春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第六章

普段通りじゃない朝食

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 私は重い足取りで寮の食堂へ。十分早い時間なのに、もう皆さんは勢ぞろいしていた。

「おはようございます……」

 私は及び腰になりながらも挨拶をする。一斉に私に視線が集中する……ひいっ! 
 私に集まる視線。すごく時間が長く感じられた。どうも値踏みされている気がして。いいえ、気のせいとかじゃない。私は実際に彼女たちから観察されているんだ。

「……うん、おはよ」
「……おはよー」

 返された挨拶。彼女たちは私への興味は失せていたのか、それだけだった。

「……」

 私も私で自分を見てみた。気合の入った彼女たちとは違う、普段通りの私。彼女たちにとっての私。相手になることはない、まさにそういった感じだった。
 ああ、目の前で繰り広げられるは……超絶なマウントの取り合い。探り合い。いかに出し抜くか。

「あ」

 あと、アサイーボウルの争奪戦。笑顔で押しのけ合っている。今、品切れになってしまった。こっちの世界のもの、食べてみたかったな。明日もあるといいな。一点集中でいこう。

 そそくさと今日の朝食をトレイに乗せていく。なんだろ、随分とヘルシー寄りな内容ばかり。聞こえてきたのは料理人さんたちの話し声。なんでも沢山のリクエストだったとか。

「……」

 食堂内はもうね、ギスギスし過ぎていた。笑顔を保ち続けていたままなのが、怖いくらい。
 私、もう部屋に戻っていいかな? ……いいよね? 私にはこの雰囲気は耐えられないし、どうにかするとかも――。

「――おはよう、みんな!」

 食堂に高らかに響いた声。声の主は――女子寮の寮長さんだった。
 私は期待した。常に律している彼女。男女は慎みあるべきだと、そんなスタンスの彼女。彼女なら、このギスギスをどうにかしてくれるはずと――。

「……?」

 私は寮長さんの姿を見た。彼女の姿はというと。
 まず、いつもの丸眼鏡が外されていた。そのことによって、ぱっちりとした目元が明らかとなる。ショートカットでボーイッシュな印象だったけれど、今は違う。
 凝ったヘアアレンジもしていた。顔もメイクしているようで、唇もつやつやとしている。

「「「せ、戦闘力が高い……」」」

 女子の皆さんの声が揃う。戦闘力という言葉で表わされること。彼女たちが素直になるほど、賞賛されるルックスということだった。

「や、やめてくれないか……照れてしまうよ……」
「「「……」」」

 自身の頬に両手を添える。その恥じらいっぷりがなんとも愛らしくて。うん、可愛い。推せる。私は真顔になったし、あちこちから『ぐぬぬ』といった声がしている。

「……ふう。ほら、皆! 学校も始まってしまうよ。休みの気分もここらで抜いておかないと!」

 手をパンパンと叩いた彼女、寮生の皆さんも朝食を食べ始める。言動はいつもの寮長さん、だった。彼女は根っこは変わってない……でいいのかな?
 っと、ジロジロ見るのはよくないよね。私は自分の部屋に――。

「――シャーロット君? こちらで食べないのかい?」
「!」

 こそこそと逃げようとした私。寮長さんに呼び止められてしまった。

「……ええと、そうですね?」

 私はひとまず振り返ることにした。返事は正直、考えあぐねいていたともいうか。せっかくのお誘いでもあって――。

「……ああ、君はそうだね」
「……寮長さん?」

 寮長さんはどうしたの? 私の全身を見渡すような視線を向けてきた。それは……私の気のせいでも思い違いでもない。それは。

「……着飾らなくても。そのままで――綺麗だよね」
「あの……」
「……羨ましいよ。そんなにも容姿に恵まれて」

 容姿を誉めている……? といっても、目は笑ってはいなかった。射すくめられるような眼差し――呑まれそう。

「……寮長さん」

 私は彼女をじっと見た。今まで……いつだって。私にも朗らかにも接してくださって。それこそ慣れなかった頃からもだった。人見知りする私でも、打ち解けやすい方。
 ……今のあなたは。

「なんだい、シャーロット君……ううっ」
「っ!?」

 寮長さんは頭を抱えだした。頭痛でも襲ってきたのかと、私は心配になったけれど。

「……なんだったんだ、今のは。ああ、シャーロット君は自分の部屋で食べるんだ。それじゃあね」
「は、はい……」

 あくまで一瞬のことだった。寮長さんはケロっとしていたから。私は会釈をして、食堂をあとにすることにした。




「……ふう」

 部屋に小机に食事を並べ、私は手を合わせて食べ始める。

「ぐーぐー」
「リッカ……」

 いつの間にベッドの上に移動していたのかな。彼は睡眠を続行していた。さらに鼻がぴくぴくしていた。朝食の匂いに反応しているのかも。

「ふふ……」

 気持ちが和んだ。いつまでも見ていたいけれど、早く食べてしまわないと。

「……いつもなら、楽しい時間だったのに」

 私、いつもの女子寮の雰囲気が好きだったの。みんなで楽しく、かといって一人でいたい時もあるから。それを強制するとかもなくて。ほんわかとした空気感、中心だったのは女子寮長さんだった。明るく、そして気を配っていたのだと思う。

「ほんと、唐突過ぎるんだ……」

 昨日がそう――一月下旬、三連休の最終日だった。最後の休みの日ってことで、女子寮入りしたんだよね。私はお土産話で盛り上がると思っていたのに――。

「……ごちそうさまでした」

 朝ごはんも食べたし、あとは最終準備にもとりかかって。

 出かけていない寮生、多分ね、私くらいだと思うから。皆さん――もう出ていると思う。『そんな話』も聞こえてきていたし。

 食堂に食器類を戻しに行って、それから出発をしよう。私は快眠ワンコにこっそりと挨拶をする。
 いってくるね、リッカ。
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