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70: 若の帰還。
しおりを挟む「ふぅ~♪いやぁ、旨かった!満腹ぅーー☆」
早々に眠り込んだグーマをバジルに背負わせて、アンズは満足気に腹を撫でた。
「…でも、叔父さんあの後速攻で寝ちゃったのに、お金私達で使っちゃって良かったんでしょうか……?」
シフォンは少し罪悪感を感じて苦笑いしながら言った。
ラートンに五月蝿いグーマを何処か居酒屋に閉じ込めておけとお金を貰ったものの、ゆったりした高級居酒屋のソファに座った途端、グーマは安らかな寝息を立て始めてしまったのだ。
それなのに、お調子者のアンズに唆され、結局貰ったお金を使いきってちょっぴりはみ出す程、三人は鱈腹御馳走を腹に詰め込んでしまった。
シフォンの腹はぽっこり膨らみ、口からは満足と幸せに、少しの背徳感が混じった溜め息が出る。
「気ーにするなーーってー♪貰っときゃいーんだよ♪♪」
「まぁ、控え目に言ってもラッキーだったな♪」
アンズとバジルも、同じく満足の溜め息を吐いて笑った。
ーーーーー
ーーー
ー
ホテルに戻り、まだラートン達が帰ってきて無いと知り、少し隣のラウンジでお茶かウィスキーでも頂こうかとフロントで三人が相談しているところへ、ボロボロのラートンがイオンウーウァを抱えて帰ってきた。
「「あれ?!お帰りなさい若様!その格好どうなさったんです!?」」
「まぁ!若様!イオンウーウァ様!」
アンズとバジルが驚いてラートンに声をかけ、シフォンは二人の格好に仰天した。
ラートンは身形の良い格好だったはずが、上等の上着はあちこち破れ、土まみれ、靴も泥だらけで獣化したのか穴だらけだった。
一方、そんなラートンから優しく降ろされたイオンウーウァは花が咲き乱れたドレスに髪の毛にもふんだんに花を挿して、まるで妖精のようだった。
(び、美女と野獣の本の挿し絵そっくりだわ!!!)
「バジルはすぐに風呂の準備を、アンズはすぐに着替えを用意して。シフォン、お前もイオンウーウァ様のお部屋に行って、風呂の準備とお着替えの用意をしないと、ほら、皆急ぎなさい。」
先程までスヤスヤ寝入っていた筈のグーマが瞬時に復活し、指示をする。
三人は返事をすると即座に客室へと向かった。
「若様、イオンウーウァ様、一体何があったんです??」
驚いた顔でラートンに問い掛けたグーマは、さっきまで酔って眠っていたとは思えないしゃんとした足取りで二人と一緒に客室に向かおうとした。
そこに、フロント奥からやってきた支配人のフクロウ獣人が声をかける。
「ホッホッお待ちを…!ホッ…、ホゥ……もしかしてお二人は妖精の森で迷われたのでは?!!ホゥ……。」
大きなお腹を揺らしてホッホホッホと息を荒げるフクロウ獣人に、イオンウーウァの菫色の瞳がキラキラと輝いた。
獣人の国に来て以来、猫獣人はですにゃ、と言わないし、犬獣人もだワン、と言わず、少しがっかりしていたイオンウーウァは今、フクロウ獣人のホッホゥと洩れる鳴き声に感動を覚えていた。
(フ、フクロウ獣人さんはホーホー言うのね!)
彼も興奮の余り出ただけで、普段はホーホー言わないし、興奮すれば猫獣人も犬獣人もだニャン、だワンと言ってしまうのだが、そんな事を知らないイオンウーウァは興奮の余りピョンピョンと小さくその場で跳ねて喜んだ。
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