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第六章
朝から勝負は始まっていた
ブルーメ学園の女子寮の朝は早い――そう、朝から勝負は始まっていた。
一斉に部屋の扉が開かれる。そこから現れるは、朝から気合の入った乙女たち。髪のさらつや感も、メイクも万全。制服もシワひとつなし……各々、アレンジしたりもしている。
「おはよう。あれ、新色のリップ? 可愛いね」
「その髪型、凝ってるー。ねえ、教えて教えて」
互いを誉めつつも、観察は欠かさない。いいとこどりしようとする、抜かりなき乙女たち。
「アサイーボウル、今日は残っているかな?」
「味まで美味しいっていうし、争奪戦だよね。私はね、特製スープがおすすめ。トマトベースに、野菜も盛りだくさんなの。アサイーボウルもいいけど、こっちのほうがおすすめ」
「あたしはヨーグルトサラダかな。フルーツサラダとか、敬遠してたんだけどね。食べてみたらすっごく良くて。だから、今日はこっちにしてみたら? アサイーボウルはこっちでもらっておくから」
アサイーボウル、この世界にもあるんだ……というか。ここも水面下の戦いというか。いかにアサイーボウルを食べるかという……何気ない戦いともいうか。
「……」
私、シャーロット・ジェムはというと――一度開いた扉を、そっ閉じした。
うん、気持ち負けしていた。一人、ついていけなかった。
いつものカナリア色の髪、普段通りの姿。制服はちゃんと着ている。安定の黄色のリボン。私は通常運転ともいうか。
「くんくん」
くんくんと嗅いでいるのが、モフモフワンコのリッカ。へそ天状態の彼は、朝食後だった。いい仰向けっぷりだねぇ。今日もたくさん食べたねぇ。お腹がパンパンだねぇ。
「色々な匂いがするの」
嫌いな匂いではないようで、興味津々そうだった。扉を閉めた時に香ったんだね、彼女たちの香りが。
「朝ごはんの匂いもして……ぐーすぴー……」
食堂からの匂いもしたのかな? ふふ、おやすみ体勢に入ったね。私はそのまま眺めておこうかな。
「ふふ……」
すやすやリッカを眺める幸せ、代えがたいものだった。
『ぐー』
本当に平和な空間。諍いなんてない世界。ふふ、可愛いねぇ……。
『ぐー、ぐーきゅるるるるるる』
マウント合戦も、腹の探り合いも。そんなもの、存在しない世界。なんて優しい世界なのでしょう――。
『きゅるきゅるきゅるきゅるきゅるきゅるきゅるきゅる』
「……ねえ、シャーリー? お腹の音、すごいの」
リッカが起きた。ふふ、リッカ?
「どうしたの? 私のお腹、鳴ってなんてないよ?」
「ううん、鳴っているの。シャーリーもね、ちゃんとごはん食べよう?」
「う……」
リッカがね、曇りなき眼で私を見てくるの。私をどこまでも心配しているというね、純粋な思いによるもので。そんな瞳を向けられ続けた私となると。
これ以上、偽れる? 無理でしょう……。
「うん、ごはん食べないとだね……」
「うん、元気が出るの!」
ああ……ぽんぽこお腹のリッカがね? 私を仰ぎ見ているんだ。瞳、本当に綺麗だね……本当に心配してくれているんだね。
「食堂、行ってくるね……?」
この部屋に常備しているご飯とかはなかった。あっても、リッカ用のものくらい。さすがに彼のを拝借したりはしない。だから、食堂に行くしかない……。
「いってらっしゃい……すぴー」
「うん、行ってくるね……?」
リッカ、即寝だね? もう身支度は済んでいるわけだし。行こう……。
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