達の大事な巣穴の役割を担ってるんだ。」

グズーリヤが言葉を切って、いいかな?とイオンウーウァを見詰めるので、イオンウーウァはコクリと頷いた。
獣人達の容姿などが良く判らなかったので森で見た動物達を思い浮かべたイオンウーウァの頭の中が、ちょっと胴の長い系アニマルで埋め尽くされていく。

「我々アナグマは巣穴をいつでも快適にし、時に外敵から巣穴を守って戦い、時に兎や狸や野ネズミ、コヨーテ達をも巣穴に受け入れてやる。
そうやって我々が巣穴を維持するからこそ、ラーテルやクズリ等の荒くれ達は安心して世界に飛び出し、巣穴を顧みずに思う存分冒険して、戦って、世界を股にかけれるんだ。
そうして、世界のあちこちで弱ったり、老いたり、恋をしたりして、巣穴に還ってきた奴等を我々アナグマはいつでも歓迎する。
我々アナグマの巣穴は、世界中のイタチ系獣人の揺り篭であり、休憩場所であり、墓場なんだ……。」

グズーリヤの言葉に、ラスカリーやラートン、バジャー、アナ、グーマやメイド達、使用人達。部屋にいた全てのアナグマ獣人達がほんの少し胸を張って誇らしげに頷く。

その様子に、イオンウーウァはアナグマ獣人とはなん足るかを少しだけ理解できた気がした。

「……とまぁ、そんな訳でね…。
兎に角、バドワイザ家次期当主に繁栄と幸運の象徴である運命の番が出来たと聞いたらお祝いに駆け付けたい人達が凄く凄ーーく沢山いて、しかも、世界中に散らばってるんだよ。
だもんで、彼等にお知らせするのにも時間が懸かるし、更に彼等がバドワイザ領に来るのにも時間が懸かるからね……。なんせ、龍人みたいな翼とか無いし……。
本来なら運命の番とは直ぐに婚礼しちゃったりするんだけど、うちでそれすると末代まで無念がられかねないからね……。
ぁぁあほら、でもさ、ラートン!何かほら!君達時間をかけた方が良さそうな感じじゃないか!ね??一応ほら!婚約式終わったら番っても目をつぶるからさ!ね!ゆっくりイチャイチャしなよ!ね??ね??」

「そうそう、番ちゃんとのデートを楽しんでれば、すーぐ結婚式よ、きっと。」

判りやすくイオンウーウァに説明しつつ、いつの間にかラートンへの言い訳と慰めになったグズーリヤの言葉の後をラスカリーが楽観的に継いだ。

「はぁぁ……。まぁ、一年半後という事ですね…?ううう~~…僕の可愛い番さん♡傷心の僕を慰めておくれ……♡♡」

ヨヨヨ…とワザとらしくしなだれかかるラートンの頭をイオンウーウァがヨシヨシと撫でれば、途端にラートンが蜂蜜でもイッキ飲みしたかの様なデレデレ顔になる。

「まぁ、良く考えたら、超超超豪華な結婚式にしようと思ったら、準備にそのくらいかかるよね♡よし決めた!スッゴク豪華で素敵な結婚式にしようね♪♪ね、可愛い僕の奥さん♡」

「マカロンとか、お菓子いっぱいあるのが良いな…♪」

「ヨシキタ!任せて~!お菓子のドレスでも家でもチャペルでも、なんならお城でも作っちゃうよ♡♡」

豪華な式にしようと決意を新たにするラートンに、イオンウーウァが希望を伝え、ラートンは何だか絵本の魔女か色んなモノでドレスを作る歌姫の様な事を口走る。

何だかんだラートンの愛情ばかり目立つがイオンウーウァも結婚を楽しみにしているのだ。

「……取り敢えず砂糖貿易に手を出しておいた方が良さそうですな……。」

そんな二人のやり取りに胸焼けを覚えつつ、グーマはそっとTo doリストを追加したのだった。





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