モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜

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地下水脈

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 気づいたら、スヴェンの腕の中で泣きじゃくっていた。
 せっかくなので落ち着くまで泣かせて貰ってから、スヴェンを見上げ、微笑む。

「ありがとな、スヴェン。あと、迷惑かけてごめん……みんなも。久しぶりにアッシュフィールド本邸近くに来たから、7歳以前の記憶を思い出しちまってな」
「やはり……そうでしたか」

 スヴェンも微笑み、あやすように俺の背中をトントンと叩いた。

「ヴァニタス様。私は正直なところ安心もしたのです。記憶を失う以前のあなたは、何処か人間離れをしていたというか……母君が目の前で自ら命を断たれても、泣きもしなければ悲鳴も上げませんでしたので……」

 スヴェンからしたら俺の記憶喪失は、子供らしくない子供が急に子供っぽくなった感じか。
 いや、鏡の前で目覚めたあの時は、完全に中身が39歳のオッサンだったから、子供っぽくなったってのはすげぇ複雑だけど。

「他人事みたいな言い方になっちまうけど、物心ついた時から母親に『私とお前はアッシュフィールド公爵にとっては所有物だ。トロフィーと同じ。人間だと思われてない』みたいなことを言われて育ったから、以前のヴァニタスは『人形らしくあれ』みたいな感じになっちまってたみたいだぞ」

 スヴェンは目を見開いて固まった後、ゆっくりと溜め息を吐いた。

「そう……ですか。レオノーラ姫が……」
「姫?」
「えぇ。ロータリア王国の姫君で、レオノーラ姫の母君が現ラスティル王の父君の妹君です。つまり、レオノーラ様は現ラスティル王の従姉妹にあたります。トロフィーと言えば……確かに最高のトロフィーでしょう。息子の貴方も含めて」

 ん?
 ちょっと待て。

「……ってことは、もしかして俺ってラスティル王の血縁?」
「えぇ、もちろん。レオノーラ姫も陛下も、ヴァニタス様と同じ美しい黒曜の髪と金色の瞳をお持ちです」

 まじか。
 この目と重い黒髪って、ラスティル王国の血縁者の証だったのか。

「とはいえ、ヴァニタス様が落ち着かれたのであれば、此処で長話はやめましょう」

 あ、そうだ。
 敵は倒したがまだ領域下してねぇ。

「とにかく……ありがとな、スヴェン」

 抱き締めて、落ち着かせてくれたスヴェンににっこりと笑うと、彼から離れて『プロミスド サンクチュアリ』を歌う。

 これで地下通路は俺の領域だ。

「スピルスとユスティートも悪かったな。取り乱しちまって」

 ユスティートはふるふると首を横に振る。

「俺こそすまない。あなたに会ってからは流石に悪魔憑きだとは思わなかったが、それでも実際にあなたに会うまでは、あなたの事情を把握せず、『アッシュフィールドの悪魔憑き』だと認識していた」
「そいつは仕方ねぇって。気にすんな」

 俺はユスティートの柔らかい銀の髪を撫でる。

「私はもう少し身長が欲しいと思いました。いえ、何で私はヴァニタスより年下なのでしょう。ヴァニタスを颯爽と抱き締めて慰める良い機会をスヴェンに奪われました」

 いや。
 お前は何言ってんだよ、スピルス。
 いつもの事な気もするが。

「時間が押しちまったが、これから入り口を探して水脈に向かう……しかし、抜け道なんてあったか?」

 俺視点、屋敷から此処までは完全なる一本道に見えた。

「明らかに魔力反応がある場所が一ヶ所ありました。ヴァニタスとは違う術者の領域魔法でしょう。私とヴァニタスの2人で解除できます……が」
「その向こう側はアンデッドモンスターの巣窟ということか、面白い」

 スヴェンは口の端を上げて、ニヤリと笑った。
 今まで見てきた感じ、スヴェンって案外戦闘狂だよな?
 何でアッシュフィールド家の執事なんてしてるんだ、こいつ。

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