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儀式
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暗い。
真っ暗だ。
今は夜なのだろうか。そして自分は起きているのか、眠っているのか――。
何故だろう、身体が熱い。ふわふわと宙に浮いて揺れているような浮遊感があって、頭も朦朧としている。風邪をひいて熱でも出たのだろうか。しかし、体調や気分の悪さは無かった。――いや、寧ろ気分がいいというか、何処となく気持ちいいような感覚まである。
暗い視界の中、まるで酩酊してでもいるかのように不明瞭な意識下でぼうっとそんなことを考えていた時だ。ふと、熱かった体温が更にその熱量を増していることに気が付いた。自分は余程酷い高熱を出し、それが未だに上がり続けているのかとも思ったが、何かが違う。熱さは、身の内を火で炙っているかのようにそのレベルを上げていき、全身を火照らせる。炙られている場所がひどく疼くような錯覚に加え、朧げに感じていた気持ち良さも疼きと共にそこから湧き出してくるように思われた。しかもその抗い難い感覚は、次第に強く激しく、そしてはっきりとしてくる。微かに揺れている気がした身体も、それと比例するように揺れ方が大きくなり、今やガクガクと揺さぶられるほどにまでなっていた。
あまりの気持ち良さに呼吸が乱れる。荒い吐息の隙間を突くように、自分のものとは思えないほど色付いた声と喘ぎが、知らず識らず喉の奥から零れ出た。
――これは夢……?――
未だ続く浮遊感に闇の空間を夢幻の世界だと認識する。夢の中なら、自分の身体に何が起きても不思議では無い。自分はきっと、最高に気持ちいい夢を見ているのだろう。そう思って疑い無く全てを受け入れていた時だ。
何処からか人の声が聞こえる。ヒソヒソと内緒話をするような小さな声――というわけでは無いのに、何故か聞き取ることが出来ない。しかし、次いで聞こえた愉しげな笑い声を耳にした瞬間、それまでぼんやりと霞み掛かっていた頭の中がすうっとクリアになっていくのを感じた。意識がはっきりしてくるに連れ、受け止めていた感覚もより鋭いものになる。自分の肌に触れる何かの温度とその感触のリアルさにびくりと身を竦ませた刹那、痺れるほどの快感が己の中を突き抜けた。
「あぁっっ!」
もはや夢でも錯覚でも無い。暗闇の中、刺激を受けて悶えているこの感覚は本物だ。自分の身体は今、性的な行為に晒されている。それも相当激しい行為に。そして、有ろうことかそれに思い切り感じているのだ。これまで、一度も性経験の無いこの自分が。
――なんで…? どうして?――
一瞬浮かんだ疑問が、絶え間無く、且つ力強く襲ってくる快感に掻き消される。身体の奥から荒々しく、際限無しに押し寄せる官能の波に翻弄され、ただただ悦びの声を上げ続けながら、うっとりとそのうねりに身を任せた。
――と、その時。
「いい声で啼くねぇ…。やっぱり、僕の目に狂いはなかったよ」
突如聞こえた声。それは何処か聞き覚えがあるような気がするけれど、言葉に混じる含み笑いと周りの反響に邪魔されて誰の声なのか判別出来ない。「誰だ!」と口に出そうとしたが、その瞬間、身体の芯に強烈な快感の塊が叩き付けられた。
「あうっ!」
思わず仰け反る。
明らかに自分の下腹、それも後孔で発せられている耐え難いまでの感覚。気持ち良過ぎて眼前の暗闇にチカチカと星が飛ぶ。
見えないのに、後孔を押し広げその奥に快感を与えているものの正体が何なのか、経験の無い自分にももう分かってしまう。後孔をきゅうっと締めると、快楽に絆され敏感になっている腸壁が、包み込んでいるものの形や大きさまではっきりと認識した。自分の肉路をいっぱいに埋め、最奥まで届けとばかりに突き入れられた熱の塊。それは、疑いようも無く生身の男根だった。長大で極太の一物が、狭い直腸内でその存在を誇りながら荒々しく抜き挿しされている。休むこと無く突き上げられ、繋がっている部分からぬちゃぬちゃという湿った音がやけに大きく聞こえた。同時に両胸にもクニクニと敏感な箇所を刺激する感触が。何も見えないが、そこが熱を持ち既に硬く立ち上がっているのが分かる。止む気配もなく弄り続けられる淫らな刺激に、両の突起もジンジンと甘く痺れていた。
(自分は男に犯されている。乳首を嬲られ、太いペニスをお尻の孔に突っ込まれて、しかも気持ち良くて感じてる……っ)
そう思うと余計に感じてしまい、「あぁ、ああっ」と濡れた啼き声を上げてしまうのだった。
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